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島らっきょうってどんな野菜? 旬や栽培方法、おいしく食べるレシピを解説【日本伝統野菜推進協会監修】

sato tomoko

ライター:

連載企画:解説!全国伝統野菜

島らっきょうってどんな野菜? 旬や栽培方法、おいしく食べるレシピを解説【日本伝統野菜推進協会監修】

本州から遠く離れた沖縄県は、年間を通して温暖で湿潤な亜熱帯海洋性気候に恵まれ、他の地域とは異なる特徴的な農産物が数多く育まれています。かつて琉球王国として栄えたこの地では、宮廷料理をルーツとする独特の食文化が生まれ、庶民の食卓にも広く浸透しています。沖縄県ではその歴史と風土が育んだ在来作物を「伝統的農産物」として、継承と普及に努めています。そのひとつが「島らっきょう」です。一般社団法人日本伝統野菜推進協会の取材協力の下、本州のらっきょうとは一味違うその特徴、栽培方法、食べ方、レシピを紹介します。

島らっきょうとはどんな野菜


島らっきょうは、ユリ科ネギ属の野菜で、沖縄で古くから栽培され、琉球王国時代に編纂された御膳本草にも記述があります。沖縄県では「島野菜」と呼ばれ親しまれている「伝統的農産物」のひとつです。伝統的農産物は、戦前から食され、現在も郷土料理で利用される、沖縄県の気候・風土に適合した28品目が認定されています。

島らっきょうは、離島の伊江村(いえそん・伊江島)が主産地。沖縄の方言で「ダッチョー」(本島)や「ダッキョー」(八重山)とも呼ばれています。

沖縄県以外の地域で生産されているらっきょうはふっくらとした形ですが、島らっきょうは、白い部分が長く本州のものよりも小ぶりです。これは、軟白栽培して早取りするためで、他産地のらっきょうが主に甘酢漬けなどの加工用であるのに対し、島らっきょうは主に生食用として出荷され、塩漬けの他、天ぷらや炒め物などの郷土料理に使われています。

味の特徴

シャキシャキとした食感で、本州のらっきょうと比べて強い香りと辛みがあります。加熱すると辛みが甘みに変わり、しんなりとした食感になります。

旬の時期

年明けの1月から収穫が始まり、最盛期の3~6月が旬の時期です。沖縄県内のファーマーズマーケットやスーパー、産直ECなどで販売される他、県外にも出荷され、旬の時期になると沖縄フェアなどでスーパーの店頭にも並びます。

含まれている主な栄養や効果

ラッキョウは、古くから漢方薬として使われており、気をめぐらせ胸の痛みや苦しさを緩和する働きがあるとされ、特に「島らっきょう」には多くの生理機能があることが分かっています。含まれている主な機能性成分を紹介します。

アリシン

らっきょうの他、ニンニクやネギなどユリ科の野菜に含まれる硫化アリルの一種で、ビタミンB1の吸収を高めることにより、糖質のエネルギー代謝促進や疲労回復、ストレス解消などが期待されます。また、血行促進や抗酸化作用、抗菌・殺菌作用があるとされています。

アデノシン

DNAやRNAを構成する物質として体内に存在し、エネルギー代謝やシグナル伝達に関与しています。血管を拡張する作用があり、血流の増加を促し、組織の代謝を活発にする効果が期待されています。

フルクタン

水溶性食物繊維の一種でフルクトース(果糖)が多数結合した多糖類で、腸内の善玉菌のエとなり腸内環境を整える他、血糖値の上昇を緩やかにして血圧を下げる働きがあるとされています。熱に強く、加熱するとその一部が甘み成分のフルクトースに変化します。

島らっきょうの育て方

一般的ならっきょうと同じで種球(たねきゅう・球根)から育てますが、軟白栽培するためには、深さ10〜15cmに植え付けることがポイント。または5cm程度の深さに植えて何回かに分けて10cmの高さまで土寄せします。
8月下旬から9月に植え、翌春から初夏に掛けて収穫できます。比較的育てやすく、プランターでも栽培可能です。

畑の準備

植え付けの2週間前までに畑に苦土石灰をまいて耕し、1週間前に元肥を施して幅30cmの畝を作る。プランターの場合は野菜用培養土を使うのが手軽です。

植え付け

種球は1個ずつに分け、薄皮をむいておきます。株間10〜15cm、条間25〜30cm、深さ10~15cm程度の間隔で芽が上になるように植え、覆土をします。

管理・水やり

追肥はほとんど要りませんが、生長や葉色が悪い場合は追肥をし、株元に土寄せします。雑草と乾燥に弱いので、こまめに草取りをし、土の表面が乾いたらたっぷり水やりをします。

