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マクワウリとはどんなウリ?  特徴やメロンとの違い、栽培方法とおすすめレシピも紹介【日本伝統野菜推進協会監修】

sato tomoko

ライター:

連載企画:解説!全国伝統野菜

マクワウリとはどんなウリ?  特徴やメロンとの違い、栽培方法とおすすめレシピも紹介【日本伝統野菜推進協会監修】

かつては全国的に栽培され、夏の果物としてポピュラーだったマクワウリ。日本古来のメロンで、植物学的には野菜ですが果物として食されている「果物的野菜」です。昔はどこの畑にも植えられ、たっぷりの果汁でのどの渇きを潤してくれました。古くは紀元前の縄文遺跡にその種の痕跡があり、大和朝廷、戦国武将、江戸幕府にも好まれ、近年は昭和の懐かしい夏の味覚として再認識されつつあります。今では希少な地域野菜として各産地に受け継がれ、地域ごとに色や形が異なる多様な品種があることも魅力のマクワウリ。一般社団法人日本伝統野菜推進協会の編集協力のもと、その特徴、栽培方法、食べ方、レシピを紹介します。

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マクワウリとは

ザルに盛ったマクワウリ

マクワウリは、ウリ科キュウリ属のつる性一年草で、オリエンタルメロンと呼ばれる小型メロンの仲間です。日本へは中国大陸・朝鮮半島から渡来したと考えられています。古くから食用にされ、縄文時代早期の遺跡から種子が発見されています。

マクワウリは漢字で「真桑瓜」と書き、名産地として知られる美濃国の真桑村(現・岐阜県本巣市)が、その名の由来とされています。12世紀ごろから同地で栽培され、織田信長がこれを朝廷に献上したとの記録があります。

かつてウリと言えばマクワウリのことを指しました。全国各地で露地栽培され、夏の味覚として出回っていましたが、より甘いネット系メロンやハウスメロンの増加で市場から姿を消しつつありました。近年では、その希少性から各産地で伝統野菜として保存活動が行われ、栽培が受け継がれています。

メロンとの違い

メロンには東洋系と西洋系があり、現在出回っているメロンは主に西洋系で、マクワウリは東洋系のメロンです。ネット系の西洋メロンが、日本の市場に流通し始めたのは大正時代の1925年以降。昭和中期までは、マクワウリを「メロン」と呼んでいました。マクワウリ系統と西洋種の交配で「プリンスメロン」などが生まれたことから、メロンの元祖とも呼ばれています。

マクワウリにはさまざまな品種がありますが、総じてメロンよりも皮が薄く、果肉はやや硬めで、すっきりとした甘みがあります。

マクワウリの品種

マクワウリは、各地に多くの品種があり、色や形はさまざまです。一般的に果実は俵形をしているものが多く、果皮の色は黄色系・緑色系・白色系の3系統があります。

また、マクワウリの呼び方も複数あり、味瓜(あじうり)、梵天瓜(ぼんてんうり)、都瓜(みやこうり)、甘瓜(あまうり)、甘露(かんろ)、甜瓜(てんか)、唐瓜(からうり)、梨瓜(なしうり)など、地域によって異なります。

マクワウリの産地

マクワウリの名称の由来になった岐阜県の「真桑瓜」は、米俵のような円柱形で黄色の果皮に緑の筋が10本入り、成熟するとツルから自然に離れ落ちる「落ちウリ」で、香りがとてもよいのが特徴。岐阜県が指定する「飛騨・美濃伝統野菜」の一つです。

岐阜県のマクワウリ

飛騨・美濃伝統野菜の真桑瓜(写真提供:岐阜県立岐阜農林高等学校)

東京都の「小金井まくわ」は、青系の俵形。江戸幕府が武蔵国府中(現・府中市)に真桑村の農民を呼んで栽培させたのが最初とされています。小金井市の農家で採取された小金井マクワが「江戸東京野菜」に登録されています。

新潟県の「ひとくちまくわ」は、薄緑色の小さい玉形で、皮が薄く果肉が甘い。上越市の柿崎地区を中心に生産される地域野菜で、2010年に「上越伝統野菜」に認定されました。

富山県の「銀泉まくわ」は、黄色に白い縦線が入った俵型で、果肉は白く糖度が高いのが特徴。砺波市・富山市で生産されている、富山の伝統野菜です。

愛知県の「落瓜(おちうり)」は、尾張地域で古くから栽培され、灰緑色に銀白色の縦じまが入った俵形で、果実は800g~1kgと大きく、肉質は緻密で香りが強いのが特徴。また、江南市や安城市を中心に広く栽培されている「金俵(きんぴょう)まくわうり」は、明るい黄金色の俵形で、果肉は白く甘みに富んでいます。ともに愛知県が原産で「あいちの伝統野菜」に認定されています。

兵庫県の「網干(あぼし)メロン」は、マクワウリと西洋種メロンとの交雑で生まれたとされ、緑白色で浅い筋が10条ほどある長卵形で150〜250gの小果。果肉は淡い緑色で糖度は15度を超えますが、すっきりと後味がよいのが特徴の姫路市の伝統野菜です。

