王林の特徴
王林は、日本を代表する青リンゴの一つで、鮮やかな黄緑色の果皮が特徴です。見た目は少し縦長で、表面には小さな果点が多く見られますが、これは完熟の証。熟すと果皮が少し黄色がかり、より甘さが増します。
甘味が豊かで酸味がほとんどないため、リンゴの酸っぱさが苦手な人や子どもにも大人気です。和梨のような甘さが口いっぱいに広がり、同じリンゴでも「ふじ」などとは違った味わいを楽しめます。
また、王林の食感は比較的柔らかめで、しっとりとした口当たりが特徴。シャキシャキ系のリンゴよりも、優しい食感が好きな人におすすめです。
王林の旬の時期は?
王林の収穫時期は、主に10月末から11月上旬にかけてです。特に主要産地である青森県では11月上旬に収穫のピークを迎えます。長野県では少し早い10月中旬頃から収穫が始まります。収穫された王林は貯蔵性が高く、保存環境が整った場所では翌年の春頃までおいしく食べられるのが特徴です。そのため、流通量が多くなるのは2月頃で、スーパーなどでもよく見かけます。
おいしい王林の選び方は?
おいしい王林を選ぶポイントは色と果点(果物の皮にできる斑点や点状の模様のこと)に注目することです。王林は熟すにつれて黄緑色から黄色に変化し、甘みも強くなっていきます。また、果皮に見られる小さな果点や茶色いサビも甘さの目安。特にサビがしっかり出ているものは、糖度が高く濃厚な味わいのものが多いです。見た目は少しゴツゴツしていても、甘くておいしい王林の証拠なので、ぜひ試してみてください。
更に、持ったときにずっしりとした重みを感じるものは、果汁がたっぷり詰まっています。スーパーや直売所で王林を選ぶ際には、このポイントを参考にして、好みに合ったものを見つけてくださいね。
王林を栽培する方法は?
王林を育てるための準備
・受粉のために異なる品種を植える必要がある
・日当たりが良い場所に植えることで糖度が上がる
・水はけが良く、風通しの良い土壌を選ぶと病害虫を防ぎやすい
・寒冷地では、若木のうちは霜対策をすると安心
・鉢植えの場合は直径30cm以上の鉢を使用
王林は北海道の中部から九州の北部までの幅広い地域で栽培できます。ただし、暖地では冬の低温が不足しがちで、結実が不安定になる場合があるので注意が必要です。また、王林をおいしく育てるには、日当たりの良い場所を選ぶことが重要です。太陽の光を十分に浴びることで、果実の糖度が増し、甘く育ちます。水はけの良い土を選び、雨が多い地域では排水対策をすると、根が健康に育ちやすくなります。
更に、風通しの良い環境を確保することで、病害虫の被害を防ぎやすくなります。冬の寒さに強い品種ではあるものの、特に寒冷地では若木のうちは霜対策をすると安心です。
植え付け
・2年生苗(70cm~1m程度)が初心者向け
・矮性台木を選ぶと管理がしやすい
・植え穴は直径1m・深さ80cmを目安に準備
・根を広げ、接ぎ木部分が地表に出るように浅めに植える
・水やりをしっかり行い、風対策として支柱を立てる
リンゴの苗木の植え付けは、落葉期の11月~2月頃に行いましょう。寒冷地では春植えが適していますが、中間地や暖地では秋植えが理想的です。
苗木を選ぶ際は、2年生の苗木がおすすめです。高さが70cmから1m程度のものが多く、根がしっかりしているものを選ぶと成長がスムーズになります。また、矮性台木を使用したものは大きくなりにくいので、成長後も管理がしやすくおすすめです。幹がまっすぐ伸びている苗を選ぶことで、樹形のバランスが良くなり、のちのちの剪定が楽になります。
植え付ける前に、まず植え穴を掘ります。穴の大きさは直径1m、深さ80cmほどが理想的です。このとき、掘った土に堆肥や石灰を混ぜておくことで、根がしっかりと張りやすくなります。植え付ける3週間ほど前に土作りをしておくと、土の状態が落ち着き、より健康な成長が期待できます。
