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ほかの農家の良いところはどんどんマネる! 高値で売れる農産物を作って地域の農業を持続可能に

ほかの農家の良いところはどんどんマネる! 高値で売れる農産物を作って地域の農業を持続可能に

全国の農場を渡り歩くフリーランス農家コバマツです。今回は、徳島県美馬市に高価格の白ネギを作っている生産者がいると聞きつけてやってきました。農産物を高値で販売するための秘訣(ひけつ)とは? 地域の農業を守っていくための農業経営の展開についても聞いてきました。

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今回やってきたのは徳島県美馬市。徳島ってコバマツにとってはスダチのイメージでしたけど、もちろんこの地域にもいろいろな農産物を生産している農家がいます。今回取材したこちらの農家も、さまざまな品目を生産し、独自の売り方をしているとのこと。

■藤原昌樹(ふじわら・まさき)さんプロフィール

徳島県美馬市出身。農業大学校を卒業後、21歳で親元就農。2015年、有限会社美馬グリーンサービスの代表取締役に就任。栽培品目は水稲9ヘクタール、麦3ヘクタール、白ネギ1.6ヘクタール。このほかニンニクや野菜なども栽培している。地域の若手農家の中心的存在で、2012年には美馬地区の農業青年クラブの会長、2014年からは徳島県農業青年クラブの副会長に就任し、積極的に活動をしている。

それでは早速お話を聞いていきましょう!

高値で農産物が売れるワケ

コバマツ

藤原さんはいろいろな作物を栽培しているみたいですね!
私は今回このネギが気になって、取材に来ちゃいました!
箱入りネギ

ふるさと納税の返礼品。むちゃ高級そう!

美馬市のふるさと納税返礼品の「宝ねぎ」。返礼品の金額とはいえ、3Lサイズ5本で1万5500円ってスゴイですね! 立派な箱に入っていて、とっても高級そう!
地域に誇れる野菜を残したいと思って「宝ねぎ」という名前をつけました。返礼品は一番品質の良いものを厳選しています。こういう商品の提案の仕方は、僕の農業の師匠のマネです。
宝ネギは東京のスーパーなどでも販売しています。実際に東京の売り場に行って、「もし売り場に自分の野菜が並ぶとしたら、どんなふうに置かれるんだろう? どうやったら手に取ってもらえるだろう?」というのを勉強しました。そんなふうに売り場の情報収集も重ねた上でパッケージデザインしたものに袋詰めし、奇麗にポップまでしっかり自分で作ってスーパーに提案していたんですよね。こんな感じで他の農家がまだあまりやっていないことを徐々に取り入れていきました。

藤原さん

ネギとポップ

藤原さんが作ったリーフレット。個人向けの宅配やスーパーに送るサンプルに同梱する

お師匠さん、先進的な方なんですね!
ほかに参考にしていることはありますか?
SNSで他の農家がやっていることも見て取り入れたりしていますね。高く売れる商圏は絶対関東になってくるので、そこにも販売できるような強みを作っていこうと思って。
デザイン自体は外注しています。僕だけで決めるんじゃなくて、周りの主婦やバイヤーの人たちにどれが良いか聞いて決めていますね。消費者が手に取りやすいものはどれなのかというのを吟味します。ポップもスーパーさんと一緒に吟味して作成しています。
消費者も、取引先も、生産者の顔が見えるほうが良いと思うんですよね。仲間のレンコン農家で自分の顔写真と映えるレンコン畑をバックにした写真を使った名刺とかポップを作っている農家がいて、それを自分もマネしてみたりしています。

へえ~! いろんな人の意見や方法を取り入れているんですね。
ロゴのデザインもいい感じですね。
パッケージとか名刺にもこだわりを入れています。「馬」の柄をデザインして入れるとかね。この地域の名前は「美しい馬」と書いて美馬なんですけど、売り場に馬の絵が入ってる野菜のパッケージってないなと。
それで地元アピールも兼ねて地域にちなんだ何かを入れようと思って、馬を入れたデザインにしてみました。

ロゴ

さっき受け取った名刺も、ちょっと特徴的かも。
名刺も、僕は農家ではなくスーパーやバイヤーさんに渡すことを意識して作っていますね。

藤原さん 名刺

藤原さんの名刺。一発でネギ農家だと分かる

この名刺だったら「藤原さん=ネギ」ってすぐ分かりますね!