収穫

植え付けから約5〜6カ月後、草丈が30cm程度になって、葉が倒れ始めたら収穫時期。根元を持って引き抜き、土を落として収穫します。

島らっきょうを育てるときに注意したい病害虫と対策

比較的病害虫に強い植物ですが、春先はネギアザミウマ、ネダニ、アブラムシ類などの発生に注意しましょう。

ネギアザミウマ

成虫は大きさ1mmほどで細長く褐色。幼虫は1mm未満で淡黄色。気温が高く乾燥した時期に発生しやすく、葉の汁を吸って白いスジ状の傷をつけます。寒冷紗や防虫ネットで作物を覆う、黄色の粘着シートで誘引・捕獲するなどの防除方法があります。

ネダニ

大きさ0.2mmほどで肉眼では極めて見つけにくい害虫で、土に埋まった球根や根を食害します。作物の生育が悪くなり、枯れてしまうこともあります。対策として健全な種球を使うことが重要です。症状が出たらすぐに株を抜き取って処分し土壌ごと入れ替えましょう。

アブラムシ

窒素成分の過多で発生しやすく、日当たり・風通しの悪い環境で増殖し、葉裏や新芽に寄生して汁を吸って作物を加害します。見つけたら水で洗い流す、粘着テープで取り除くなどして除去しましょう。黄色に集まる性質を利用して、黄色の粘着板を設置する方法もあります。

おいしい島らっきょうの選び方

根元の白い部分の表面に傷がなく、ふっくらと丸みを帯びていて、できれば土付きのものを選びましょう。葉が付いている場合は、緑色をしているものが新鮮です。

用途別の選び方として、サラダなどの生食の場合は細長いものが、漬物にする場合は根元が球状にふっくらとしたものが適しています。

島らっきょうの保存方法

土は落とさず、全体を新聞紙で包んでポリ袋に入れ、冷蔵庫の野菜室で1~2週間ほど保存することができます。塩漬けやしょうゆ漬けにすると更に1週間ほど保存できます。

島らっきょうの基本的な食べ方とレシピ5選

島らっきょうは、塩漬けやサラダにして生食する他、天ぷらや炒め物などの加熱調理にも使われる用途の広い食材です。沖縄では、かつお節をかけたり、塩やキムチの素をまぶして即席の漬物としてよく食べられています。下処理の方法と、おいしく食べる簡単レシピを紹介します。

下処理の方法

島らっきょうは土付きの状態で売られていることが多いので、まず泥をしっかり洗い落とし、薄皮をきれいに取り除いて使います。以下の手順で行いましょう。

1.泥を落とす
ボウルに水を張り、島らっきょうを入れ、軽くこすりながら泥を落とす。これを、何度か水を替えながら繰り返す。

2.根と葉を切り落とす
ひげ根を包丁やキッチンバサミで切り落とし、緑の葉は白い茎の部分を5〜10cm残して適度に切り、長さを揃える。
※葉は捨てずに、茶色く枯れた部分を取り除き、小ネギのように薬味や彩りとして使える。

3. 薄皮をむく
らっきょうの表面にある茶色い薄皮を手でつまんでむく。皮が固くてむきにくい場合は、少し水に浸けるとむきやすくなる。

4. 塩もみ(お好みで)
クセを和らげ、シャキシャキ感を出すために塩揉みをする。らっきょう全体に軽く塩を振り、優しく揉み込む(2~3分)、その後、水で軽く洗い流す。

5. 水気を切る
ザルに上げ、キッチンペーパーで水気をしっかり拭き、好みで生のまま食べたり、天ぷらや炒め物、漬物(塩漬け・しょうゆ漬け)などに利用する。

塩漬け


沖縄では最もポピュラーな食べ方。独特の香味とシャキシャキ食感が楽しめて、おつまみにもなる一品です。

材料(作りやすい分量)
・島らっきょう 200g
・塩      大さじ1
・水       適量

作り方
1.島らっきょうは下処理し、ボウルに入れて塩をまぶし、手で軽く揉む
2.10分ほど置いたら水で洗い、ペーパーで水気を拭き取る。
3.清潔な容器に入れ、冷蔵庫で半日ほど寝かせる
※食べる時に好みでかつお節(分量外)をかけても良い

