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三重が誇る「伊勢ぶり」「伊勢まだい」ブランド魚が三重の水産業の救世主になる【令和5年度補正予算GFP大規模輸出産地生産基盤強化プロジェクト】

三重が誇る「伊勢ぶり」「伊勢まだい」ブランド魚が三重の水産業の救世主になる【令和5年度補正予算GFP大規模輸出産地生産基盤強化プロジェクト】

 2023年度水産白書によると、国内の食用魚介類の消費量が、この10年でほぼ2割減少しています。魚から肉への食の嗜好の変化や、円安、資源の高騰などによる価格の上昇で、買い控えが進んでいることが原因の一端と言われています。一方、海外に目を向けると、一人当たりの消費量は過去50年でおよそ2倍に増加し、日本からの輸出量も、この間54万tから79万tと伸びています。世界的な水産物の需要増、海外での日本食ブーム、円安など、海外への輸出は日本の水産業に明るい光をもたらしていると考えられます。
 さらに、政府もこれを後押ししています。「農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律」が2020年4月に施行され、2020年12月には農林水産業・地域の活力創造本部において輸出拡大実行戦略を決定しました。輸出拡大実行戦略では、海外で評価される日本の強みがあり輸出拡大の余地が大きい29品目(令和7年3月現在)を輸出重点品目として選出し、その中には水産物の「ぶり」と「たい」を含んでいます。

「三重県養殖魚輸出産地協議会」は「令和5年度補正予算GFP大規模輸出産地生産基盤強化プロジェクト」を活用しながら、養殖ぶり・養殖まだいの輸出を強化しています。

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三重県養殖魚輸出産地協議会について

生産から輸送まで、協議会内の12の組織で一元化

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三重県錦漁港の風景

 三重県のブリ養殖の歴史は長く、昭和30年代の半ば頃から始まっています。昭和50年代まではブリ養殖の先進地として知られていましたが、平成に入ると、水温の高い四国や九州に主産地が移行。三重県はマダイの養殖に転換し、県南部の基幹産業として経済を牽引してきました。しかし、1992年には1万トンの年間生産量を誇っていた養殖マダイも、2020年には約3,500トンにまで落ち込みました。原因の一つとしては、三重県の養殖業の特徴として、小さな湾や入江が多数あり、養殖には適しているものの、生簀(いけす)の規模も数も小さい生産者が多く、他県のように大規模化に伴うスケールメリットを活かした経営が難しいことが挙げられます。そこに追い討ちをかけるように、後継者不足に伴う廃業など、経営体数や生産量の減少や、飼料の高騰などで、経営環境はさらに厳しさを増しています。
 そこで、三重県漁業協同組合連合会(以下「三重県漁連」という。)は、生産基盤の強化とマーケットの確保、さらに国内需要が減少する中、持続可能な養殖業とするためにも、「養殖魚の輸出促進」へ舵を切ることにしました。2022年には「輸出事業計画」を策定しました。輸出促進に取り組み、実績が出始めたことから、GFP大規模輸出産地生産基盤強化プロジェクト(以下本プロジェクト)を活用し2024年には三重漁連を軸に、「三重県養殖魚輸出産地協議会」を設立しました。協議会には、中部国際空港や百五銀行など、生産から、輸送、資金など幅広い企業から12社が参画し、本格的な輸出事業がスタートしました。

三重県養殖魚輸出産地協議会の取組内容

「伊勢ぶり」養殖で大手との差別化を図る

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「伊勢ぶり」の養殖

三重漁連
中北さん

本プロジェクトにて輸出事業を手掛けるにあたり、注目したのが「ブリ」です。ブリは日本固有の魚で、海外でとても人気があります。三重漁連は、地元の養殖業者と連携して「みえぎょれん養殖(株)」を設立し、本格的にブリの養殖を再開することに。当初養殖業者は4人のみで、いずれも小規模な個人事業主でした。そこでみえぎょれん養殖(株)が、養殖業者と新たな経営スキームを作成。養殖業者は稚魚から2kgぐらいまで育て、その後、みえぎょれん養殖(株)が買い取り、出荷まで養殖を担います。その段階で業者から養殖技術を学ぶことで技術の伝承が可能になり、生産量も3万匹から10万匹まで増やすことができました。

 輸出用の養殖ブリは、国内で流通されるサイズよりも大型の6kg以上と規格需要が高いため、通常より長期間の飼育が求められます。より多くのブリをじっくり育てるためにも、現在、三重県度会郡大紀町で全30台の生簀を所有し飼育した結果、生産量は着実に増えています。
 実際の生簀を見学すると、水深はおよそ10mの一台の生簀に、約2,800匹のブリが元気よく泳ぎ回っていました。この海域には紀伊山地からの清流が流れ込み、さらに黒潮の流れが活発で、海底から栄養分が湧き上がる「潮返し」が起こりやすい、恵まれた漁場とのこと。「この冬は、例年より水温が高めなので餌をよく食べていますから、大きく育っていますよ」と担当者も笑顔で語ります。
 また、大手の水産業者と差別化を図るために、「伊勢ぶり」のブランド名で売り出していると言います。

