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スーパーマーケット産業で求められる生産物の特徴。キーワードは「差別化」と「少量」【バイヤーが欲しがる青果物#2】

スーパーマーケット産業で求められる生産物の特徴。キーワードは「差別化」と「少量」【バイヤーが欲しがる青果物#2】

生産者が自ら販路開拓をする上で重要なことは大きく2つある。どの市場に向けて青果物を作るか明確にすること、栽培する青果物がどの市場と相性が良いのかを見極めることだ。青果物の市場は、幅広い青果物を少量ずつ扱う飲食関係、家庭向けの青果物を販売するスーパーマーケット関係、サラダやお弁当に使用される加工野菜を扱うコンビニ関係など多種多様。必要とされる品目が違えば、求められる作物の特徴も変わってくる。本連載では各市場のバイヤーに、それぞれ求める生産物の特徴を語ってもらう。第2回は、青果物卸を行う横浜市場センター株式会社でスーパーマーケット業界を担当する結城陽三郎(ゆうき・ようざぶろう)さんに話を聞いた。

横浜市場センター株式会社

1 神奈川県横浜市に本社を構える横浜丸中グループ。横浜市中央卸売市場の指定卸売会社である横浜丸中青果株式会社が産地で集荷した青果物を販売することを目的として2000年に設立。市場から仕入れた青果物を、首都圏を中心とした全国の量販店・コンビニ・外食・中食・総菜工場などに販売する他、近年は、産地と直接契約し、出荷全量を販売に結び付ける「畑丸ごと買い」にも力を入れる。

コロナをきっかけに売上を伸ばしてきたスーパーマーケット業界

-スーパーマーケット業界はコロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言などもあり、家での食事の機会も増えたことで売上が伸びてきたと、よく耳にします。近年、業界内ではどのように需要が変化してきたのでしょうか。

皆さんも体験した通り、コロナによって外食など外で食べることが少なくなり、家で食べる人も増えたことから、スーパーマーケットの売上は伸びていきました。スーパーの売上は、コロナ前に比べ1.5倍から1.7倍を推移していたと記憶しています。

そこから、コロナが落ち着きを見せ、外食などに客足が戻ってきましたが、スーパーマーケット自体の売上は下がることなく、未だに伸び続けています。特に、小売店や卸売業者が独自に企画するプライベートブランド(PB)において調子が良く、弊社で担当しているPB商品もコロナ前に比べて2倍になるなど売上を伸ばしています。

また、コロナ禍を契機にオーラパックやP-プラスといった鮮度保持袋を導入するスーパーマーケットも出てきました。冷蔵庫で鮮度が長続きするため、1回の買い物で多くの青果物を買うことができるといった点が感染のリスクを抑えられると推奨されています。

-最近では、スーパーマーケットごとに、生き残りを賭けて差別化を図る戦略があると聞きますね。

各社、他社との差別化を図るための策を巡らせていますが、業界としては、安価な価格帯の業態と高品質・高価格帯の業態の2極化が進んでいます。PBにおいても同様で、PBと言えばお値ごろ価格のイメージが強いですが、割安商品だけでなく他社と差別化を図るための看板商品として高品質のPBを取り扱うスーパーマーケットも見受けられます。

実際、私が担当しているスーパーでは、高品質・高価格帯の業態にかじを切っており、普通の長ネギのほか、PB商品として深谷ネギといったブランド品目を置くといったように、ワンランク上の価格帯の野菜も取り扱うようになってきました。都心のスーパーマーケットという点もありますが、高品質・高価格帯の青果物も年々売上を伸ばしています。

スーパーマーケット業界で扱われる青果物について

-ここからは業界で扱われる青果物について伺いたいと思います。現在の取り扱い品目上位や、変わった品目はどのようなものがあるのでしょうか。

担当者やスーパーマーケットによっても得意な品目と苦手な品目があるため一概には言えないと思いますが、キュウリ、ナス、トマトといった果菜類がスーパーマーケット業界では圧倒的に上位を占めている傾向にあります。それらに次いで、キャベツなどの葉物野菜の取り扱いも多いです。

変わった品目でいうと、どうしても家庭で使用することが目的となるため、近年増えてきている変わり種というものはありません。

ただ、品質を求める業態では差別化という意味合いもあり、「○○農協の柿」や「○○農協のナス」といった産地指定は増えつつあります。また、定番品目のジャガイモでは、よくねたいもやメークイン、今金男爵といったように品種で売ることも求められていますね。

-産地で売ったり、品種で売ったりといった話がありましたが、どのように青果物を仕入れているのでしょうか。

元々、市場からの仕入れが一般的ではありましたが、スーパーマーケット側から他社との差別化を図ることができる提案を求められるように変化してきました。その影響もあり、私が担当しているスーパーでは、市場で青果物をあまり買わなくなってきてます。

その代わり、つながりがある産地や生産者から直接買うことが多いです。生産者から直送されてくる分で賄えない分を市場で買うという流れが主流ですね。

ただ、安価な価格帯の業態では市場で売れていない安価な青果物を仕入れることも多いです。スーパーマーケットの方針によって違ってくる部分になりますね。

スーパーマーケット業界で求められる青果物について

-生産者から直接仕入れることもあるとお伺いしましたが、業界で青果物に求める特徴などはどんなものがあるのでしょうか。

やはり、これまで何度か出てきた言葉ですが「差別化ができる商品」ということが重要です。具体的には、味や糖度、機能性表示、圧倒的な物量による単価、周りが無い時に作れる栽培技術。市場からの仕入れでは対応できない部分がスーパーマーケットの欲しがる理由になります。