安売りしない

藤原さんはどうしてそんなに販売方法にこだわるんですか?
就農したてのころ、僕も農協出荷だったんですけど、1日頑張って出荷しても6000~7000円にしかならなくて、これじゃだめだなと思ったんです。それから、おいしくて自信を持って高値でも出荷できるものを作ろうと思いました。

そう思ってどんな行動に出たんですか?
当時の師匠に、おいしいネギの作り方を教えてもらったり、SNSで他の農家がやっている液肥や堆肥(たいひ)など強い野菜づくりのための情報を収集したりして実践していきました。
うちの会社、美馬グリーンサービスでは、地域のコメ農家さんの田植えから収穫までの工程のうち、依頼された部分を請け負う事業をしています。その米の収穫で出たもみ殻を畑にまいてみて、3年がかりで土づくりをしていって、格段にネギの食味が良くなっていったんですよね。

ネギ畑

殺虫剤などをなるべく使わない生産方法にこだわっている

地域にとって役立つ事業で得たもみ殻を生産に取り入れたことで、作物の質が上がったんですね! では、販路はどのように開拓していったんでしょうか?
全部人のつながりですね。SNSでつながっていて「興味がある」という人や、知人の紹介のバイヤーさんにすぐにサンプルを送ったりして、徐々に広げていきました。

さっき「高く売れる商圏で販売できる強みを持ちたい」と話していましたが、やはり高級な食材を求める客層を狙って商品づくりや販路拡大をしているんですか?
普通に送料を乗せて出荷するなら、高値でもいいものがほしいという「アッパー層」を狙わないと割に合わないんですよね。僕はそこだけを目指したいと思っています。
物価高騰で資材も高くなって、ネギを1袋15円値上げして出したんですよね。周りからは「そんなに値上げしたら売れなくなる」といわれていましたけど、以前と変わらず売れています!

求められる商品づくりをしていたら、物価高騰の影響を受けた値上げも強気でいけるんですね!!

農業経営の多角化で地域貢献

先ほどのお話で、藤原さんが経営している美馬グリーンサービスでは、農作業の請負業もしているとのことでしたが。
はい! 土地利用型農業の稲作をメインに、耕運、代かき、田植え、稲刈りや、草刈りなども請け負っています。この地域も高齢化が進んでいて、請け負う戸数も増えてきていて、今は70戸ほどの畑を引き受けていますね。
これからはもっともっと請け負える体制づくりをしていきたいと思っています。

70戸! 多いですね! これから増やしていきたいということはまだまだ耕作放棄地があるということなのでしょうか?
今はまだ離農していなくても、地域の農家は高齢化してきていてこれからどんどん離農が進んでいきます。そこを、僕の会社で引き受けて土地利用型農業で地域の農地を守っていきたいと思っています。耕作放棄地になってしまったら、なかなか農産物を作れません。そうならないように、僕の会社できちんと耕作して地域の農地を残していきたいと思っています。

一度荒れてしまった畑は、また農産物が作れるような土壌にするのには時間がかかりますもんね。ブランディングをして農産物の価値を高めるだけではなく、農業経営の多角化で地域の農地を守るのも藤原さんの大事な役割ですね!

地域の農業を続けていくためには

価値あるものとして農産物を作り、販売、発信していくことって、シンプルに聞こえますが、今後農業を持続させていくために必要なことだよなと思いました。藤原さんがこれからも地域で農業をしていくために必要だと感じていることや考えていることはなんですか?
県内外のいろいろな生産者と交流して情報交換をすることです。栽培方法など他の生産者が取り組んでいることはとても参考になるので。
また、農家だけではなくて、異業種とも交流することが大事だと思います。異業種の人との交流は、販路や新しいアイデアの発見につながると思っています。

確かに! 実際に藤原さんはそれを実践して、ブランディングや高値での販売を実現していますよね。
これからさらに取り組んでいきたいことはありますか?
今、海外の情勢によって資材も高くなってきていますし、これからいろんな事が世界で起きて貿易が止まってしまったら、種が国に入ってこないことも想定されると思っています。なので、種を自分の会社で生産することで、自給的な農業ができないかと考えています。

私もそういう声をあちこちで耳にしています。
自給的な農業は、すぐには利益には結びつかないでしょう。でもそういう取り組みのために、土地利用型農業で地域の農地を守りつつ、しっかりと自分の経済的基盤を作ることも大切だと思っています。

それってまさに持続可能な農業ですね!

ネギを担ぐ 藤原さん
儲かる農業を目指すことは、農業経営を持続させていくために必要なことだと思います。
そのために、自分以外の農家が作る商品のデザインや販売方法を研究し、良いところはマネることで、消費者に手に取ってもらえる製品づくりをし、販路を広げていく。これを実践する藤原さんの姿勢そのものを、多くの農家がマネしてもよいかもしれません。
さらに、藤原さんは多角的農業経営をすることで、自身の農業経営を安定させるだけではなく、地域の農地を守ろうとしています。個人農家の持続的な農業経営を目指す取り組みが、地域の農業を守ることにも貢献しているのだなと感じました。

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