奈良県の「黄金まくわ」は、美しい黄金色の俵形で、果肉はほんのり甘くやわらかい食感。奈良時代から庶民の間で食べられてきました。奈良県原産で「大和野菜(大和の伝統野菜)」に認定されています。

このほかにも、青森県南部から岩手県北部にかけて栽培されている「南部金甜瓜(なんぶきんまくわうり」、石川県が原産の「中奥梨瓜」「加賀梨瓜」、福井県の「きんかん瓜」、滋賀県の「金まくわうり」、岡山県の「茂平(もびら)うり」など、各地域に特産のマクワウリがあります。

マクワウリの栄養成分

マクワウリはほとんどが水分で、夏場の水分補給に最適です。他の果実類とくらべて炭水化物は少なめ。カリウムが豊富で血圧を正常に保つのに役立ちます。ビタミンCのほか、黄肉種はβーカロテンを含んでいます。

マクワウリの栽培方法

マクワウリの種

ネット系のメロンと比べて育てやすく、家庭菜園にも向いています。畑では敷きわらをして地ばい栽培しますが、プランターの場合は支柱を立てて空中栽培します。春に種をまき、7月~9月に収穫します。

土作り

土壌は種まき前に石灰を散布して中和させ、元肥として堆肥(たいひ)、油かすなどを入れてよく耕しておきます。プランターの場合は、鉢底石を敷き、野菜用培養土を使用します。

種まき・育苗

桜の花が咲く頃に種をまきます。高さ5~10cm、幅1mの畝を作り、株間1m程度に3
~4粒ずつまいて、種が隠れる程度に土をかけます。根浅性のため深植えしないことがポイント。発芽するまでは毎日水を与えます。

プランターの場合は育苗するといいでしょう。3号ポットに3~4粒ずつまき、覆土は1cm程度。寒さに弱いので25℃程度になるように保温します。気候が十分に暖かくなった晩春に植え付けをします。

追肥・水やり

追肥は実が膨らんできたら2週間に1度、液肥を与えます。水は土の表面が乾いてきたらたっぷり与えます。

整枝

初夏から夏にかけて成長が旺盛になります。葉が茂ってきたら畝に敷きわらをします。つるが伸びて本葉5~6枚になったら、親づるを摘芯して、子づるを3本ほど伸ばします。子づるが伸びて本葉が15~20枚になったら摘芯して、孫づるに実をつけさせます。早めに摘果をして1株あたり6~8個の果実が残るように育てます。

プランターの場合は、つるを支柱に誘引し、実が膨らんできたらネットに入れてつるし、落下を防ぎます。

収穫

開花から40~50日で果実が成熟します。夏期に実が十分に膨らんで大きくなったら収穫の目安です。

マクワウリの食べ方

半分に切ったマクワウリ

マクワウリは果物として生で食べられます。メロンと比べて甘さが控えめなので、漬物にしたり、加熱調理して炒めもの、煮もの、汁ものの材料にもなります。

マクワウリの切り方

1.マクワウリをよく洗い、包丁で縦半分に切ります。最初に尻を少しカットして平らにしておくと安定して切りやすくなります。
2.スプーンなどを使って半分に切ったマクワウリの種を取り除きます。
3.縦半分にカットしたマクワウリをさらに縦半分に切ります。
4.包丁で皮をむき、スライスや一口大などお好みの大きさに切ります。

切って皮をむいたマクワウり

マクワウリの保存方法

マクワウリが未熟な場合は、常温で保存します。室温に置くと徐々に熟してきます。熟したマクワウリは冷蔵庫で保存します。乾燥を防ぐために、丸ごとラップで包むかポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室へ。カットしたマクワウリは、ラップで包み冷蔵庫で2~3日。

長期保存する場合は、冷凍保存します。マクワウリを食べやすい大きさにカットし、冷凍用保存袋に入れて冷凍庫で約1カ月。半解凍してデザートとして食べたり、凍ったままスムージーなどの材料に使えます。

マクワウリのおすすめレシピ5選

野菜と果物の両方の性質を持つマクワウリは、いろいろな料理の食材として使うことができます。食べきれないときや甘さが足りないと感じたときに試してみたいレシピを紹介します、

マクワウリの甘酢漬け

マクワウリの甘酢漬け

マクワウリのすっきりした甘さと酢の酸味が好相性。作りおきができて、食事の箸休めはもちろん、お茶請けにもなります。

材料(作りやすい分量)
・マクワウリ        1個(400g程度)
・酢            1/2カップ
・きび糖(または砂糖)   大さじ2
・塩            小さじ1/2
・赤唐辛子(輪切り)    適宜

作り方
1.甘酢を作る。鍋に酢、砂糖、塩を入れて混ぜ、ひと煮立ちさせたら冷ましておく
2.マクワウリは種を取り除き、皮をむいて1~1.5cmの厚さに切る
3.保存容器にマクワウリ、赤唐辛子、1の甘酢を入れ、冷蔵庫に一晩おく

