三浦大根とはどんな野菜?
三浦大根(みうらだいこん)は、神奈川県の三浦半島で栽培されている冬大根です。根の全体が白い「白首大根」の一種で、首の部分は細く、中央から尻にかけて太くなる「中ぶくれ」の形が特徴です。青首大根と比べると重量は5倍ほど。通常では長さ50~60cm、重さ約3kgになり、大きいものは重さ8kg、長さ70cmに肥大します。
三浦半島は温暖な気候と水はけの良い土壌に恵まれ、昔から大根が盛んに栽培されてきた地域です。三浦大根は、明治時代に三浦半島の在来種である高円坊大根と練馬大根などが自然交雑して誕生しました。大正時代にその名が付けられ、三浦の特産品として親しまれてきましたが、青首大根が主流となった現在では、大根出荷量の1%まで減少し、主に地元で正月用に流通する希少な伝統野菜です。
味の特徴
肉質は柔らかく緻密で煮崩れしにくいので、煮物料理に適しています。生食ではみずみずしくシャキシャキとした食感が楽しめます。大根特有の辛みがありますが、煮ると甘みが増します。
旬の時期
三浦大根の旬は12月です。年末の3日間のみ正月用として出荷され、三浦市内の直売所、スーパー、三浦市農協オンラインショップなどで販売されます。2024年は12月23、25、26日に出荷される予定です。
含まれている主な栄養と効果
三浦大根には、一般的な大根と同様にビタミンCが豊富で、カリウム、食物繊維、消化酵素などが含まれています。ビタミンCや一部の消化酵素は熱に弱い性質があります。
イソチアネート
大根の辛味成分で根の先端や皮に近いほど多く含まれています。すりおろす・切るなどして細胞が破壊されることで生成され、胃液の分泌を促進し、腸の働きを助ける効果が期待できます。
ジアスターゼ(アミラーゼ)
消化酵素の一種で、でんぷんを分解する働きがあります。消化を助け、胃腸の調子を整える効果が期待できます。熱に弱いため、効率よく利用するには生で食べると良いでしょう。
カリウム
ミネラルの一種で、ナトリウムの排出を助け、細胞の浸透圧を調節する働きがあります。
三浦大根の育て方
三浦大根は12月の収穫に向けて9月上旬に種をまきます。青首大根よりもサイズが大きいため、畝間や株間を広めに取って栽培します。水はけが良く保水性のある土が適しています。
畑の準備
種をまく2週間以上前に苦土石灰と堆肥を入れ、40~50cmの深さまで良く耕し、小石や草の根は取り除いておきましょう。
種まき
株間40cm、条間45cmで約2cmの深さに3~5粒ずつ種をまきます。
間引き・管理
発芽後、双葉が開いたら1回目、本葉が2~3枚になったら2回目の間引きを行い、本葉が5~6枚のときに3回目の間引きを行い、1カ所1株にする。最後の間引きの際に追肥して土寄せします。土の表面が乾いたら水やりをする。
収穫
種まきから約70日後、外葉が垂れてきたら収穫適期。根元を持ってゆっくりと引き抜きます。
三浦大根を育てる時に注意したい病害虫と対策
アブラナ科の植物は害虫が付きやすく、秋冬に育てる大根では、ダイコンハムシ、アブラムシなどに注意が必要です。病害では、黒斑病などに注意しましょう。
ダイコンハムシ
ダイコンサルハムシとも言います。黒く丸い体長4mmほどの甲虫で、葉を食害して穴を空けます。大量発生すると駆除しにくいため、見つけたらすぐに取り除きます。忌避効果のあるニラやネギを近くに植えると飛来しにくくなります。
アブラムシ
窒素成分の過多で発生しやすく、日当たり・風通しの悪い環境で増殖し、葉裏や新芽に寄生して汁を吸って作物を加害します。見つけたら水で洗い流す、粘着テープで取り除くなどして除去しましょう。黄色に集まる性質を利用して、黄色の粘着板を設置する方法もあります。
