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水なすとはどんな食材? 旬や栽培方法、おいしく食べるレシピを解説【日本伝統野菜推進協会監修】

sato tomoko

ライター:

連載企画:解説!全国伝統野菜

水なすとはどんな食材? 旬や栽培方法、おいしく食べるレシピを解説【日本伝統野菜推進協会監修】

インドが原産地のナスは、日本へは中国から渡来。奈良時代の『正倉院方書』に最初の記録が残っており、そのころすでに栽培されていたとみられています。日本で約1200年の歴史があるナスは、各地に伝播してその土地独特の地方品種が作られています。そのひとつが水なす。なかでも、大阪府の泉州地域の「泉州水なす」は、薄皮でやわらかく、水分をたっぷり含み、あくが少なく甘みが特徴。日本広しといえども、大阪・泉州地域の気候風土と栽培技術でなければ作れないと言われています。伝統野菜で水なすと言えば、「泉州水なす」のことでしょう。一般社団法人日本伝統野菜推進協会の編集協力のもと、その来歴や栽培方法、食べ方やレシピを紹介します。

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水なすとは?

ざるにのせた水なす

「泉州水なす」は、大阪南部の泉州地域一帯のみで栽培・収穫される特産野菜です。そのルーツは、「貝塚澤なす」という水なすの一品種とされています(所説あり)。室町時代に栽培が始まり、明治時代には泉州地域の浜側一帯で盛んになりました。その後生産が途絶え、伝播先の新潟県で維持されていた苗を譲り受け、貝塚市で栽培が復活しました。「貝塚澤なす」は大阪府の「なにわの伝統野菜」に認証されています。

水ナスの特徴、他のナスとの違い

ナスは形状によって品種が分けられます。主に丸形で果実が大きい丸ナス、小さい小丸ナス、卵形ナス、中長ナス、長ナス、米ナスなどがあります。水ナスは中長ナスの一種で果実は巾着系の卵形。絞ると水がしたたるほど水分を含み、果皮は薄赤紫色で非常に薄く、果肉は緻密で柔らかくやや黄みがかっていて甘みが多いのが特徴です。

大阪・泉州地域が主な産地

水なすは、泉州の砂地で適当な塩分が含まれた土壌や、古くからの溜池の多さ、温暖な気候で育まれています。また、長く門外不出であった栽培技術などの理由によって、「同地でしか育たない」と言われてきました。他の地域でも水なすの栽培に取り組んでいますが、同様の水なすは簡単にはできないとされています

夏が旬、4~7月ごろがおいしい時期

「泉州水なす」は、JA大阪泉州とJAいずみのが地域団体商標登録を取っています。産地では加温栽培もされており、3~8月ごろがハウス栽培、5~11月ごろが露地栽培の収穫時期です。ハウスもの・露地もの問わず、旬の盛りの4~7月ごろがおいしい時期と言っていいでしょう。

生でも食べられる

水なすはやわらかくアクが少ないので生でも食べられます。果汁が多く甘みがあってフルーツのようだと言われています。その浅漬け(特にぬか漬け)は、泉州地域の特産品です。

約90パーセントが水分、夏に必要なミネラルも

水なすなどのナス類は、90パーセント以上が水分です。栄養成分では、カリウムが比較的多く含まれています。カリウムはナトリウムを体外に排出し、むくみや高血圧の改善につながるとされています。また、皮に含まれるナスニンはポリフェノールの一種で抗酸化作用があります。

水なすの基本的な栽培方法

水なす苗

水なすの栽培は、ナス類の中でも特に難しいとされています。栽培技術を要するだけでなく、土壌の影響も大きいようです。

苗から育てる

水なすは苗から育てるのが一般的です。種から育てることもできますが、初心者は市販の苗を買って栽培するのがおすすめです。

植え付ける

苗は5月上旬〜6月中旬ごろに植え付けます。水なすは寒さに弱いので、気温が十分に上がり、遅霜の心配がなくなるゴールデンウィーク過ぎが適期です。

地植えの場合は、土を30cmほど掘ってよく耕し、元肥を施したら畝立てして水はけをよくしておくことがおいしく作るポイントです。プランターの場合は、野菜用培養土を用いますが、鉢底石を敷いて水はけをよくし、あらかじめ潅水した土に苗を浅めに植え込みます。苗を植え付けたら支柱を立て、毎日様子を見て土が乾いたら水やりをします。

追肥する

一番花が咲いたら追肥します。以降、2週間に1回程度のペースで追肥します。

摘芯・摘果する

苗が成長してきたら、主枝と一番花の上下の側枝の3本仕立てにして、これより下の脇芽は全て取り除きます。一番花で実った水なすの大きさが10cmぐらいになったら摘み取って、株の成長を促します。

収穫する

開花から20日前後で収穫できます。最初にできた実から3つめぐらいまでは小さいうちに収穫すると、そのあとの着果数が多くなり、たくさん収穫できます。たくさんの実を着けていると株が弱ってしまうので、実があまり大きくならないうちにどんどん収穫しましょう。

水なすの食べ方

みずみずしく甘みのある水なすは、浅漬け用のナスとして最高の品質で、地域特産の泉州水なすの浅漬けは高級品とされています。水なすは浅漬け以外にも、和洋中のさまざまな料理に活躍します。どんな調理法でも楽しめますが、生で食べられることが最大の特徴です。

