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自然農ができない土壌の特徴と対策方法【畑は小さな大自然vol.107】

自然農ができない土壌の特徴と対策方法【畑は小さな大自然vol.107】

こんにちは、暮らしの畑屋そーやんです。僕は今まで13年ほど自然農での畑づくりを実践してきました。以前は全く認知度がなかったこのような農法も、最近では興味を持つ人がだんだんと増えてきたように思います。しかし、どんな土地でも自然農ができるわけではなく、やはり向いている土地とそうでない土地があります。むしろ他の農法よりも、環境条件に大きく影響を受けるので向き不向きが出やすいと言えます。初心者ほどこの判断ができないため、なかなかうまく野菜が育たず苦戦しているように思います。今回は自然農に適した畑とはどんな土地なのか、そして適していない場合はどういう対策をすべきかを解説していきます。

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自然農とは?

自然農で育っている野菜

自然農ではそこに生える雑草を刈り敷きすることで野菜を育てる

僕が以前学んだ自然農はもともと川口由一(かわぐち・よしかず)さんが提唱したもので、「耕さない」「草や虫を敵としない」「持ち込まない、持ち出さない」の3原則を基本としています。農薬や化学肥料などを用いない(持ち込まない)ことはもちろんのこと、堆肥(たいひ)なども用いず、基本的にはそこに生えてくる草を刈って敷いていく(持ち出さない)ことで土を育てていきます。最初に畝立てをした後はその畝を崩さず、使い続け、極力耕さないように管理していくやり方です。僕自身はこのやり方がベースにはなっていますが、これ以外にもいろんな手法を学んだ上で自分が好きなようにアレンジしています。
他にも自然◯◯農法というような名前の農法は無数にありますが、基本的に自然生態系の仕組みを利用するという点では一致していると思いますので、そういった農法であれば今回の土壌診断の仕方は参考になることと思います。

自然農に適した土壌の特徴とは

土の状態を診断している様子

自然農は、とりあえず自然にまかせたら育つという魔法のようなものではありません。無肥料で育つように見えるのは、結局土の中の有機物を微生物たちが分解し、野菜に与えているところによるものが大きいので、十分な有機物が土に含まれており、十分な数の微生物が繁殖している環境でなければほとんどの野菜は育ちません。
自然農の基本となる草を刈って敷き詰めることでも、微生物の餌となる有機物を地表面から供給することができます。しかし、そもそもの土壌の状態が悪いと敷き草だけでの土づくりにはとても時間がかかりますし、十分な量の有機物を敷いていないと保湿効果が十分でなく、いつまで経っても土づくりが進みません。特に近年は温暖化の影響で地表面の土壌の風化が早いこともあってこの傾向が顕著になりつつあり、土壌の状態の見極めがとても重要になっていると感じます。

自然農に適している土壌、つまりすでに十分な有機物が土に含まれており、十分な数の微生物が繁殖している土地では、団粒構造の土壌が形成されます。団粒構造とは、土壌が小粒の集合体を形成している構造のことです。
僕はこの団粒構造の層が一般的な野菜の根が広がる30センチくらいの深さまで形成されているかどうかを、初心者でも自然農を始められる土地の基準の一つとしています。

団粒構造とその確認方法

団粒化している土

団粒構造の土壌は野菜や微生物にとって最高の環境

土壌の主材料は砂や粘土、火山灰のような鉱物の細かい粒子ですが、これだけですと粒子同士の隙間(すきま)はほとんどありません。微生物の餌となる有機物も含まないため土壌は硬いままで、植物は十分に育ちません。ここに有機物が積み重なり、それを餌とする土壌生物が増えると、それらが有機物を分解し、粘着質の物質を分泌することで土壌粒子を結びつけて団粒構造が作られます。
この団粒はただの土の塊ではなく、とても複雑に有機物と無機物が組み合わさって形成される多層的な構造になっており、その内部にもさまざまな微生物が生息するマンションのような場所になります。その隙間に適度な量の水分や養分、空気を常に蓄えておくことができるため、団粒化が進むことで土壌の排水性・保水性・保肥性などが向上し、さまざまな植物や土壌生物にとって生息しやすい環境になっていきます。
団粒化がどの程度進んでいるかは主に以下の3つの方法で確認ができます。

