「アグリマスター」や「指導農業士」のもとで、就農へのイメージを明確に。
「就農に興味がある。けれどまったくの未経験で、何から始めればいいのかわからない…」
そんな初心者の方でも安心して就農体験ができる『チャレンジ農業体験』。山梨県が実施する『やまなし就農ライフサポート事業』の一環で、経験豊かな農家さんや農業法人のもとで5日~最大20日間、実際に農作業を体験することができます。
参加資格は18歳以上で、社会人でも学生でもOK。参加費は無料ですが、現地への旅費・宿泊費・食費などは自己負担です。体験は1日8時間以内・1週あたり40時間以内。連続した20日間を確保する必要はなく、週末に数回通う、という方法でもOKです。体験期間中は農作業をするだけでなく、農家さんにさまざまな質問をし、地域への理解も深める絶好の機会となるでしょう。農業には楽しさもあり、厳しさもあります。自然を相手にする仕事であり、体力も必要です。だからこそ「自分は農業に向いているか」「実際にここで生活ができるか」を見極め、じっくりと考え、農業へのイメージを具体的なものにすることが大切です。
『チャレンジ農業体験』で用意されているのは「農業法人コース」と「農家体験コース」の2種類。どちらか一方のみでも、両方を体験することも可能です。「農業法人コース」は雇用されて働きたい方向けで、大規模農園や観光農園などでの体験ができます。「農家体験コース」は自分で農業を始めたい方向けのコースで、山梨県が独自に認定した「アグリマスター」や「指導農業士」の個人農家さんのもとで体験をします。
体験受け入れ先として県に登録している農業法人と個人農家は200以上もあり、果樹・野菜・花き・畜産・観光農園など選択肢は豊富。体験者は随時募集中です。「初心者なのでどの分野を選べばいいのかわからない」「山梨県に縁がないのでどの市町村がいいかわからない」という方には、事業の担当者が時間をかけて丁寧に面接を行い、受け入れ先を選定してくれます。体験先が決定したら「農業基礎講習」を受講して、体験スタート。体験後は山梨県での就農へ向け、本格的なサポートが始まります。
就農は地域社会とのマッチング。だからこそ、県が本気でサポート。
2023年度からスタートした『チャレンジ農業体験』。初年度は5名がこの制度を利用し、2024年現在は全員が何らかの形で就農へ向けて準備を始めているそうです。農業法人への就職を決めた人、就農に向けた長期研修を開始した人、都会での会社勤めを続けながら週末は山梨での就農準備をする2拠点生活を始めた人。「山梨県への就農者を増やしたい!」という県の担当者のサポートは本気で、徹底的なものです。
「丁寧でわかりやすい説明がありがたかったです。これからの計画の参考にもなりました。体験を通して就農に向けた情報もいただけて助かりました」
→体験後に長期研修へ移行。家業のブドウ農家を継ぐ予定です。
「実際の作業に従事できたことは大変参考になりました。体験先の方と農業にまつわるさまざまなお話ができたことも有意義でした」
→体験後に東京との2拠点生活を開始。現在は仕事を続けながらさまざまな農家の下でブドウや桃の作業に従事しています。
初心者だった体験者たちが「自分はこの分野に興味がある」「自分の体力に合った働き方を模索したい」などとイメージを明確に持てるようになれば、農業法人の求人とのマッチングだけでなく、就農に向けた研修や各種事業の紹介、営農計画の作成支援など本人の希望や実情にあったサポートを実施します。担当者は「就農には地域社会とのマッチングという意味合いもあります。農業はそうやって人生をかけるもの。だからこそ、私たちも本気です」と話してくれました。
お客様の「おいしい!」がやりがいになる、観光農園ならではの面白さ。
今回訪問したのは「農業法人コース」の受け入れ先のひとつとなっている笛吹市のフルーツパーク「モモザンマイ」。観光バスを受け入れての桃狩りや食べ放題企画、地方発送、ふるさと納税の返礼品など、大規模な観光農園を営んでいます。事務所の周囲にある20ほどの桃畑で15品種を栽培していますが、各品種の旬は1週間ほど。このサイクルに合わせて、6月から8月までの開園期間中に観光客を効率良く案内します。
「チャレンジ農業体験で来た人にやっていただく作業はスタッフと同じです。シーズン中には観光客の案内やショップでの販売、収穫や発送用の箱詰め作業など。閉園する秋には木の剪定や土づくり。オフシーズンには加工品のラベルづくりなど、どの季節に来ていただいても観光農園ならではのノウハウを学べます」と話してくれたのは、農園スタッフの大嶋達馬さん。
「お客様に接する仕事なので、明るく楽しく元気に働こう!という雰囲気が他の農業とは違うかな。就農にはこういう入り口もあるのが、山梨県ならではの魅力だと思います」。
同じく農園スタッフの丹沢亮さんは「モモザンマイ」の一員となってまだ日が浅いそうですが、日々の仕事を楽しんでいます。
「前職は製造業でしたが、自分が作った製品の感想をエンドユーザーから聞く機会はありませんでした。しかしここではお客様から直接『おいしい!』『楽しかった!』と言ってもらえる。昔バイトしていた飲食店で、お客様との会話が楽しかったことを思い出します。本来は人と話をすることが苦手な性格なんですが、インバウンドの観光客の方とも片言や身振り手振りでコミュニケーションをとっているうちに、すっかり慣れました。就農希望者には観光農園の魅力もぜひ知ってほしいですね。やりがいがありますよ」。
就農サポートは人と人とをつなぐ事業。就農に向けて切れ目なく。
『やまなし就農ライフサポート事業』ではこうしたチャレンジ体験以外にも、県内での就農情報などをまとめた特設サイトの開設や、先輩就農者と交流するオンライン座談会・バスツアーの開催など、農業経験のない方も山梨県の農業を知り、就農のイメージを明確化できる事業を実施しています。チャレンジ農業体験では、農業の現場に触れ、就農に向けたビジョンを本人と県の担当者、さらに受け入れ先と共有。みんなで将来を考えていく体制をとり、個人の状況に応じて活用できる制度を探すなど、就農に向けた切れ目ないサポート体制が取られています。
初回の面接では希望者一人ひとりの現状と希望を丁寧にヒアリングすることから始めます。小さな不安や心配事にも親身に対応。県外からの希望者には宿探しも、あるいは住み込み可の体験先を選定するなど、オーダーメイドで対応してくれます。
まずは気軽に、相談から始めてみませんか。
取材協力
お問い合わせ先
やまなし就農ライフサポート事業
山梨県農政部 担い手・農地対策課
委託先:株式会社アシストエンジニアリング
TEL:055-267-6162
MAIL:info-kikaku@assisteng.co.jp