家庭の声から生まれた二本柱

運営する施設は、ミニトマトの温室棟「H&B Garden」が約2ヘクタール、リーフレタス棟が2ヘクタール。それぞれ2017年、2024年に稼働しました。ミニトマトの年間生産量は約400トンにのぼります。
リーフレタスの栽培を始めた背景

ミニトマトからリーフレタスへと事業を広げてきた背景には、お客様からの声がありました。店頭で売り切れていて買えない、という反応です。

ここで近藤さんは、トマトの品種を増やすなどの方向には動きませんでした。選んだのは、トマトとサラダをセットで家庭に届けるという発想です。家庭の食卓に馴染みやすいパッケージを考えた末に選んだのが、リーフレタスの生産でした。

リーフレタスは1日に2万3000株を収穫する規模で運営されている
9年前から続く、ヘタなし出荷と作業現場の工夫
先行するミニトマトでも、現場の工夫は早くから重ねてきました。エンカレッジファーミングのミニトマトは、9年前の温室立ち上げ時からすべてヘタなし出荷。店頭では廃棄率ゼロで100%売り切れるほどの評価を得ており、手間なくそのまま食べられる形を業界内でいち早く取り入れています。こうした姿勢は、現場の整理整頓にも及んでいます。エンカレッジファーミングの温室を訪れると、地面に落ちたミニトマトを目にすることが全くありません。落ちた実も捨てずに加工品へと回し、ロスを最小限に抑える。そうした意識が現場全体に浸透しています。
初年度の赤字が生んだ「計画と振り返り」の経営

近藤さんの経営の原点は、立ち上げ初年度の大きな赤字にあります。
家一軒分の損失から学んだ2年目
2017年に稼働したミニトマト温室の1年目、近藤さんは当時まだ23歳前後。初年度は大きな損失を出し、代表であるお父様から厳しく叱責を受けたといいます。

2年目に同じ失敗を繰り返すわけにはいきませんでした。近藤さんはさまざまな生産者を訪ね、栽培管理や経営の仕方を見て回り、1年目の何が悪かったのかを細かく分析しました。その結果、2年目には黒字化を達成。以降ミニトマトの事業では、赤字を出していません。
ゴールと現状のズレを見ながら進める経営

この経験から、近藤さんの経営に一本の軸が生まれました。それが計画と振り返りです。

年度の始めに計画を立てて、期中は進み具合を見続け、年度末に総括する。この繰り返しが、経営の根幹になりました。
悪い・基準・良いの3本ラインで走り出したリーフレタス

2024年に走り始めたリーフレタスでは、これまでの考え方をさらに進めた運営方法を取りました。年度の始めに、悪いライン・基準ライン・良いラインの3本の計画を同時に引いて走り出したのです。
立ち上げから最初の3カ月は、悪いラインに乗っていました。このままではいけないと、1本ずつラインを上に押し上げるために何ができるかを積み上げていき、4月には黒字のラインに転換。そこからは想定を上回るペースで数字を伸ばしてきました。
石橋を叩くトマトと勝負に出たレタス──投資判断の使い分け

近藤さんの投資判断には、二つの側面があります。ひとつは石橋を叩きながら進める慎重さ、もうひとつは勝負どころでリスクを取り切る姿勢です。
10アールで試して2ヘクタールに広げた判断
トマト事業は、まさにその慎重さの表れでした。2017年に2ヘクタールの温室を稼働させる前、近藤さんはまず10アールのパイプハウスでミニトマトを試験的に育てていました。リスクを抑えた規模で栽培の要点をつかみ、その後、確信を持ってから2ヘクタールに広げる判断を下しています。

