半信半疑だったバイオスティミュラント資材の導入
近年、新しい農業資材として注目されている「バイオスティミュラント」。農作物や土壌の力をサポートする物質や微生物、またはそれらを組み合わせた農業資材で、日本語では「生物刺激剤」と訳されます。その名の通り、作物に施用することで高温、長雨、塩害といった環境ストレスへの耐性が改善。品質向上や収量アップにつながるとされています。
4年ほど前より、株式会社レゾナック(当時は昭和電工株式会社)のバイオスティミュラント資材『クロピコ』を使用しているのが、福島県新地町で農業を営む目黒繁美(めぐろ・しげみ)さんと佐藤知之(さとう・ともゆき)さんです。目黒さんは息子の良樹(よしき)さんとともに水稲とニラを、佐藤さんは長ネギを栽培しています。

左から佐藤知之さん、目黒繁美さん、目黒良樹さん
2人がクロピコを知るきっかけとなったのは、レゾナックが2011年の東日本大震災の復興支援として2021年から行った同資材の無償提供でした。
太平洋に面する新地町は、東日本大震災によって町の総面積の約5分の1が浸水。50年以上続く目黒さんの田畑も甚大な津波被害を受けました。国の復旧作業や稲わらのすき込みを施したことにより、震災から3年後に田んぼとしての形を取り戻したものの、塩害の影響は深刻でその後5年もの間収量が半減。目黒さんは当時の様子について「形として復旧しただけ。もう元の状態には戻らないと思っていた」と振り返ります。
そんなとき、地元の役場からクロピコの無償提供について話を受けた目黒さん。
「聞いたことのない資材だったし、大した効果は出ないだろうと思っていた。一回試してみるか、くらいの軽い気持ちだったね」
半信半疑で使い始めたクロピコでしたが、その1か月後、目黒さんは驚くべき効果を目の当たりにすることとなったのです。
塩害被害の水稲が『クロピコ』で復活 ニラは根張りが通常の2倍に
はじめに効果が表れたのは、新たな地で栽培を再開したニラでした。
「クロピコを施用していないものと比べて根張りが2倍くらい良くなったんです。それだけでなく、虫もつきづらくなりました」
ニラは19棟のハウスと1.5haの露地で栽培。クロピコは種蒔き前の浸漬処理の際に水で希釈し使用するほか、育苗や防除時に活用するなど、出番が多いといいます。
「防除の際に一緒に振る方が効率よくできるので、消毒に混ぜても影響が出ないのは助かります。混ぜるだけという手軽さも気に入っています」と良樹さん。標準希釈倍率は1,000倍。農薬との混用施用ができるのはクロピコの魅力のひとつです。
また、米も発根・根張りが良く、収量が一気にアップ。今では震災前の80%ほどの収量にまで回復しました。
「流し込みをしたり、ドローンで散布したりといろいろ試しています。一時はダメだと思ったけど、米が強く育ってうれしかったね」と、目黒さんは目を細めます。
高温障害に負けず地域で唯一長ネギを出荷 農薬の使用量も削減
8反の畑で長ネギを栽培する佐藤さんは、就農して間もなくクロピコの使用を始めました。
「当時、『資材を無償提供します』という話がほかにもいくつかありました。どの資材が一番効果があるのかと4種類ほど試したところ、明らかな変化があったのがクロピコでした」
定植前にクロピコを使った長ネギと、使用しなかったものとを比較したところ、クロピコを使った長ネギの根の量が段違いに多かったそう。さらに、葉が肉厚になり、病害虫の被害も減少。健全に育ったため、農薬の使用量も減らすことができたといいます。
うれしい変化はそれだけではありません。記録的な猛暑であった2023年の夏、周辺の長ネギ農家が出荷できない事態に陥るなか、地域で唯一高温障害の影響を受けなかったのが、佐藤さんの長ネギでした。
「夏に出荷できたことも驚かれましたが、『佐藤さんの長ネギ、夏なのになんでこんなに尖っているの?』と聞かれたのを覚えています。夏の長ネギは先端がやわらかくなりがちなのに、押すと痛いくらい尖っていたんです。丈夫に育ったのはクロピコが根を強くしたおかげだと思いましたね」と、佐藤さんは笑顔で語ります。
科学的エビデンスがある『クロピコ』で、さらなる発展を目指す
目黒さんと佐藤さんが実感した効果は、ほかの地域や異なる作物でも確認されています。クロピコによって引き出される力のメカニズムについて、レゾナックの齋藤信(さいとう・まこと)さんにうかがうと、カギとなるのはクロピコに含まれる3種類のオリゴ糖だといいます。
クロピコの主成分は、エビ・カニの殻、綿、そしてトウモロコシの芯からそれぞれ造った機能の異なる3種類のオリゴ糖です。齋藤さんによると、植物は自然界に存在するオリゴ糖を“病原菌”と“病原菌にやられた体の一部”だと認識するのだそう。
「植物は周囲の環境を感知するセンサーのようなものをもっています。外敵とみなすオリゴ糖を主成分としたクロピコを施用することで、『病原菌がきた!』と、勘違いするんです。その結果、自らを守ろうとして本来持っている力を活性化し、高温障害や塩害といった環境ストレスへの耐性をはじめ、発根促進や光合成効率・結実性・収量の向上、といった結果につながります。ヒトで例えるとワクチン接種で免疫がつき、病気にかかっても軽症で済むようになるイメージです」
最大の特徴は、このような植物の効果発現メカニズムを科学的に解析・実証していることです。レゾナックでは、名古屋大学や北海道大学など複数の研究機関と連携し、オリゴ糖による植物細胞の活性化を解析しています。すでに多数の機関で複数のオリゴ糖の配合から得られる効果が実証されており、海外市場にも展開されているとのことです。
なお、レゾナックのメンバー共著による研究論文の一つは、2024年最も引用された植物系科学論文Top 10(WILEYによる)にも入り、注目の高さがうかがえます。

クロピコはビーカー試験、各種科学的解析、試験圃場、実圃場の各種評価、各地域での評価と、複数の試験で数年単位での評価を積み上げたのちに製品化に至りました
「根の力」を鍛え、異常気象に打ち勝つ作物づくりへ
「苗半作(※)」という言葉があるように、農業において苗づくりは非常に重要です。クロピコの効果を実感したことで、佐藤さんは「根の力」の大切さを再認識したと話します。
「良い作物を育てるためには根が強くないといけません。自分の中では苗半作ではなく“苗7割”だと思っています。そしてクロピコならそれが実現できると確信しています」
※苗の出来によって作柄の半分が決まるという意
レゾナックでは、クロピコをより多くの地域・農家に活用してもらうことを目指しています。最後に、齋藤さんはこう話してくれました。
「クロピコは、植物の“まだ使われていなかった力”を引き出す効果があります。こうした資材を通じて、皆さんの営農に貢献したいという想いこそが私たちの活動の根本です」
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