天ぷら


島らっきょうの天ぷらは沖縄の郷土料理のひとつ。辛みが甘みに変わり、衣のサクサク感と相まってやみつきになる味わいです。

材料(2人分)
・島らっきょう 10本
・天ぷら粉   50g
・水      70ml
・揚げ油    適量
・塩      適量

作り方
1.島らっきょうは下処理して水気を拭き取る
2.天ぷら粉と水を混ぜ、衣を作る
3.島らっきょうに衣をつけ、180℃の油でカラッと揚げる
4.余分な油を切って器に盛り、食べる時に塩を振る

島らっきょうと豆腐の炒め物


島らっきょうと豆腐の炒め物は家庭料理の定番。ツナやひき肉を加えたり、溶き卵を絡めてチャンプルーにアレンジしてもおいしい。

材料(2人分)
・島らっきょう 10~12本(100g)
・木綿豆腐   1丁(300g)
・ニンニク   1片(みじん切り)
・ショウガ   1片(みじん切り)
・ごま油    大さじ
・しょうゆ   大さじ1
・みりん   大さじ1
・豆板醤    小さじ1 
・水      50ml
・片栗粉   小さじ1(水大さじ1で溶く)

作り方
1.島らっきょうは下処理して斜め薄切りにする
2.豆腐はキッチンペーパーに包んで水切りし、一口大にちぎる
3.フライパンにごま油を熱し、ニンニク、ショウガを炒め、香りが立ったら島らっきょうを加えてサッと炒める
4.豆腐を加えて崩れないように優しく混ぜる
5.しょうゆ、みりん、豆板醤、水を加えてひと煮立ちしたら、火を止めて水溶き片栗粉を加え、再び加熱してとろみをつける

肉巻き


島らっきょうは軟白部分が長く、肉巻きの具材にもぴったり。手早い調理でシャキシャキ感を残しても、フライパンに蓋をして焼きしんなりさせてもおいしいです。

材料(2人分)

・島らっきょう(下処理する)8本
・豚バラ肉(薄切り)    8枚
・塩こしょう        少々
・しょうゆ         大さじ1
・みりん          大さじ1
・酒            大さじ1
・ごま油          大さじ1

作り方
1.島らっきょうは下処理する。彩りをつけるために葉は切り分けずに残しても良い
2.豚バラ肉を広げ、塩こしょうを振り、島らっきょうの白い部分に巻きつける
3.フライパンにごま油を熱し、2の巻き終わりを下にして中火で焼き、転がしながら全面に焼き色をつける
4.豚バラ肉に火が通ってきたら、しょうゆ、みりん、酒を混ぜて加え、全体によく絡めて火を止める
※お好みでレモン(分量外)を添える。

味噌汁


島らっきょうとみそは好相性。葉も一緒に調理するとネギの代わりになり、彩りも良く仕上がります。

材料(2人分)
・島らっきょう(下処理する) 5~6本
・みそ              大さじ1
・だし汁            500ml
・油揚げ            1枚

作り方
1.島らっきょうは縦半分または小口切りにし、葉は刻んでおく
2.油揚げは熱湯をかけて油抜きし、細切りにする。
3.鍋にだし汁を入れて中火で温め、島らっきょうを加えて2~3分煮る
4.油揚げを加え、更に1~2分煮る。
5.火を弱め、みそを溶き入れ、島らっきょうの葉を加え、沸騰直前まで温めて火を止める

強い香味は沖縄の味、調理に万能な島野菜

沖縄の気候風土で育まれてきた伝統的農産物「島らっきょう」は、シャキシャキとした食感とピリッとした辛み、強い香が特徴です。本州のらっきょうとは一線を画す独特の味わいと形状で、沖縄の郷土料理には欠かせない存在。生食もでき、薬味にもなり、炒め物、揚げ物、焼き物、汁物など、さまざまな調理方法で楽しめる万能野菜です。

らっきょうは漢方薬にも利用されるなど、健康の維持・促進に寄与する各種機能性成分が含まれ、在来種の島らっきょうには、特に多くの生理機能があることが分かっています。家庭での栽培も比較的容易で、温暖な気候と水はけの良い土壌があれば、プランターでも育てることができるのも魅力。家庭菜園や食卓に取り入れて、沖縄の味を楽しんでみてはいかがでしょう。

取材協力:日本伝統野菜推進協会

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