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有機農業は”大変で儲からない”を覆す――青森・瑞宝の農業革命

有機農業は”大変で儲からない”を覆す――青森・瑞宝の農業革命

化学肥料や農薬を使わず、132ヘクタールの広大な農地で大豆・米・ニンニクを育てる。青森県中泊町で有機農業を営む有限会社瑞宝は、「有機農業は手間がかかる」という常識を覆そうとしている農業法人です。瑞宝の三上智暉さんに、創業から22年、3代にわたって受け継いできた自然農法の精神と、時代を先読みするDXの取り組みについて伺いました。

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祖父の体験から生まれた自然農法と地域への広がり

米や大豆、加工品など取り扱い商品は多岐に渡る

青森県に広がる穀倉地帯である津軽平野。水稲が盛んなこの地域で、有限会社瑞宝は長らく有機農業に挑んでいます。瑞宝が有機農業に取り組む原点は、約60年前にさかのぼります。祖父・三上新一氏が5反の水田から農業をスタートさせた当時は、多肥多農薬が当たり前の時代でした。「日々強い農薬に触れるうち、祖父は何度も体調を崩してしまって。その時に、環境にも自分の身体にもやさしい自然農法に出会い、やってみようと始めたと聞いています」と智暉さんは振り返ります。

最初は周囲から変人扱いされていた祖父の取り組みが、大きく注目されるきっかけとなったのが平成5年の大冷害でした。その年、周辺の農地では米がほとんど収穫できなかったなか、瑞宝の自然農法で栽培した田んぼだけが平年並みの収量を確保したのです。「あいつがやっていることはなんだかすごいぞと、周囲の生産者からも栽培方法について聞かれるようになったことをきっかけに、自然農法が地域に広まっていきました」。

専務取締役の三上智暉さん。中里町自然農法研究会の代表も務める

平成8年にライスセンターが建設されたときには、自然農法研究会には50名以上の生産者が所属していたそう。この流れを受け、当時の町長が「自然純米の里」という名称を付けた看板を設置。今でも地域全体にその精神が受け継がれています。

「瑞宝のお客様のなかにはアトピー持ちのお子さんを持つ方や、環境に対して知識や知見がある方が多いんです」。どんな方でも安心して食べられる米を届けること。お客様に喜んでもらうこと。それが有機農業の社会的意義であり、瑞宝が有機農業にこだわる根本でもあります。最近では、トレーサビリティに対する意識が高い方々からの購入も一定数増えてきており、需要面に変化を感じているといいます。

人手不足と高齢化に挑む、DXで変わる有機農業の現場

2004年に創業した瑞宝は現在、大豆80ヘクタール、米50ヘクタール、ニンニク2ヘクタールを中心に計132ヘクタールを耕作する大規模農業法人へと成長しました。従業員は季節労働者を含め約20名。3代目となる智暉さんが就農したのは2020年で、2026年で7年目を迎えます。

しかし、その道のりは決して平坦ではありませんでした。「2代目・3代目は、すでに設備も揃い販路も確立されている状態で事業を引き継いでいるため、『うまくいって当たり前』と見られがちです。しかし今、この地域の農業従事者の平均年齢は70歳。若手生産者は減少し、祖父の代には人海戦術で対応できたことも、私の代では同じようにはいきません。これまでとは違うアプローチで解決策を検討する必要がありました」と智暉さんは打ち明けます。

「有機農業で特に難しいのが除草作業です。病害虫の発生によって近隣の生産者に迷惑をかけないためにも欠かせない工程ですが、薬剤を使えないため、これまでは人の手で対応してきました。とはいえ、これから10年先を見据えると、従来のやり方では立ち行かなくなることは明らかです。そこで青森県が進める農業DX事業を活用し、有機農業における大豆・米の除草技術の実証に取り組むと同時に、生産性を高める取り組みを始めました」。

具体的にはKSAS(クボタスマートアグリシステム)を導入し、500枚以上あるほ場の場所や作業状況をデジタルで管理することで、除草作業のスケジュール管理や、その日どこのほ場に誰が行くか可視化し、共有。加えてリモートセンシング(衛星・ドローンによるほ場の生育状況の遠隔把握)も導入し、「この時期にこうなってきたら対処しよう」という判断を数値と記録に基づいて行えるようになったといいます。

