農業も暮らしやすさも、千葉屈指
多古町は千葉県香取郡にある、人口約1万3,600人の町です。県内で2番目に広い面積を持ち、北総台地という肥沃な農業地帯に位置しています。
そんな多古町は、千葉県でも特に農業が盛んな地域のひとつ。米、野菜、果樹、酪農など多様な農産物が生産され、なかでも「多古米」(多古町産コシヒカリ)は「幻の米」と称される逸品です。また、粘りが強く風味豊かな「多古のやまと芋」(ヤマトイモ)も多古町を代表する特産品として知られています。このほか、サツマイモ、ネギ、ニンジンなども多く栽培され、まさに農業に適した環境が整った町です。
多古町は、暮らしやすさにも定評があります。子育て支援が充実し、大学生までの医療費が無料、中学校卒業までの給食費も無料。待機児童ゼロも実現し、安心して子育てができる環境です。加えて、東京駅へは高速バスで約2時間、成田空港へは車で約20分という便利なアクセスを兼ね備え、「ほどよい田舎」としての魅力を持っています。しかし、その「ほどよい田舎」だからこそ、ある課題を抱えています。それは、都市部へ通勤する町民が多く、農業の担い手が不足していることです。
この課題に対して多古町の生産者たちが結集し、令和3年に「多古町の農業を考える会準備会」を立ち上げ、令和6年に「多古町の農業を考える会」が正式に発足。農業者の高齢化や人手不足といった共通の課題を共有し、生産品目の垣根を超えて情報交換や意見交換を行っています。
迷える新規就農者を積極的に受け入れ

就農プラットフォーム
「多古町の農業を考える会」では、多古町役場と連携し、新規就農者を支援するための「就農プラットフォーム」を開設しました。
このプラットフォームには多古町への移住を検討している人向けの情報サイト「多古町まるわかりWEB」からアクセスできます。就農希望者を受け入れている24カ所・25品目の農家を検索し、募集内容、条件や待遇、問い合わせ先などを確認できます。農業体験を受け入れている生産者もいるので、実際に農業を体験しながら自分に合った働き方を探すことができます。
受け入れ先の農家のひとつで「多古町の農業を考える会」会長である佐藤正史さん(佐藤農園)は、多古町でトマトの施設栽培を行っています。以前は露地野菜を生産していましたが、高収益作物であるトマトに選択と集中する形で経営を転換しました。これまでも「新・農業人フェア」などの就農イベントを通じて就農希望者を雇用し、独立就農へと導くなど、人材育成にも積極的に取り組んできました。
「多古町には、新規就農者を雇用するだけでなく、独立をサポートしたいと考える生産者が多くいます。町自体も子育て支援を充実させるなど、地域ぐるみで移住しやすい環境を整えており、農業を仕事にしたい人にとって最適な場所です。何より、多古町には多様な農業があるため、きっと自分に合った農業が見つかるはずです」と佐藤さん。メンバー一同の思いを代弁してくれました。
雇用条件・労働環境を一斉に整備
こうした取り組みをさらに加速させるため、「多古町の農業を考える会」を母体とした協議会が新たに発足しました。発足にあたり、事務局が町内約140戸の生産者を対象に人材に関する課題のアンケートを実施。その結果、さまざまな意見が寄せられましたが、特に「規模を拡大したいが、人材不足が大きな課題になっている」という声が多く集まりました。
また、多古町は成田空港に近いという地理的利点を持ち、農作物の流通においては大きなメリットがあります。しかし、その一方で、空港や周辺施設への労働力流出が深刻な問題となっており、農業分野においても競争力のある労働環境を整える必要があることが浮き彫りになりました。
さらに、生産品目が多岐にわたり、個性豊かな生産者が多くいるにもかかわらず、各戸の情報発信が十分に行われていないことも課題として挙げられました。SNSを活用する生産者もいるものの、「手が回らない」「操作に不慣れ」などの理由で十分に活用できていない現状が明らかになりました。
こうした課題を受け、協議会には20戸の生産者が参画し、労働環境の整備や情報発信の強化に取り組んでいます。具体的には、各戸が社会保険労務士と対面で相談し、給与面や福利厚生の改善、安全管理の向上に取り組むことに合意。また、それぞれのホームページを制作し、就農希望者に向けた情報発信の強化しています。
協議会の発足により、多古町の農業はより働きやすい環境へと進化し、新たな担い手を迎えるための準備が本格的に進んでいます。
交通アクセスさらに至便に、今こそ多古町
地理的なメリットも大きな魅力です。多古町は成田空港の東側に隣接し、現在建設中の圏央道大栄JCT―松尾横芝IC間の開通により、さらなる交通利便性の向上が見込まれています。特に、町内に新設されるインターチェンジは正式に「多古IC」と決定し、物流や移動の利便性が向上。加えて、成田空港の第三滑走路が整備されることで、多古町が農産物流通の要衝となる可能性も高まっています。
協議会の活動により各農家では労働環境の整備が進められ、新規就農者のマッチングと受け入れ体制が整ったいま、多古町は農業を志す人々にとってより安心してチャレンジできる場所となっています。新規就農を考えるなら、多古町はまさに最適な選択肢と言えるでしょう。多古町の農業を考える会の佐藤さんも「人材育成に熱心な生産者が揃っています。ぜひ多古町で一歩を踏み出してください」とメッセージを送ってくれました。
▼参考
多古町まるわかりWEB
https://takotown-agri.jp/
問い合わせ先
INDEX: https://takotown-agri.jp/farmers/
メールアドレス:farmers@takotown-agri.jp