1)土を見て確認する

土の団粒化-2

土壌表面から団粒化している様子

有機物の多い土壌は茶色または黒っぽくなっていきますので、土の色でもある程度判断することができます。また目で見ると団粒化した土の粒が見えます。

2)手で握ってみる

まだ団粒化していない粘土質の土

団粒化していない粘土質の土壌。固まったままで軽く指で押しても崩れない

土が濡れていない時に土を手に取り、軽く握ります。そして握った手を開いて、土の崩れ方を観察します。
団粒構造が良好な土壌の場合は握った後も土は軽くまとまり、少しずつばらけますが、完全に崩れて粉々にはなりません。柔らかく、弾力があるような感触があり、ふわっとした手触りです。
団粒構造が不十分な場合は握った瞬間に土が崩れてバラバラになり、粉状に細かくなってしまうか、逆に粘質が強すぎて握った後も固まりが崩れず、軽く指で押しても崩れません。

3)手で軽く掘ってみる

手で掘って団粒化を確認

団粒化していない層は手で掘れず、植物の根も少ない

団粒化が進んでいる土壌はふわっとしているため、掘り返しがとても楽です。僕は手で軽く掘れるところまでを団粒化している層の目安としています。刈り敷きだけで野菜を育てる場合は、この層が少なくとも20〜30センチは必要だと考えています。

団粒化していない土地での対策方法

土の中に落ち葉を入れて土づくり、畝立て

落ち葉ともみ殻くん炭で土壌改良している様子

団粒化が十分になされていないと判断した場合は、まずは土の中に有機物を入れ、団粒構造の層を増やしてから自然農を始めることをお勧めしています。その方が短期間で土壌生態系が回復し、野菜が育つところまで持っていけるので、結果的にモチベーションを維持しやすいと考えているからです。
団粒化を促すために土に入れる有機物としては、炭素率が高い植物資材を用います。稲わらまたは麦わら、イネ科雑草やセイタカアワダチソウなどの枯れた葉や茎、広葉樹の落ち葉などです。さらにもみ殻くん炭も合わせて入れていきます。炭は多孔質(細かい穴がたくさん開いている性質)で土壌中の空気層を作ってくれるので、微生物のすみかとして機能してくれます。分量はあくまでも目安ですが、1平方メートルあたり植物資材が約20~40リットル、もみ殻くん炭が約2~4リットルほどです。耕運機などの機械があればこれらを全体にすき込んでもよいですが、手仕事の場合は畝の中に層にして入れていきます。順番としては下からもみ殻くん炭0.5~1ミリ、植物資材1~2センチ、土10センチの順で層にして重ねていき、2~3回これを繰り返します。

自然農の原則はあくまでも型でしかない

自然農で育っている夏野菜

土の中に有機物を入れるのは自然農ではないという人もいますが、そもそもの土壌の形成過程では、土砂崩れによって有機物が埋もれたり、火山の大噴火によって有機物が埋もれたりしていることもありますし、人の力によって不自然になってしまった場所は、人の力によって地力を回復させてあげる方が生態系の回復も早いと感じます。
肝心なのは最終的にその土地の資源だけでできる限り循環していけるように、自立した生態系を築けるかどうかなので、そのためのお膳立ては必要だと考えています。
いろんな人たちが提唱している農法はあくまでも型であって、実践ではそれをその土地の条件や環境に合わせて応用しなければ役に立ちません。原則にとらわれすぎず、きちんと目の前の土や生き物たちの状態を観察して、行動を選択していくことが大事だと思います。今回僕が紹介した診断方法や対策方法もあくまでも一つの型ですので、実際の土壌の状態を見ながらアレンジしてみてください。

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