マクワウリとキュウリのヨーグルトサラダ

マクワウリとキュウリのヨーグルトサラダ

キュウリのシャキシャキ感とマクワウリのジューシーな甘さで3度おいしい。ニンニクの香りが食欲をそそる夏にぴったりのサラダです。

材料(作りやすい分量)
・マクワウリ     200g
・キュウリ      1本
・プレーンヨーグルト 1カップ
・オリーブオイル   大さじ2
・塩         小さじ1/2
・粗びき黒コショウ  適宜
・おろしニンニク   小さじ1/2

作り方
1.プレーンヨーグルトの水気をきる。ザルにペーパータオルを敷いてボウルを受け皿にし、プレーンヨーグルトを入れて冷蔵庫に3時間程度おく
2.マクワウリは種を取り除き、皮をむいて1cm角に切る
3.キュウリは1.5cm程度のさいの目切りにする
4.ヨーグルトソースを作る。ボウルに水気を切ったプレーンヨーグルト、オリーブオイル、塩、粗挽き黒コショウ、おろしニンニクを入れて混ぜる
5.ボウルにヨーグルトソース、マクワウリ、キュウリを入れて混ぜ合わせる
※好みでバジルやミント(いずれも分量外)を飾る

マクワウリとハムのサンドイッチ

マクワウリとハムのサンドイッチ

粒マスタードとハムの塩味がポイント。青系マクワウリでカラフルに、甘すぎない食事系のフルーツサンドです。

材料(2人分)
マクワウリ  1/2個
ハム       2枚
食パン(8枚切) 4枚
バター     小さじ2
粒マスタード  小さじ2

作り方
1.マクワウリは、種を取り除き、皮をむいて5mmの厚さに切る
2.常温に戻したバターを食パンの片面に塗り、その上に粒マスタードを重ね塗りする
3.食パンにマクワウリ、ハム、マクワウリの順に隙間(すきま)なく並べ、もう1枚の食パンではさむ
4.2セットのサンドを重ねて濡れふきんかラップで包み、皿などで重石をして10分ほど置く
5.好みでパンの耳を切り落とし、好みのサイズに切り分ける

マクワウリのカニ玉スープ

マクワウリのカニ玉スープ

マクワウリは煮込むとつるっととろける食感に。とろみのついた中華風スープで食欲のないときにも食べやすい一品です。

材料(作りやすい分量)
・マクワウリ      1/2個
・カニ缶        小1缶(55g)
・卵(溶き卵)     1個
・水          400ml
・鶏ガラスープの素   小さじ2
・かたくり粉(水溶き)   小さじ1
・塩コショウ      少々

作り方
1.マクワウリは種を取り除き、皮をむいて一口大に切る
2.鍋に水とマクワウリを入れて強火にかけ、沸騰したら中火にして鶏ガラスープの素を入れて煮る
3.マクワウリが透き通ったら、カニ缶ををほぐして入れ、水で溶いたかたくり粉を加えて、かき混ぜてとろみをつける
4.溶き卵を回し入れて火を止め、塩コショウで味を整える
※好みでショウガの千切り、青ネギ(いずれも分量外)などをトッピングしてもよい

マクワウリと豚肉のソテー

マクワウリと豚肉のソテー

マクワウリのほどよい甘さは肉料理にもマッチします。ショウガを効かせると味のバランスがよくなります。

材料(作りやすい分量)
・マクワウリ  1/2個
・豚バラ肉   100g
・塩       少々
・コショウ    少々
・油       大さじ1
・しょうゆ    大さじ2
・おろしショウガ 小さじ1

作り方
1.マクワウリは、種を取り除き、皮をむいて1cmの厚さに切る
2.豚バラ肉は3cmの長さに切り、塩コショウをふり、油を熱したフライパンで炒める
3.肉の色が変わったらマクワウリを入れて火が通るまで炒め、しょうゆ、おろしショウガを加えて炒め合わせて味を絡める
※好みで大葉(分量外)の千切りをトッピングする

暑い夏においしく水分補給、昔懐かしい和のメロン

日本で古くから栽培され、広く食べられてきたマクワウリ。今は希少な存在ですが、各産地で地域野菜として栽培されています。伝統野菜に指定している地域もあり、その文化とともに大切に保存されています。市場に流通することはほとんどありませんが、地域の直売所や産直通販サイトなどで手に入れることができます。

マクワウリ(甘露)

特筆すべきは品種の多さ。各地域に根付いたさまざまなマクワウリがあり、呼び名もいろいろ。夏休みの旅行や帰省で産地を訪れたら、ぜひご当地のマクワウリを味わってみてください。好みのマクワウリを見つけて、栽培してみるのもいいでしょう。種も種苗店や通信販売で入手しやすくさまざまな品種がそろっています。日本の気候で育てやすいマクワウリは、夏の盛りに実をつけてのどを潤してくれるでしょう。

編集協力:一般社団法人日本伝統野菜推進協会  

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