マイナビ農業TOP > 農業ニュース > 個別の「人事評価制度」と静岡県版「農業人財評価マニュアル」で、主力従業員の育成を強化

タイアップ

個別の「人事評価制度」と静岡県版「農業人財評価マニュアル」で、主力従業員の育成を強化

個別の「人事評価制度」と静岡県版「農業人財評価マニュアル」で、主力従業員の育成を強化

静岡県では新規就農支援に注力し、年間約300人が新たに農業に就くものの、その過半数強を占める雇用就農者の定着率の低さが顕著です。この課題を受けて、先進農家で組織する静岡県農業経営士協会新規就農者受入部会(以下、部会)の6経営体が各自の「人事評価制度」の策定に挑戦。同時並行で静岡県が「農業人財評価マニュアル」の作成に取り組みました。一連の成果を収めた本事業での気づきと運営のポイントを事務局担当者に取材しました。

雇用就農者の定着には、人材育成の仕組みが必要

静岡県はミカンや茶、施設園芸、露地野菜、水稲、畜産など多様な農業を展開すると同時に製造業集積の「ものづくり県」でもあり、農業人材の確保は他産業との競争にさらされています。

県の調査によると、毎年約300人の新規就農者のうち半数強の150〜160人が雇用就農者です。就農5年後の追跡調査で独立・親元就農は9割が定着する一方で、雇用就農者は約4割が就労体制の未整備等を要因に離職する実態が明らかになりました。
この結果を重く見て、静岡県は部会との意見交換を重ねてきました。「離職理由は多岐にわたりますが、働きやすい環境づくりのため就業規則や人事評価制度を整えたいという要望がありました」と農業ビジネス課の勝田さんは語ります。
2024年5月、静岡県農業振興公社を事務局として静岡県雇用労力確保推進協議会(以下、協議会)を設立。部会加入の約50経営体から参画を希望した6経営体(個人3、法人3)が、専門家支援のもと人事評価制度導入に取り組みました。各経営体の従業員数は2~11人と規模はさまざま、作目も多様です。

「従業員の定着を課題とする経営体もあれば、既存従業員のモチベーション向上や主力従業員育成を目指す経営体もあり、特に後者が多い印象です」と勝田さん。協議会はこうした背景から農業経営体の人材育成強化を目指し4つの事業を推進しました。

人事評価制度の導入、マニュアル作成を同時推進

1つ目は今回のメイン事業となる「人事評価制度の導入支援」です。2024年9月から翌年2月にかけて、社会保険労務士と中小企業診断士を農業経営体に同時派遣し、ヒアリングから始まる体系的支援を実施しました。支援プロセスは、初回の対面ヒアリングに始まり、経営体状況や労務管理の把握、経営ビジョン及び経営目標(5ヶ年のロードマップ)の明確化を行い、具体的な人事評価の項目設定等は、メールでのやり取りを中心に進められました。各経営体が従業員に求めるスキル取得目標の項目を整理し、約5回の調整を経て最終的に経営体ごとにカスタマイズされた人事評価シートを完成させました。

この取り組みを伴走支援した農業振興公社の伊東さんは「人事評価制度構築の前段階として、経営ビジョンを明確化し、今後の賃金アップのために売上をどのように向上させるかなど、経営者の気づきを促すことに重点を置きました」と語ります。
2つ目は「静岡県農業人財評価マニュアル」の開発です。県と農業振興公社は、モデルケースとなった6経営体の人事評価シート作成のプロセスを体系化し、2025年2月末に全国初となる農業分野の人事評価マニュアルを発行しました。

伊東さんは「一般企業同様、技術スキルとヒューマンスキルを総合的に評価する仕組みを採用しました。技術面では土づくりや害虫対策の判断力などが評価基準の例となります」と説明します。マニュアルは、施設野菜、露地野菜、お茶、果樹、水稲の5品目に対応し、各品目に適した評価基準を設定しています。これを活用してもらうことで、農業経営体それぞれの経営目標に合わせた適正な人事評価を促していく構えです。

