2024年問題は経営戦略見直しの契機
2024年問題とは、ドライバーの労働時間を制限する法施行による問題の総称。ドライバーが不足することによる送料アップの他、これまで翌日配送ができていた地域が翌々日になるといった問題が代表例に挙げられます。
2000年の起業以来、20年以上にわたってネット販売を中心にしてきた我が菜園生活 風来(ふうらい)にとっても大きな問題になるかと思いました。しかし、実際はそれほどではありませんでした。なぜなら送料アップについてはコロナ禍初期の頃に大幅に引き上げられたことがあり、それに比べて引き上げ幅が少なかったからです。とはいえ、クール便での送料がサイズによって変わり、また配送先地域が都道府県単位で金額や着日が変更されたりと、細かい対応を求められる場面はいくつかありました。

全国に届けられる荷物
2024年問題において、大きな影響はありませんでしたが、この先も送料は上がることはあっても下がることはないという現実をつきつけられたのは確かです。そういう意味では、2024年問題は今後の経営戦略の練り直しを考える大きな機会になりました。
これまで講演や視察において、小さい農家が生き残る道としてネット販売をすすめてきました。2024年問題による影響が不安視される現在でも、その考えは変わっていませんが、世の中の変化に応じて、やり方を考える必要があることを伝えています。今回は、販売を取り巻く状況の変化への対応策の他、これからの見通しについて述べていきたいと思います。
変化に対応した送り方
風来の主力商品は野菜セット。基本は80サイズで送っているのですが、2024年問題における値上げで、クール便だと顧客の8割を占める関東・関西圏への送料が1000円オーバーとなりました。風来の野菜セットのメイン価格帯は3000円なので、これ以上となると送料負担が原因で販売数が減る心配が出てきました。送料にも1000円のカベがあるのではないかと思います。
そこで野菜セットにおいては通年単位の定期便(多くは毎週か隔週お届け)の方には送料を6~9月のクール便と10月~5月の常温便を均す形にして通年の送料を同一にし、関東・関西の方には978円としました。
単発の注文もそれに合わせ関東・関西方面は通年978円に設定しました。単発の野菜セットにおいてはクール便の時期には野菜の種類、量を品減らすことで対応。いずれにしても野菜セットは以前から2週間待ちになっていることもあり、単発販売は野菜に余裕がある時だけにして定期便へ誘導することに。
風来ではセットを入口に、ピクルスなどをついでに購入してもらうことで単価を上げてきたのですが、定期便ではこうはいきません。そこでそれまでの方法は諦め、ピクルスをそれ単体で販売するように戦略を大きく変更しました。それをやれると思ったのはJP(日本郵便)の提供しているクリックポストサービスを知ったからです。
クリックポスト便は大きさはA4サイズ、厚み3㎝、重さ1㎏以内であれば、全国送料185円で相手方のポストに届けられるというサービスです。185円でしたらお客さまにおいてもそれほど負担感なく買えると考えました。
ただクリックポストは常温発送しかできません。そこで製造したピクルスをHACCPに沿った形で煮沸消毒し菌検査に出したところ、高温度状態(35度)にて半年以上は大丈夫だということが分かり、安心して出品することができました。
そんなクリックポストでの「ポストに届くピクルスセット」は今では風来の人気商品になっています。クリックポストの発送伝票は自宅で印刷できます。郵便局に持ち込むのはひと手間掛かりますが、風来の近くに郵便局もありそれほど負担感もなくできています。
農家仲間でも、こうしたクリックポスト便を活用する人が増えています。夏場はさすがに厳しいようですが、アスパラガスやネギなどかなりの人気だとのこと。また野菜セットの試食的な役割としてお試しセットとして活用している農家もいます。

全国185円で届くクリックポストを使ってポストに届くギフトセット
様変わりしたEC業界で生き残る方法
2000年初頭のネット販売黎明(れいめい)期は、アイデア次第で小さい事業者であっても爆発的に人気になることができた時代でした。同業種で資本力に100倍の差があっても、ネット販売における売上は勝っているというジャイアントキリングが可能でした。
その当時、何より大切だったのがSEO(Search Engine Optimization)対策。Googleなどの検索エンジンで、特定のキーワードでいかにして自社サイトを上位に表示させるかが売り上げを大きく左右していたため、そのための勉強会があちこちでありました。
それがgoogleのアルゴリズムが目まぐるしく変わっていったことによって対策も複雑になり、現在は広告費を払って表示させるなどの方法に変わってきました。こうした変容によってネット販売でも、リアル店舗と同じような流れでの廃業が短期間で見られました。まるで個人店から商店街、アーケード、スーパーマーケット、大型ショッピングモールと変化していき商店街がシャッター通りになるがごとく。
現在はネットで物を買う時はAmazonか楽天でという人が多いのではないでしょうか。そういった意味において個人店で新規参入はなかなか難しい時代となりました。ただ農産物においては「ポケットマルシェ」や「食べチョク」といった産直ECが出てきたことが救いとなりました。
私はこれからの個人HPは山の上にある本店と考えるべきではないかと思っています。人通り(HPの閲覧数)が少なく、フリーで入ってくる人はほとんどいない。だけどわざわざ目指してくる人は最初から買う気満々。風来ではそのためにも産直ECを活用させてもらっています。そこで知ってもらって自社サイトに来てもらう。実際に風来のHPの売上においては顧客数は減っていますが、以前と比べ単価は高くなっています。

山の上の本店的役割の自社サイト
小さい農家は小回りが利くのが特徴という姿勢でやってきましたが、ネット戦略も同じ姿勢でやってきました。先述したクリックポストも価格やレギュレーションは変わるかもしれない。その時はその時でまた変化していく。長い目で見て最終的にはリアルで買いに来てくれる人が何より強いのではという考えもあり、最近はそちらにも力を入れています。
ともあれ、全国に販売できるということは、その分ライバルも多いということです。その中で生き残っていくためには価格競争に勝ち残るのではなく、普段からSNSなどを活用して店名を覚えてもらうことが大切。指名買いされることが送料アップへの何よりの対抗策だと思います。