水なすの浅漬け

手で割くとよりおいしい

水なすを調理する際は、手で割くと風味が損なわれにくく、調味料が絡みやすくなります。ヘタを取って8等分に包丁で切り目を入れて縦に割きます。丸ごとの浅漬けも手で割いて食べます。

ヘタに切れめを入れた水なす

常温で保存する

生の水なすは低温と乾燥に弱いので常温で保存します。新聞紙などで一つずつ包み、涼しく風通しのいい場所でヘタの部分を上にして立てておき、なるべく早く食べましょう。室温が高い場合は、一つずつラップで包み冷蔵庫の野菜室に立てて3~4日。冷やしすぎると縮むので注意しましょう。

水なすをおいしく食べるレシピ5選

旬の水なすを生のまま使った暑い夏にぴったりのメニューのレシピを紹介します。ほとんどのレシピで火を使わずに、手早くおいしく作れます。

水なすのみょうが大葉あえ

水なすの大葉みょうがあえ

生の水なすを薬味とあえて、さっぱり食べられる和風サラダ風の一品。水なすのみずみずしさが引き立ちます。

材料(2人分)
・水なす   1個
・大葉    5枚
・ミョウガ  2本
・白だし   大さじ2

作り方

1.水なすはヘタを切り落とし、手で食べやすい大きさに裂く
2.大葉、ミョウガは千切りにする
3.ボウルに白だし、1、2を入れてあえる
※薬味と一緒にキュウリの千切りをあえてもよい

水なすのナムル

水なすのナムル

手で割いた水なすに調味料が絡み、ごま油とにんにくの香りでご飯が進みます。

材料(2人分)
・水なす        1個
・にんにく(すりおろす)1かけ
・塩          少々
・ごま油        大さじ1
・しょうゆ       大さじ1
・白ごま        小さじ1

作り方
1.水なすはヘタを切り落とし、手で食べやすい大きさに裂き、塩でもむ
2.ボウルにごま油、しょうゆ、おろしにんにく、白ごまを混ぜ、水なすを入れて和え

生ハム水なす

生ハム水なす

イタリア料理の夏の前菜、生ハムメロンを水なすでアレンジ。生ハムの塩気で水なすの甘さとジューシー感が引き立ちます。

材料(作りやすい分量)
・水なす  1個
・生ハム  6枚
・黒コショウ 適量

作り方
1.水なすは6等分のくし切りにして器に並べ、生ハムをのせる
2.1に黒コショウをふる

水なすのカプレーゼ

水なすのカプレーゼ

おなじみのトマトとモッツァレラチーズ、バジルのサラダ「カプレーゼ」に水なすをプラス。彩りと食べたときのみずみずしさがアップします。

材料(作りやすい分量)
・水なす 1個
・トマト 1個
・モッツアレラチーズ 1個
・生バジル      6~8枚
・塩         適宜
・黒こしょう     適宜
・オリーブオイル   適宜

作り方
1.水なす、トマト、モッツァレラチーズは、8mmほどの厚さの半月切りにする
2.器に水なす、トマト、モッツァレラチーズ、バジルを交互に並べて盛り付け、塩、黒こしょう、オリーブオイルをかける

水なすごまだれそうめん

水なすごまだれそうめん

夏の季節料理なすそうめんでは、ナスを加熱調理して使いますが、水なすの場合は生のままで。コクのあるごまだれでお腹も満足です。

材料(2人分)
・水なす    1個
・キュウリ   1本
・ツナ缶    1缶(70g)
・そうめん   3束(150g)
・みそ     大さじ1
・めんつゆ   大さじ2
・砂糖     小さじ1
・白すりごま  大さじ3
・水      200ml
・塩      適宜

作り方
1.水なすは一口大に手でちぎり、塩もみしておく
2.キュウリは細輪切りにして塩をふっておく
3.ごまだれを作る。ボウルに、みそ、砂糖、めんつゆを入れて練り、白すりごま、水を入れて混ぜ合わせる
4.鍋に湯を沸かしてそうめんをゆで、ザルにあげて流水でもみ洗いする
5.そうめんを器に盛り、水分を軽く絞った水なす、キュウリ、ツナをのせ、3のごまだれをかける

滴るほどの水分量、生でおいしい水なすは夏を潤す伝統野菜

日本で栽培されておよそ1200年。ナスは各地にさまざまな地域品種がある日本古来の野菜のひとつ。そのなかでも大阪府の「泉州水なす」は、皮の実の柔らかさ、水分の豊富さ、甘さなどが群を抜き、「ナスの王様」とも言われています。その独自性は、泉州地域の土壌や気候によるところも大きく、この地域のみで生産されるブランド品です。

水なす2個

水なすは浅漬けに適した品種です。泉州水なすの浅漬けは、夏のギフトでも喜ばれる逸品で、家庭用としても全国的に出荷されています。生の水なすもまた高級品ですが、手に入ったときは、ぜひ生で、果物のようにジューシーな甘さを味わいましょう。料理に使うときも火を通しすぎず、できれば生で調理するとその持ち味が生かせます。
難しいとされる水なすの栽培にチャレンジしてみるのも伝統野菜の楽しみ方のひとつ。「泉州水なす」のような食味にはならなくても、採れたての水ナスはさまざまな料理に活躍し、夏の食卓を潤してくれるでしょう。

編集協力:一般社団法人日本伝統野菜推進協会  

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