施主でありながら1年半建設に携わったレタス施設
一方、リーフレタスは、近藤さんが「勝負に出た」と振り返る事業です。


2ヘクタールもの規模拡大に加え、リーフレタスの施設栽培は、国内でも先行事例がまだ多くありません。海外から導入した設備が壊れても、対応できる業者は限られています。だからこそ近藤さんは、施設のつくりを自分で把握しておく必要があると判断しました。
近藤さんは約1年半、施主でありながら毎日のように現場に入り、施工に携わる人たちと意見を交わし続けました。単に建設を任せるのではなく、自分が思い描く栽培環境を現場で確認しながら、一つひとつ形にしていったのです。同時に、構造を理解し、社内で対応できる体制を整える狙いもありました。
50アールが環境制御の一つの分岐点
環境制御を伴う施設栽培を始めるには、まず規模と初期投資のバランスを事前に見定めることが欠かせない。近藤さんはそう話します。
潅水や環境制御などの設備は、面積が小さいほど単価が割高になります。50アールほどあれば、マーケットインの考え方で勝負できる範囲に入るといいます。
こうしてみると、近藤さんの出発点は変わりません。自分の事業をよく見て、今何をすべきかを決める。慎重さも思い切りも、そこから生まれています。
経営の一歩を後押しする仕組みと選択肢

リーフレタス棟にて、株式会社タカミヤ メガデル事業担当の髙木憂也さん(左)、メガデル事業担当部長の鎌田秀顕さん(右)
こうした近藤さんの実践は、自社の経営の枠を越えて広がっています。
その一つが、株式会社タカミヤが埼玉県羽生市で運営する「TAKAMIYA AGRIBUSINESS PARK(以下、TAP)」の技術顧問です。顧問といっても、一方的に教える関係ではありません。TAPで取り組まれている実証試験の課題に触れることで、近藤さん自身も新しい視点を得ているといいます。
53件の地権者と一件ずつ向き合った農地集め
自ら動いて事業を進めてきた近藤さんでも、すべてを自分の力で解決できるわけではありません。その一例が、農地の確保です。
近藤さんはリーフレタスの施設を建てるにあたり、土地の地権者53名と一件ずつ向き合って交渉を重ねました。県外に出た地権者には手紙を送り、どのような思いで農業に取り組みたいかを伝えるところから始めたといいます。こうした交渉を重ねるなかで、必要な農地を確保する難しさを実感してきました。
コストがかからない挑戦なら、どんどんやるべき
規模拡大や設備投資の判断には、多くの情報や経験の積み重ねが欠かせません。近藤さん自身、海外の生産者と日々情報を交換し、市場の動きを読みながら、現場の経験も合わせて判断の精度を高めてきました。一方で、これから就農する人や規模を広げようとする人にとっては、判断材料にたどり着くこと自体が難しい場面もあります。

大きな投資をいきなり決めるのではなく、まずは情報を集め、比較し、相談してみる。そのための選択肢を増やすことが、次の挑戦への一歩につながります。
生産者の為の農業支援サービス『MEGADERU』

近藤さんが顧問として関わるタカミヤが運営する『MEGADERU(以下、メガデル)』は、こうした選択肢の一つです。ハウスの施工会社や農地情報を生産者がオンラインで探せるサービスで、生産者の利用は無料。地域や規模を問わず、気軽に試せます。

近藤さんが話してくれた挑戦の入り口は、これから農業に向き合う誰にとっても身近なものです。近藤さん自身、「メガデル」のように生産者が農地や施工会社の情報にアクセスしやすくなる仕組みには、意義を感じているといいます。費用をかけずに試せるサービスだからこそ、挑戦の一歩を踏み出すための道具として活用できるはずです。
「メガデル」について
「メガデル」は、ハウスの施工会社や農地情報を生産者がオンラインで探せるマッチングプラットフォームです。施工会社とのマッチングに加え、2025年からは農地情報のマッチングにも対応しています。
運営する株式会社タカミヤは、仮設足場の開発・製造を祖業とする上場企業。アグリ事業として農業用ハウスの開発・販売のほか、本記事にも登場した「TAP」での実証試験にも取り組んでいます。















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