農業経営の「主力従業員」の育成につなげる

3つ目の事業は、主力従業員の育成に向けた研修会です。2024年10月から2025年1月にかけて全3回シリーズで開催され、ファームサイド株式会社代表取締役の佐川友彦氏が講師を務めました。会場参加に加え、YouTubeでの限定見逃し配信を実施することで、より多くの農業経営者が学びを得られる環境を整えました。

梨農家の主力従業員として数々の経営改善を実現し、現在はファームサイド株式会社を設立し、主力従業員育成の支援を行う佐川氏の講演は、会場参加と見逃し配信視聴を合わせ、延べ100人以上が受講する盛況ぶりでした。「優れた人材を探すだけでなく、育てることが重要であり、そのために経営体の労務管理やビジョンを整備することが重要という考えを共有できた」と勝田さんは研修の成果を評価しています。

4つ目は、合同企業面談会「シゴトフェア」への出展です。2025年2月に静岡市で開催されたこのイベントは、農業を含む多業種の企業が参加し、求職者とのマッチングをはかる場です。協議会はブースを設け、農業全般に関する情報提供や雇用就農に関する支援策を紹介。9人の来場者から具体的な相談を受け、農業への就職に関心を持つ人々と直接対話する貴重な機会となりました。

人事評価シートを対話ツールに、より良い職場づくり始動

今回の事業の柱となる「人事評価シート作成」は、農業分野に精通した社労士である社会保険労務士法人リライアンスの鈴木泰子氏及び中小企業診断士である株式会社ふるさと支援研究所の清水代表が経営体の支援を担当し、他産業と同等の労働環境を整備するための助言を行いました。賃金の適正化、労働時間管理、ハラスメント防止などの重要性が指摘され、農業振興公社の伊東さんは「経営体の中には『ハラスメントを意識したことがなかった』という声もありましたが、事前に話し合うことでより良い職場環境を整えるきっかけになった」と振り返ります。

また、ハラスメント相談窓口は経営陣ではなく相談しやすいベテラン従業員が望ましいとの具体的な助言も得られました。「主力従業員」の役割についても議論され、特にスケジュール管理能力が求められ、経営者不在時も円滑に運営できる体制構築が重視されました。

静岡県の勝田さんは「今回、人事評価制度を導入した6経営体は、県が伴走支援をしながら実際に運用し、内容を改良することで経営体の実態に即した人事評価制度の完成を目指します。また、今回、事業に参画していない経営体についても、マニュアルを広く公開することで、人事評価制度導入のきっかけになることを期待し、人事評価制度導入を希望する経営体を今後も支援していきたい」と抱負を語ります。

農業振興公社事務局長の乾さんは「6経営体への人事評価制度導入と、広く活用できるマニュアル作成は事業の両輪。マニュアルはスタートレベルですが、経営者と雇用者のコミュニケーションツールとして活用してほしい」と説明します。この人事評価シート作成マニュアルは県農業振興公社のホームページで公開され、誰でも活用することができます。人事評価シート作成マニュアルの発行で、県内主力従業員の育成に弾みがつきます。

【取材協力】
静岡県雇用労力確保推進協議会
静岡県 農業人財評価マニュアル

【労働力確保体制強化事業に関するお問い合わせ】
株式会社マイファーム
農業労働力確保支援事務局

MAIL:roudouryoku@myfarm.co.jp
TEL:050-3333-9769

タイアップ

関連キーワード

シェアする

関連記事

タイアップ企画

公式SNS

「個人情報の取り扱いについて」の同意

2023年4月3日に「個人情報の取り扱いについて」が改訂されました。
マイナビ農業をご利用いただくには「個人情報の取り扱いについて」の内容をご確認いただき、同意いただく必要がございます。

■変更内容
個人情報の利用目的の以下の項目を追加
(7)行動履歴を会員情報と紐づけて分析した上で以下に活用。

内容に同意してサービスを利用する