KSASの管理画面。色が塗られている箇所は瑞宝が管理する圃場

「輪作管理においても、デジタル化が進んでいます。大豆2年→米1年という3年サイクルを基本としつつ、ほ場ごとの雑草の種類や生育状況をデータとして蓄積し、最適なローテーションを判断する仕組みを構築中です。これにより、米の収量はかつての400〜420kg/10aから450〜480kg/10aへと向上。人員は増やさないまま、経営面積を当初の105〜110ヘクタールから130ヘクタール超へと拡大することにも成功しました」。
これまで感覚で行っていた農作業をデータ化することで、属人的な働き方を変える。DX化を取り入れたことで実際に効率化も数字として表れ、智暉さんは手ごたえを感じています。

大豆のカルチ除草の様子

さまざまな取り組みや、メーカーによる精度向上により、除草作業の効率化も進んでいるそう。一方で条間は除草できるものの、株間の除草はできておらず、完全自動化はまだ途上段階です。理想は夜間も無人で除草ロボットが稼働するような仕組みですが、法規制や機器コストなど越えるべきハードルはまだ多くあるといいます。

「作れば売れる」強固な販路を武器に広げる多角経営

瑞宝の収益基盤は、多品目生産と直接販売の組み合わせによって成り立っています。白米・五分米・七分米・玄米などの米類をはじめ、大豆、小麦、ニンニクなど11品目以上を生産・販売。冬季には従業員の通年雇用を維持するために味噌・麹・餅の製造加工も手がけており、育苗後のハウスではシャインマスカットなどブドウを栽培してスペースを有効活用しています。

瑞宝の一年間

個人顧客への販売を中心に、関東・関西の自然食品店などへの卸、保育園や料理家への直接納品も行っています。「ありがたいことに作ったら売れる、というのが現状。売り先に困ることがほとんどないというのは、同業他社と比べても瑞宝の強みです」。

自然乾燥に近いかたちで乾燥調製し、籾のまま貯留できる貯蔵設備「スタアデポ」を導入し、年間を通じた精米・出荷体制を整備。注文を受けてその都度精米するため、風味豊かで鮮度の高いお米を届けることができます。また、瑞宝ではヨーロッパのオーガニック認証と同等として認められている有機JAS認証を取得していることから、将来的な海外輸出に対し大きな武器になると考えているそうです。

有機JAS有機認証を取得しているほ場には看板が立つ

若者が誇れる有機農業産業へ

今回智暉さんは、クボタとNewsPicksが主催する「GROUNDBREAKERS AWARD 2025」に参加したことで大きな気づきを得たといいます。「今回色々な農業経営者の方と出会ったことで、農業をビジネスとして捉えると、これまでとは違う景色が見えてくるのだと気づけました。農家の息子として育ってきて、当たり前だと思っていた部分が覆されましたね。特に人材採用の課題について、他のファイナリストたちから具体的な知見が得られたことは大きかったです」と智暉さん。さっそく2026年4月からは週2日休みの制度(隔週)を導入し、給与体系を再整備して、人材確保に向けた改革に着手しています。

「GROUNDBREAKERS AWARD 2025」では、地域・環境貢献賞を獲得

瑞宝では2035年までに、中泊町内外問わず経営面積500ヘクタールへの拡大を目指しています。「地域を限定しないのは、近年増加する自然災害に対するリスク分散の意味もあるんです。今後は山間部での栽培も視野に入れています」。

地域の農業人口の高齢化という課題に対しても、瑞宝は前向きに向き合っています。「国は有機栽培を後押ししている。手のかかる有機農業でも、スマート農業と組み合わせることによって規模拡大もできるし、土地を守ることもできるはず」。地域の高齢の生産者が耕作できなくなった土地を引き受け、若い力とデジタル技術でその土地を守り続けることが、瑞宝の社会的役割だと智暉さんは力を込めます。

智暉さんが目指すのは、有機農業を「大変で儲からない仕事」から「若者が誇りを持って働ける産業」へと変えること。「少しの面積でもいいから有機農業を始めてみようかなと思ってもらえたら、すごく嬉しい。そのために必要なものや土地など、全力でバックアップしたい」という言葉には、経営者としてだけでなく、農業の未来を担う一人の若者としての真摯な思いが込められています。DXの波を味方につけながら、青森の大地から有機農業の新しいモデルが生まれようとしています。

取材協力

有限会社瑞宝

記事に関するお問い合わせ

株式会社クボタ
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