苗木を植える際には、接ぎ木部分が地表に出るようにして浅めに植えることが大切です。深く植えすぎると、根が呼吸しにくくなり、成長が鈍ることがあります。植えた後は、たっぷりと水を与え、乾燥防止のためにわらなどでマルチングをしておくと、しっかりと根付くのを助けてくれます。また、苗木が風で倒れないように支柱を立てて固定しておくと、安定して成長することができます。
受粉樹を用意する
・受粉樹としてふじがおすすめ
・スペースがない場合は、接ぎ木する方法もある
王林は自家不和合性のため、1本だけではほとんど実をつけません。そのため、受粉を助けるための別のリンゴ品種が必要です。近くに異なる品種のリンゴを植えて受粉を助けることで果実を実らせることができます。
王林と相性の良い受粉樹には、ふじ・つがる・シナノスイート・ぐんま名月・紅玉などがあります。特にふじは食感が良く甘みの強い果実が実るため人気が高く、受粉樹としても最適です。
受粉を成功させるには、異なる品種のリンゴをできるだけ近くに植えることが大切です。2本以上の木を植えるのが理想ですが、スペースが限られている場合は、1本の木に異なる品種の枝を接ぎ木する、接ぎ木栽培も選択肢の一つです。
水やりと肥料の管理
・鉢植えは春~夏に表面が乾いたらしっかり水やり
・植え付け時に元肥を入れる
・肥料は年に2回与える
王林を健康に育て、おいしい果実を収穫するためには、適切な水やりと肥料の管理が必要です。地植えの場合、基本的には水やりは不要ですが、長期間雨が降らないときには乾燥を防ぐためにたっぷりと水を与えます。特に植え付け直後の若木は根がまだ浅いため、土が乾燥しすぎないよう注意が必要です。
鉢植えの場合は、春から夏にかけて土の表面が乾いたらしっかり水を与えます。冬場は成長が緩やかになるため、水の与えすぎを避け、土の状態を見ながら調整します。
肥料は植え付けに元肥を与え、その後は年に2回与えます。
まず、植え付け時には堆肥や有機質肥料をしっかり土に混ぜ込んでおきます。植え付ける3週間ほど前に準備しておくのがおすすめです。鉢植えにするなどで培養土を使う場合は元肥は不要です。
年に2回の施肥タイミングは、1度目は冬、2度目は春から夏にかけての時期です。まず、冬の12月〜3月頃に、木の成長を助ける寒肥を施します。この時期にしっかり養分を補給することで、春の芽吹きが良くなります。植え付けた最初の年は元肥があるので、寒肥は必要ありません。
春から夏にかけての時期に一度(5月〜7月)追肥を行うことで、果実がしっかりと育ち、甘みが増します。収穫後にも肥料を与え、翌年の実つきを良くするための養分を補給しておくと、継続的に良い果実を収穫できるようになります。
剪定と枝の管理
・開心形の樹形が理想
・内向きの枝、交差している枝、下向きの枝を切る
・実をつける結果枝は長すぎないよう適度にカット
王林を元気に育て、毎年安定して果実を実らせるためには、適切な剪定が欠かせません。剪定を行うことで、日当たりや風通しを良くし、病害虫の発生を防ぐことができます。
剪定は冬の落葉後の1月~2月頃に行うのが基本です。この時期は木の休眠期で、枝を切っても木へのダメージが少なく、翌春に向けて新しい枝が伸びやすくなります。
王林の樹形は、「開心形」と呼ばれる、3~4本の主枝を広げる形が理想的です。枝同士が重ならないようにすることで葉や実にまんべんなく日光が当たるようになるので、果実の甘みが増します。
また、成長が進むと枝が混み合い、風通しが悪くなります。内向きに伸びた枝や、交差している枝、下向きの枝は適宜切り落としましょう。更に、実をつける「結果枝」が長すぎると栄養が届きにくいため、適度な長さに調整することがポイントです。
