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剪定枝や竹で土壌改良! 簡単炭作りとその活用法【畑は小さな大自然vol.109】

剪定枝や竹で土壌改良! 簡単炭作りとその活用法【畑は小さな大自然vol.109】

こんにちは、暮らしの畑屋そーやんです。うちでは寒い冬の間の野良仕事として、土壌改良用の炭焼きを行うのが定番になっています。畑の樹木を剪定(せんてい)した時に切り落とした枝や、近くの竹林や森を奇麗にした際に出る竹や木をこのタイミングで全て炭にしていき、次の一年の野良仕事に使用するためにためています。畑を片付けながら暖が取れ、さらにそこでお湯を沸かしてコーヒーやお茶をいれられるということで、大変お気に入りの冬の仕事ルーティンになっていますので、皆さんにもぜひ実践してみてほしいなと思います。

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炭は土づくりの大きな味方

炭の環境改善効果

なんと言っても炭が持つ一番の魅力は、土中の環境改善効果が非常に高いことです。炭は非常に多孔質で、微細な隙間(すきま)がたくさんあるため、土の中で適度な空気や水分、養分を保持するのに役立ちます。微生物が繁殖しやすい土壌環境を作るのに最適な資材の一つです。微生物が繁殖しやすい環境になると、微生物の働きによって土壌の団粒化が進みやすくなるため、微生物にとっても、野菜にとってもより一層理想的な土壌環境に近づきます。
土壌環境が改善されると、野菜が成長しやすくなるだけでなく、病原菌や土壌害虫が繁殖しにくくなります。また、土壌酸度が変化しにくくなる、有機物の分解が早まることで堆肥(たいひ)の効果が高まるなどさまざまなメリットがあります。

炭焼きをする場所や天候について

炭焼きだけではありませんが、野外で火を扱う時に最も注意しなければならないのは、近隣の竹やぶや草原などに火が燃え広がらないようにすることです。一度火がつくとあっという間に燃え広がって、消防車や警察が来る事態になってしまった知り合いが何人かいます。かくいう僕も1回ヒヤリとした経験があります。本当に予想以上のスピードと熱さでパニックになるので、用心しましょう。
火を扱う際は近くに燃え移るものがない場所で、風が強くなく、できれば雨の降る前のタイミングがよいでしょう。僕の経験上では雨が降る前の湿度が高い時の方が、良い炭ができます。また、炭を作るためのたき火であっても、周辺の生活環境や交通などに影響を与える場合は、行政指導を受ける可能性もあり、何より迷惑になりますので、十分に注意しましょう。

炭作りに使える材料は?

炭焼きの材料

土壌改良用の炭作りに使える材料は、主に木や竹です。木質化したナスやピーマンの茎なども炭にできますが、竹や木に比べて細くてもろいため割とすぐに灰になってしまいますので、注意が必要です。木や竹は乾燥している方が燃えやすいですが、火力が強ければ途中から湿ったものを入れても十分に炭になります。ただ燃やす際に水蒸気や煙が発生しやすいです。後は火種に使えそうな枯れ葉や小枝、杉の葉、松ぼっくりなどを用意しておきましょう。

炭作りに必要な道具について

炭の作り方

無煙炭化器であれば名前の通り煙が少ないので周囲の迷惑にもなりづらい

安全で、お手軽に、かつ良質の炭を作る際におすすめなのが無煙炭化器ですが、手元にない場合には地面に穴を掘って、その中で炭を作ることもできます。穴の大きさは燃やす材料の量によりますが、最終的に元の体積の10〜30%程度になりますので、それを見越した大きさにします。うちでやるときは直径50センチ、深さ30センチくらいの穴を掘りますが、その容量の3~5倍ほどの木や竹を炭にすることができます。