黒斑病
細菌により大根の葉や茎に黒い斑点が発生する病気です。湿度が高く過密な環境で発生しやすく、進行すると葉が枯れ、大根の生育に悪影響を与えます。こまめに観察して早期に発見し、感染した葉を取り除き、畑の外で処分しましょう。
おいしい三浦大根の選び方
三浦大根は首が細く、中央部から下部にかけて太くなる「中ぶくれ」の形が特徴です。大きくふっくらとした重量感のあるものを選びましょう。皮にハリと艶のあるものが、水分をたっぷり含んでいます。
三浦大根の保存方法
葉が付いている場合は切り落とし、切り口は水分が飛ばないようにラップをかけ、尻尾が付いている場合は切らずに、新聞紙などに包んで冷暗所で保存します。
葉は切り口に水で湿らせたキッチンペーパーを当てた上からラップをしてポリ袋に入れて冷蔵庫に立てて置きます。
三浦大根の食べ方とレシピ5選
三浦大根は肉質が緻密で煮崩れしにくいため、おでんやブリ大根などの煮物料理に適しています。生食ではみずみずしく歯ざわりが良いので、産地では「正月の紅白なますには三浦大根」と言われています。煮物や煮込み料理は、最初に大根を下茹ですると、つゆやだしの味が中までたっぷり染み込みます。
下茹での方法
1.三浦大根は厚めに皮を剥き、使う形状にカットし、面取りをして、厚切りの場合は隠し包丁(片面に深さ5ミリ程度)を十字に入れる。
2.鍋に入れ、米のとぎ汁を被る程度に注ぎ、中火にかける。※米のとぎ汁がなければ米大さじ1を加えても良い
3.沸騰したら弱火にして15分程度、三浦大根が透き通り、竹串がすっと刺さる程度まで茹で、湯から上げる
4.バットに並べて1時間程度冷ます。
おでん
冬大根と言えばおでん。大きくカットした三浦大根にだしをたっぷり含ませれば、主役級の存在感です。
材料(2人分)
・三浦大根 400g
・コンニャク 1/2枚
・卵(固茹でにする) 2個
・練り物(好みで) 適量
<だし汁>
・水 1000ml
・顆粒だし(合わせ) 4g
・しょうゆ 大さじ1
・酒 大さじ1
・みりん 大さじ1
作り方
1.三浦大根は3~4センチ厚の輪切りにして、下茹でする。
2.コンニャクは表面に格子状の切れ目を入れて三角形に切り、下茹でする
3.鍋にだし汁の材料を合わせて沸騰させて、少々の塩(分量外)で味を整える
4.大根、卵、コンニャクを入れて中火にかけ、煮立ったらとろ火にして30分程度煮込む
5.練り物を加え、10分程度煮て火を止めて味を含ませる
干し柿入り紅白なます(作りやすい分量)
紅白なますに干し柿を加えると上品な甘みととろみが出ます。三浦大根の白さを目立たせるにはニンジンは少なめが基本です。
材料
・三浦大根 200g
・ニンジン 20g(三浦大根の1割程度)
・干し柿 1個
・塩 少々
・砂糖 大さじ2
・酢 カップ1/4
作り方
1.三浦大根とニンジンは皮を剥いて縦に千切りにし、ボウルに入れて少々の塩(分量外)をふり、軽く混ぜて10分ほどおく
2.干し柿はヘタと種を取り除き、細切りにする
3.合わせ酢を作る。容器に塩、砂糖、酢を入れて混ぜ合わせる
4.1の水気を絞り、2の干し柿を混ぜ、3の合わせ酢であえる
ブリ大根
大根をじゅわっと柔らかく仕上げるには下茹でがポイント。しょうゆとみりんは最後に加えるのが照りを出すコツです。
材料
・ブリ 2切れ(160g)
・塩 適量
・三浦大根 200g
・ショウガ 1かけ
・水 カップ1/2
・酒 大さじ3
