70歳まで漁師を続けられる。そんな理想的な環境がそろっているのが三宅島だった
晴れた三宅島の午後。漁業協同組合のある阿古漁港に漁船が次々と帰港していました。
漁協の職員さんと漁師さんが協力し、その日の釣果を輸送用の発泡スチロールに詰めていきます。
大きなカツオを手際よく箱詰めしていく漁師さんの中に、西田圭志(にしだけいし)さんの姿もありました。
西田さんは現在32歳。大学卒業後に三宅島に移住し、あと数年で漁師歴は10年に。
70~80歳と高齢な漁師も活躍する一方、数が減っているという三宅島の漁師の中で、西田さんは若手でありながら既に中核的な漁業者。これからの三宅島の漁業を担う期待の星です。
実は西田さん、大学時代は東京大学で研究者を志していました。漁師を志すきっかけになったのは、大学の研修で体験した漁師の仕事だったといいます。
西田さん
そこから日本の漁業や漁場について調べ始めた西田さん。いくつかの漁業体験プログラムに参加し、最終的に三宅島に的を絞ったそうです。決め手となったキーワードは「サステナブル」。
西田さん
また三宅島は黒潮の影響により海があたたかい。1年を通してカツオ・マグロ、高級魚のキンメダイが釣れます。安定した収入を得ることができ、漁業を長く続けることができると考えたのです。
西田さんは2018年に3年間の研修を経て独立。現在まで平均して1000万円弱ほどの年収を継続できているそうです。それを可能にしているのは、三宅島の恵まれた環境とサステナブルな漁業、加えて西田さんが様々に選択肢を増やしているからだといいます。
西田さん
また三宅島という利点を生かして、夏場にイルカウォッチングやドルフィンスイミングの観光客も受け入れていることも大きな収入源になっているといいます。
西田さん
今日の自分の決断が、明日の自分をつくる。釣果も幸せも自分次第という、難しさとやりがい
近年、三宅島の漁獲量は増加傾向。2005年には160トンだった漁獲量が、2020年には214トンを記録しました。漁獲量ではキンメダイが全体の45%、マグロ類が29%、カツオが8%とトップ3にを占めています。その他にもムロアジやカンパチなど多様な魚が獲れるのも三宅島の特長です。(出典:三宅島 さかな図鑑 P101~)
西田さん
帰宅後は趣味の時間。21時ころの就寝まで、トレーニングをしたりアプリのプログラムを組んだりして過ごすそうです。
西田さん
そう笑う西田さん。その趣味が高じてか、2023年末には人気テレビ番組『SASUKE』にも挑戦したほどです。
西田さん
若手が中心となって、力を合わせて未来をつくっていく。それが三宅島の漁業のカタチ
西田さんは、三宅島の漁師は『この島の漁業を盛り上げよう』と同じ方向を見ている。バチバチしない。近隣の島に比べて、漁師の数が少ないのもその理由のひとつだと思う、と語ってくれました。
三宅島で獲れた魚は、漁協を通して東京都内へと送られ、販売されます。漁協は漁師さんたちの売上の一部を活用して運営されているため、漁師さんたちにとっては漁協が、漁協にとっては漁師さんが、なくてはならない存在。水揚げや箱詰めは、漁師さんと漁協が助け合って作業をします。そこで仲間意識も育まれるそうです。
西田さん
西田さんは、お互いが支え合っているのが三宅島の漁師の特長、と話します。それは漁業のルール作りにも表れていると言います。「大切な水産資源を守ろう、それが漁師という仕事を持続させるために重要だ」という意識を漁師みんなが有しているそうです。
三宅島では短期・長期の漁師研修も行っていますが、受講者は研修後に三宅島で漁師として生活を送ることになります。小さい島だからこそ、誰がどの漁師のところで学んでいるかなども、すぐに住民みんなに知れ渡るそうで、
西田さん
そう話す西田さんは、昨年ご結婚され、三宅島に自宅も購入したそうです。快適で暮らしやすい三宅島で、漁師として人生を楽しむ。その準備が整ったのです。
共に力を合わせて頑張れる、未来の東京の漁業を担う人材を募集中!
2024年には「ミスターとうきょう漁業」に任命された西田さん。今後は三宅島はじめ東京都の島しょ部で漁業に従事する魅力ややりがいとともに、東京産の水産物のアピールなども担います。若手かつ中堅漁師として、これからの三宅島、そして東京都の漁業を背負っていく人材として、西田さんの存在感はより大きくなるでしょう。それもあり初の研修生を受け入れることも決めたとのこと。
西田さん
西田さんに将来の目標をたずねると、70歳くらいまでは漁師を続けたいですね、と笑顔で答えてもらえました。「三宅島なら、それができるはず。サステナブルで選択肢の多い漁法と恵まれた環境、なにより頑張る人を受け入れてくれる先輩漁師たちと島の人たちがいるから」と話してくれました。
三宅島はじめ東京島しょ部の漁業協同組合では、漁師を目指す人を広く募っています。興味を持たれた方はお気軽にお問い合わせください!
東京漁業就業支援センター
「東京フィッシャーズ・ナビ」
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