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5月が旬の野菜は? 「走り」「盛り」「名残」で、食卓に初夏の香りと彩りを

5月が旬の野菜は? 「走り」「盛り」「名残」で、食卓に初夏の香りと彩りを

初夏の5月は、春野菜と夏野菜が同時に楽しめる、旬の入れ替わりの季節です。店頭に並ぶ野菜の種類がぐんと増え、夏の始まりを感じられるのではないでしょうか。その一方で、入荷する野菜の顔ぶれも少しずつ変わっています。このように「旬」には「走り(はしり)」「盛り(さかり)」「名残(なごり)」の三つの段階があり、その時々に適した調理法と食べ方があります。この時期の各段階の野菜を知って旬を逃さず味わうヒントをお届けします。

旬とは?

その野菜の味が最も良い食べごろの時期を旬と言い、栄養価も高くなります。収穫がピークを迎え、スーパーや直売所などに出回る量も多くなり、手頃な価格でおいしく栄養価の高い野菜を手に入れることができます。

5月旬の野菜いろいろ

旬には三つの段階があります。その野菜が出始める「走り」、収穫・出荷のピークを迎える「盛り」、時期が終わりにさしかかる「名残」です。「走り」の野菜はみずみずしくフレッシュ。可能であれば生のまま、あるいは水分を生かした調理方法が適しています。「盛り」は食べごろのベストタイミング。栄養価が高く価格も安くなるので、いろいろな調理法でたっぷり楽しんで。「名残」は水分量が少なくなり味が凝縮されるので加熱調理がおすすめです。

5月が「走り」の野菜

夏野菜が出回り始める5月。夏ナス、ズッキーニ、ミョウガなど、互いの相性も良い走りの野菜の食べ方や選び方を紹介します。

5月が走りの野菜

夏ナス

ナス科ナス属の果菜で、インドが原産地。日本でも奈良時代には食べられていた記録があります。
品種を問わず、6月から9月にかけて旬を迎えます。特に8月ごろまでに収穫するものを夏ナス、9月以降に収穫するものを秋ナスと言います。夏ナスは秋ナスと比べてさっぱりした味わいになると言われ、この時期は高知産や九州産のものが多く出回ります。
流通量が多いのは中長ナスで、関西以西と東北では長ナスが多く栽培されています。

栄養

成分のほとんどが水分で体を冷ます作用があります。茄子紺(なすこん)と呼ばれる紫色の皮に含まれる色素ナスニンはポリフェノールの一種で、抗酸化作用があります。

食べ方

ナスは油との相性が良く、炒め物、揚げ物、天ぷらに適しています。また、焼物、煮物、漬物、田楽など幅広く利用できます。味にクセがなく、加熱するとやわらかく滑らかな舌触りになります。

選び方

皮の色が濃く、張りとツヤがあり、傷や変色がないものが良質です。切り口がみずみずしく、ヘタがしっかりとしていて、とげが鋭く尖っているものが新鮮です。

保存方法

ラップに包んで冷蔵庫の野菜室で保存します。冷やし過ぎると縮むので注意しましょう。

調理例

薬味たっぷりナスの揚げ浸し、焼きナスとトマトの冷製パスタ、ナスの新タマネギ入り南蛮漬け

ズッキーニ

ウリ科カボチャ属の果菜で、北アメリカ南部・メキシコ北部が原産地。
カボチャは熟果を食べるのに対して、ズッキーニは開花から5~7日後の未熟果を食べます。ほのかに甘みのあるクセのない味で、皮はやわらかいのでむかずに食べることができます。
日本では比較的新顔の野菜ですが、ヨーロッパでは古くから料理に用いられ、花付きのまま早採りした花ズッキーニも食材として親しまれています。

栄養

低カロリーで、ビタミンC、カロテンを比較的多く含んでいます。

食べ方

皮ごと生食もできますが、主に加熱して食べます。油との相性が良く、揚げ物、炒め物、煮込み料理などに適しています。

選び方

皮に張りとツヤがあり、大き過ぎないものが良質。ヘタの切り口がみずみずしいものが新鮮です。

保存方法

ビニール袋に入れて、冷蔵庫の野菜室で3~4日保存できます。

調理例

ズッキーニのフリッター、生ズッキーニとミョウガのさっぱり和え、ズッキーニとナスのみそ炒め

ミョウガ

ショウガ科ショウガ属の香味野菜で、アジア東部・中国が原産地ですが、野菜として栽培しているのは日本だけと言われています。普段食べているのはミョウガの地下茎から出る花穂で、花ミョウガとも呼ばれています。
早生種の夏ミョウガ、中生・晩生種の秋ミョウガがあり、夏ミョウガは、少し小ぶりで香りが爽やかです。高知県がミョウガの生産量の約9割を担っています。