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「伊勢ぶり」の餌やり

みえぎょれん
養殖株式会社
井村さん

最大の特徴は餌です。三重県の特産品である、緑茶やみかん、海藻などを餌に混ぜることで、ブリ特有の臭みを消し、さらに健康促進も謳うことで、海外ニーズに応えたいと思っています

DX化、輸出体制の刷新など各組織の強みを活かした施策

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「伊勢ぶり」・「伊勢まだい」

 三重県養殖魚輸出産地協議会では、伊勢ぶりに加えて、ブランド魚「伊勢まだい」の養殖・輸出への横展開も考えています。本プロジェクトを活用し、協議会内のシステム会社と共にいずれもの養殖にも活用できる汎用性の高いシステムの導入実証に取り組んでいます。たとえば関係者間のデータ共有や過去データとの比較や検証ができるように、データをシステム化して一括管理し、今後の技術の継承や事業拡大に活かしていきたいと考えています。さらに安定生産、増産生産体制を見越し、養殖現場にICT機器を導入しました。データ化による養殖技術の伝承を行い、効率の良い養殖管理システムを実践すると共に、作業の効率化を図るために、水温や給餌量などの記録を従来の手書きからタブレットで一元管理できるようにしました。こうした組織全体で取り組むことで、従来の養殖業者に加えて、新規養殖業従事者も参入しやすい体制が整いつつあり、生産拡大の推進と同時に県内の養殖業の生産力向上にも大いなる期待が寄せられています。

 また、ブリは加工場にて3枚におろして冷凍フィレに加工した状態で輸出していますが、輸出体制の強化として、従来の養殖魚出荷基地となっている神奈川県・三浦活魚流通センターに加えて、令和5年度の水産庁の補助事業を活用して、三重県尾鷲市の牟婁(むろ)事業所にも新たな凍結機を導入し、二拠点体制を構築する基盤を作りました。
※牟婁(むろ)事業所に導入した凍結機が水産庁の補助事業で、それ以外は本プロジェクトです。
 これにより、従来の成田空港のみの空輸便や、東京、横浜からの船便だけでなく、隣接する愛知県の中部国際空港や四日市港などからの輸出も可能となり、体制も整えることで、米国や東南アジアだけでなく、中東へのマーケット拡大に向けて動き始めました。協議会内の企業の支援のもと、2024年には“日本の食品”輸出 EXPOへの出展と同時に国内現地視察パッケーツアーの案内を行ったり、相手国バイヤーが開催する試食会や展示会に現地参加して、現地の情報収集や意見交換を行うなど、積極的なPRにも取り組んでいます。

 さらに協議会のチームである地銀の百五銀行は、海外拠点を活用した販売支援を担っています。中でもマレーシアへのマーケット拡大のため、国内では珍しいと思いますが、輸出拠点となる牟婁事業所と三浦活魚流通センターで、ブリ、マダイ、カンパチ、シマアジ、ヒラメ、サーモンの「ハラール認証」を取得しました。輸出先で、どのように育てられた養殖魚かを明確にすることで、需要が伸びると考えたからです。

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三重県錦漁港での養殖風景

三重県養殖魚輸出産地協議会の今後の展望

ブランド力を前面に押し出したマーケティングで未来を切り拓く

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展示会で使用する養殖ブリの説明用 英語カタログ

 三重県養殖魚輸出産地協議会では、新たな販路開拓のためのマーケティング戦略にも取り組んでいます。本プロジェクトを活用し、商品カタログの英語対応や養殖現場をLIVE中継によるPR活動、さらに海外バイヤー向けの展示会や視察ツアーの情報を発信。また、イベントへの出展も積極的に行っており、2024年には、東京での“日本の食品”輸出 EXPOの他、香港やベトナムでも初出展。これらの地道な努力により、アメリカ以外にもタイや台湾、フィリピンなどへの輸出実績の増加にもつながっています。
 「今後の課題は6kg以上の大型養殖ブリを確保することが重要になります。昨今の夏場の高水温期が長期化することで、養殖ブリの斃死(※1)や成長スピードに影響が出ています。データに基づく、養殖環境の管理が重要になってくるでしょう。また、大手企業との価格競争にならないためにも、やはり差別化が重要です。三重ならではの「ブランド魚」を、積極的にPRしていきたいと思っています」と井村さん。
※1 斃死(へいし):ストレスや病気などの原因で突然死んでしまうこと

 三重漁連の中北さんは、最後に力強く語ってくれました。

三重漁連
中北さん

生産者、漁連、金融機関、物流業者、協力機関など、協議会が一丸となってASEANマーケットへのアプローチを行っていくことで、三重県のブランド魚の地位確立を狙っていきます
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