無煙炭化器を使った方が燃焼効率が良いので、穴を掘る場合よりも煙が出にくくなります。煙の量を抑えたい場合はオススメですが、これを使ったからといって全く煙が出ないわけではありません。燃え始めの段階と、乾燥していない木や竹を燃やしたときには煙や水蒸気が出やすいので注意しましょう。

他には火バサミ、ライターなどの着火するもの、水をくんだジョウロを用意しておきます。

土を掘って炭作り

穴を掘ってその中で作ることもできる

炭作りの手順

無煙炭化器に火をつける-2

燃えやすいものから順に入れていく

無煙炭化器、もしくは掘った穴の中に、まずは燃えやすい枯れ葉や小枝などを置いていき、火をおこします。最初はとにかく火力を強くして、火の勢いを作ることが大事です。そして少しずつ太い枝を入れていきます。順調に燃え始めたら、後は無煙炭化器や穴に入る分だけ、どんどん木や竹を追加していきます。絶え間なく追加していくことで、炭が積み重なって下の方の炭が空気に触れにくくなり、灰にならずに炭として残りやすくなります。

投入した木や竹のほとんどが炭のような状態(下写真参照)になってきたら、火を止めます。無煙炭化器にフタがついているものであれば、フタをすることで酸欠状態になり火を止めることができますが、単純に水をかけて火を止めるだけでも大丈夫です。火を止めるのが遅くなると、表面の方からどんどん灰になっていってしまうので、注意しましょう。そして十分に熱が冷めてから、炭を回収します。

完成した炭

水をかけて鎮火した後の炭の様子

この炭の作り方ですと、バーベキューなどで使うような重くて大きな塊の炭は作れませんが、土壌改良に使うには最適です。塊が小さい方が表面積が大きくなるので土壌改良効果が高く、満遍なく土に混ぜることができます。

土壌改良炭の使い方

土壌改良用の炭は、主に以下の2つの使い方をしています。
1)畑の土に混ぜる
2)溝や縦穴の中に入れる

1)畑の土に混ぜる

炭で土づくり

まずは土壌改良のために畑の土に混ぜ込むやり方です。粘土質で水はけが悪く、硬い土壌では特に効果的です。もみ殻くん炭とほぼ同じような使い方、効果と考えて問題ありません。
土が痩せている場合は、堆肥や落ち葉や枯れ草などの有機物と炭をセットで入れていきます。有機物は微生物の餌となり、炭は微生物が生息するのに必要な環境を整えてくれるので、相性がとても良いです。耕運機があれば畑全体にまいてから耕すのでもよいですし、ない場合は畝の中にクワで混ぜ込むだけでもよいです。
分量は土の状態によって異なりますが、1坪(3.3平方メートル)あたり5〜20リットルほどを目安としてください。耕す深さは最低10センチ、できれば30センチほどの深さまで炭を入れられると理想です。
詳しい土壌の状態の診断方法や土づくりについては以下の記事を参考にしてください。

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2)溝や縦穴の中に入れる

畑の周辺に溝を掘る.jpg のコピー

主に畑の水はけを良くするために溝や縦穴を掘る時に、底の部分にこの炭を入れています。こういった水がたまりやすいところは表層に粘土の層がたまり、水が地下に浸透しにくくなってしまうので、事前に炭をまいておくことで溝や縦穴部分の水の地下浸透や呼吸を促します。溝や縦穴の底土の表面に塊にならないようパラパラとまいていく程度ですので、大量には必要としません。

畑を片付けながら春までの準備をしていこう

炭焼きしながらお湯を沸かす

炭焼きのついでにお湯も沸かせます

雨量の多い日本において、土壌内の空気層を長期間にわたって維持してくれる炭をうまく活用するのはとても重要な知恵だと思います。しかも本来はゴミになってしまうような、剪定した枝や竹などを片付けながら次の年の土づくりの準備ができてしまいます。寒い冬はまずこの作業を行うことで、体を温めながらお茶やコーヒーの準備もできますので、環境が許せばぜひ試してみてほしいです。

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