青果物の特徴ではありませんが、生産者側で物流を組めることが求められることが多いです。どんなに品質の良いものでも、宅急便の運賃が商品代に乗ってしまうと、仕入れて販売することはどうしても難しくなってしまいます。このため、あらかじめ生産者側で市場までの便を立てられるようにしてもらえると話がしやすいと言えます。

-直近で「こんな野菜や果物が足りていない」といった話はあるのでしょうか。

スーパーマーケットで扱われる青果物の多くは一般野菜になるので、足りていないものは基本的にないでしょう。冬時期に手に入れにくい野菜としては、オクラやアスパラガス、カボチャが挙げられます。国産が無いため、輸入に頼るしかありません。

しかし、近年では沖縄本島の南側や石垣島、宮古島といった温暖な地域で少しずつ生産が始まっています。輸入品に比べて価格が倍以上になることも多いため、どのスーパーマーケットでも取り扱うのは難しいですが、国産品の需要はあると思います。価格も考慮すれば、南の産地から供給される国産野菜が増える可能性はあるかもしれません。

もちろん、この分野は難しいため、長年輸入が一般的になっていますがね(笑)。

生産者から寄せられた質問をぶつけてみた

-ここからは、あらかじめ生産者から募った質問に回答いただきたいと思います。まずは、スーパーマーケット関係に出荷する場合の最低出荷量について教えてください。

難しい質問ですね。正直なところ、物によりますとしか言いようがありません。

具体的には、少量でもやりたいことや宅急便の運賃を払ってでもやりたいと思えるほどのこだわり品であれば出荷量は関係ありません。実際、過去には僅か24パックの取引から始まったイチゴも存在します。

ただ、ほとんどの場合、宅急便の運賃を含むと単価が合わないことの方が多いので、一般的には数量があってしっかり運賃代が出るぐらいの物量があることは前程になってしまうでしょう。

-これまで取引に至った生産者と至らなかった生産者。取引してみたけど続かなかった生産者が居るかと思います。その原因について教えてください。

取引が続かなかったケースで一番の理由は、レスポンスの悪さですね。レスポンスが遅い時点で「この人に頼って大丈夫か」と、どうしても不安視してしまいます。少し話が飛躍しますが、仮に連絡が通じないとなった場合、このことが取引を終わらせてしまうことにもつながります。連絡がないということは、その方と取引するはずだった分を他で補填しなくてはいけません。こうしたケースの場合、「連絡が取れなかった生産者ではなく、補填に対応してくれた生産者の野菜を来年も買おう」となるのは必然ですよね。

そんな人居るの?と思われるかもしれませんが、意外と多いですよ(笑)

あとは、いきなり風呂敷を広げすぎてしまう人も気を付けるようにしています。「100ケースでも200ケースでも大丈夫」といいながら契約をしたにも関わらず、ふたを開けてみると50ケースしか出荷できなかったという話も少なくありません。

それならば最初から50ケースと話をしてくれて、3年、5年計画で1歩ずつ着実に増やしていける生産者の人が取引をしやすいです。

-生産者に求めるスキルや知識はありますか。

特段求めているものはありませんが、逆に気を付けて欲しいと思うことはあります。

スーパー側の仕入れ担当と一緒に産地へ出向くことがありますが、まだ取引をしていないのにも関わらず、お土産などを用意しているケースがよくあります。現地で作っている青果物であれば、サンプルという意味合いでありがたいですが、お酒みたいなものを渡すのは避けた方が良いでしょう。

昔は「お車代」のような慣習もあったと聞きますが、未だに物で釣って取引を獲得しようとする生産者も居ます。

私自身、お土産品を受け取ることはありませんし、産地に弱みを握られた感覚になります。良かれと思ってご用意いただいている生産者も少なくないと思いますので、気を付けて欲しいところです。

今後のスーパーマーケット業界は

-最後に今後予想される業界の動きについて教えてください。

既に始まりつつあることでもありますが、近年の青果物の特徴として少量化の傾向にあります。野菜で例えると、これまでの売り場では1玉で扱っていたのが基本でしたが、最近では約8割もの品目で、2分の1などにカットされたものが販売されています。この他、ミョウガなど1袋3本入りが基本だったものが2本入りに変わっていたり、100gで合わせていた小ネギが50gになっていたりします。

コロナが明けてからは自由に買い物に行けるため、1度に多くの量を買う人も少なくなっています。生産者が思っているよりも少量での需要があるので、少量でパック詰めされた商品の可能性はあると思います。

この他、今後のスーパー業界では更に、安価な価格帯の業態と高品質・高価格帯の2極化が進んでいくと考えられます。安売り業態では、市場に大量に溢れる安いものや産地からの大量買い、高品質・高価格帯の業態では、消費者が欲する品質だったり味がより求められていくのではないでしょうか。

取材協力

横浜丸中グループ
横浜市場センター株式会社

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