・砂糖 小さじ1
・しょうゆ 大さじ2
・みりん 大さじ1
作り方
1.三浦大根は1センチ幅の半月切りにして下茹でする
2.ブリは両面に塩を振り、ラップをかけて冷蔵庫に20分ほど置く
3.鍋に三浦大根を入れ、かぶる程度に水を張り、強火でひと煮立ちしたら中火にして透き通るまで15分程煮て取り出す。残り湯は取っておく
4.1のブリを半分に切り、3の鍋の湯にくぐらせ、表面が白くなったら冷水に取り、余分な鱗や汚れを落とす
5.ショウガは皮をむいて薄切りにする
6.フライパンに水、酒、3の三浦大根、4のブリを入れ、砂糖、ショウガを加えて強火にかけ、ひと煮立ちしたらアクを取り除き、中火で約10分煮る
7.しょうゆ、みりんを加え、更に20分程煮詰め、全体がなじんだら火を止める
8.食べる際に温めて器に盛り、ショウガの千切り(分量外)を飾っても良い
みぞれ鍋
雪見鍋とも言います。三浦大根は粗く鬼おろしにすると水分と食物繊維が保たれ、みぞれのようなシャキシャキ感と雪のようなふんわり感が楽しめます。三浦大根に含まれる消化酵素の働きで胃にも優しい鍋料理です。
材料(2人分)
・三浦大根 300g
・豚バラ肉 200g
・水菜 1/2束
・長ネギ 1/2本
・舞茸 1/2パック
・油揚げ 1枚
・酒 大さじ1
・塩 小さじ1/2
・和風顆粒だし 小さじ1
・水 400ml
作り方
1.三浦大根はすり下ろして水気を切る
2.水菜は食べやすい長さに切り、長ネギは1センチ幅の斜め切りにし、舞茸は食べやすい大きさに手で割り、油揚げは1センチ幅に切り湯通しする
3.豚バラ肉は食べやすい大きさに切る
4.鍋に水、酒、塩、顆粒だしを入れてひと煮立ちさせたら、弱火にして豚バラ肉を入れ、アクを取りながら火を通す
5.4の鍋に2の野菜と油揚げを入れ火が通るまで煮たら、最後に1を加えて温める
ピクルス
大サイズで使い応えのある三浦大根。余ったら保存食のピクルスにしてはいかがでしょう。リンゴの赤い皮が三浦大根の白さを引き立てます。
材料(作りやすい分量)
・三浦大根 200g
・リンゴ 1/4個
・レモン(スライス)1枚
<ピクルス液>
・水 100ml
・リンゴ酢 100ml
・ローリエ 1枚
・粒黒コショウ 5粒
・砂糖 大さじ3
・塩 小さじ1
作り方
1.小鍋にピクルス液の材料を入れて弱火ににかけ、砂糖と塩が溶けたら火を止めて冷ましておく
2.三浦大根は皮を剥き、リンゴの幅と同程度の長さで1.5センチ角のスティック状に切る
3.リンゴははよく洗って皮付きのまま縦1.5センチの輪切りにしたあと1.5センチ幅のスティック状に切る
4.容器にレモンスライス、2の三浦大根と3のリンゴを入れ、1のピクルス液を注ぎ、2時間以上漬ける
煮物に最適、三浦半島特産の冬大根
三浦の在来種と練馬大根が自然交雑してできた三浦大根は、中ぶくれで太く重量があることが特徴。大正時代に命名され、長く三浦の特産物として親しまれてきました。
1979年の台風被害を機に、代替で植えた生産効率の良い青首大根が主流になり、現在の三浦大根の生産は大根全体の1%程度となってしまいました。流通も限られ、三浦市農業協同組合を通して正月用に年末の3日間だけ出荷される他は、契約栽培か自家消費される希少な伝統野菜です。正月のなます、おでんや煮物などに使われ、煮込んだときのとろみのある食感は三浦大根ならでは。近年は同時期にミニ三浦大根も出荷されるとのことなので、入手したらぜひ煮物でいつもの大根との違いを味わってみてください。
取材協力:一般社団法人日本伝統野菜推進協会