コンパクトに育てたい場合は、エスパリエ仕立て(壁面に広げる方法)や、トレリス仕立て(柵に誘引する方法)を活用すると、管理がしやすくなります。
受粉と人工授粉
・確実に実をつけるためには人工授粉がおすすめ
・綿棒を使い、他品種の花粉をつける
・晴れた日の午前中に行い、雨の日は避ける
王林の受粉には異なる品種の花粉が必要なため、春の開花時期には人工授粉を行うと確実に結実します。開花時期の合うリンゴの異品種を植えていれば自然受粉も可能ですが、より確実に実をつけるためには人工授粉がおすすめです。
開花時期が合わない場合は、花粉をあらかじめ保存をする方法が有効です。花粉の採取と保存は、開いた雄しべを丁寧に切り取り、風通しの良い場所で乾燥させ、密閉容器やチャック付き袋に入れて冷蔵・冷凍保存します。使うときは結露を防ぐため室温になじませ、晴れた日の午前中に中心花へ筆や綿棒でそっと花粉をつけましょう。この方法を使えば、開花タイミングが合わない場合でも後で人工授粉を行えるので、結実率を大きく高められます。
授粉の際は、中心花に花粉をつけるのがポイントです。柔らかい筆や綿棒を使い、別の品種の花粉を軽くこすりつけます。授粉作業は晴れた日の午前中に行い、雨の日は避けましょう。
間引き(摘花・摘果)
・小さな実や形の悪い実を間引く
・開花から1カ月以内に摘果を行うと、甘くて大きな実が育つ
リンゴは放っておくとたくさんの花が咲き、実も多くつきますが、そのままにしておくと栄養が分散されてしまい、小さくて味の薄い果実になってしまいます。そのため、摘花と摘果が重要になります。
リンゴの花は、桜のように5~6つの花がまとまって咲くので、開花後に中心の花だけを残し、周囲の花を摘み取ります。これが摘花です。
その後、結実が確認できたら、摘果します。小さな実や形の悪い実を取り除き、最終的に40~70枚の葉に1つの果実が残るように調整すると、大きくて甘いリンゴが育ちます。
摘果は、開花から1カ月以内に行うのが理想です。この時期にしっかり摘果することで、栄養が一つ一つの果実に集中し、甘くておいしい王林が育ちます。
病害虫対策
・害虫の被害も多い
・4月~5月に殺菌剤・殺虫剤を散布すると効果的
王林は斑点落葉病や黒星病、輪紋病などの病気にかかりやすく、また、アブラムシやハマキムシ、カイガラムシなどの害虫被害も多い果樹です。そのため、定期的な病害虫対策が必要になります。
4月~5月頃に殺菌剤や殺虫剤を散布すると、病害虫の発生を防ぐことができます。特に中間地や暖地では湿度が高くなるため、病気の発生リスクが高くなります。落葉や病害果はこまめに取り除き、冬の休眠期には剪定をして風通しを良くしておくことも重要です。
収穫と保存
・果皮が黄色に変化したら収穫のサイン
・収穫後は、冷蔵庫の野菜室に保存
王林の収穫時期は10月下旬から11月上旬にかけてです。熟した果実は黄緑色から黄色へと変化し、香りが強くなるのが特徴です。収穫の目安は、果皮がしっかり色づいて、実を軽く引っ張ると枝から簡単に外れる頃です。
王林は収穫後も熟成が進むため、適切に保存すれば風味が増し、長期間楽しむことができます。冷蔵庫の野菜室にポリ袋に入れて保存すると、水分が逃げにくくなり、鮮度を保つことができます。貯蔵性が高いため、適切な環境で管理すれば、翌年の春先までおいしく食べることができます。
まとめ
王林は甘みの豊かさと高い香りが魅力のリンゴです。旬の時期を迎えた王林を選ぶ際は、酸味が好きな人は緑が濃いもの、甘みを楽しみたい人は黄色っぽいものを選ぶのがポイントです。また、適切な管理を行えば、自宅でも栽培が可能です。王林の魅力を知り、よりおいしく味わうために、本記事の内容を活用してみてください。
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