栄養

ミョウガの香り成分のアルファピネンには、食欲増進の他、発汗や血行、消化を促進する働きがあるとされています。

食べ方

主に、薬味、天ぷら、漬物などに用いられます。

選び方

傷がなく、身が締まり、つぼみが見えていないものを選びましょう。

保存方法

湿らせたキッチンペーパーに包んで冷蔵庫の野菜室で保存します。丸のまま冷凍保存もできます。

調理例

ミョウガと青じその混ぜご飯、ミョウガとナスのお吸い物、ミョウガの卵とじ

5月が「盛り」の野菜

5月は多くの野菜が最盛期を迎えます。グリーンアスパラガス、春トマト、ニンニク、新ジャガイモ、東北からはワラビなど。盛りの野菜の栄養や食べ方を紹介します。

5月が盛りの野菜

グリーンアスパラガス

キジカクシ科クサスギカズラ属の葉菜類で、南ヨーロッパからロシア南部が原産地です。日本には江戸時代に観賞用として伝わり、大正時代に北海道で本格的な栽培が始まりました。
枝や葉が出る前の若い芽と茎を食用とします。春に収穫される春芽と夏に収穫される夏芽があり、5月は春芽の時期です。春芽はやわらかく甘みがあり、みずみずしさが感じられます。

栄養

疲労回復効果があるとされるアスパラギン酸を含み、カロテン、ビタミンCが豊富な緑黄色野菜。穂先に含まれるルチンには、毛細血管を丈夫にする働きがあるとされています。

食べ方

たっぷりの湯に根元から入れてサッと茹でる他、炒め物、揚げ物などにも用います。調理する前に茎の硬い部分やハカマ(三角形の葉のような部分)を取り除くと食感が良くなります。

選び方

穂先が締まり、緑が鮮やかで全体に張りのあるものが新鮮です。切り口が白くみずみずしいものを選びましょう。

保存方法

新聞紙などで包み、冷蔵庫に立てて入れて2~3日保存できます。

調理例

アスパラガスの塩茹で、アスパラガスとエビのガーリックソテー、アスパラガスと皮付き新ジャガのグリル

春トマト

ナス科トマト属の果菜類で、中南米が原産地。日本では昭和初期に桃色系が導入されましたが、1983年に桃太郎が発表されて以来、完熟型の赤色系品種が主流になっています。
周年出荷されていますが、冬春トマト(12月~6月収穫)と夏秋トマト(7月~11月収穫)に大きく分けることができ、冬春トマト(春トマト)は、越冬して蓄えられた濃厚な味と甘みが特徴とされています。春トマトには、桃色系のファースト、赤色系の桃太郎などの品種があり、ファーストは春にのみ出回ります。
栃木県、熊本県、愛知県、千葉県が主な産地です。

栄養

赤い色はリコピンという成分で強い抗酸化作用があり、油と一緒に調理すると体への吸収率が高まります。ビタミンC、β-カロテンを比較的多く含んでいます。

食べ方

生食でサラダ、サンドイッチの他、スープ、炒め物などにも向いています。

選び方

ツヤがあり赤色が均一なものが良質。ヘタの切り口がみずみずしい緑色のものが新鮮です。

保存方法

ビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室で保存します。冷やし過ぎると味が落ちるので注意しましょう。

調理例

湯むきトマトの白だし漬け、トマトとしらすの和風ブルスケッタ、トマト・ツナ・ゆで卵のオープンサンドイッチ

ニンニク

ヒガンバナ科ネギ属の多年生本草で、肥大した鱗茎(りんけい)を食用とします。原産地は中央アジアが有力です。
日本には平安時代に渡来したと推定され、長く薬用とされてきました。香辛野菜として食されるようになったのは戦後です。
保存性があるため1年中出回っていますが、春から初夏にかけてが旬。青森県産が国産品の約7割を占め、主に福地ホワイト六片種が栽培されています。とう立ちしたつぼみを切り落とした茎も、ニンニクの芽として出回ります。

栄養

ビタミンB1、リン、カリウムが比較的多く、また、ネギ類の中では最も多くアリシンを含みます。アリシンは体内でビタミンB1と結合することで疲労回復効果があるとされています。

食べ方

薬味にする他、酢漬けやしょうゆ漬けなどに用いられます。炒め物の香り付けには、油とニンニクを鍋に入れてから弱火にかけ、じっくりと火を通すと良い風味が出ます。

選び方

粒が大きく、硬く締まりのあるものが良質です。軽いものは乾燥しすぎています。

保存方法

風通しの良い場所に吊るすと数カ月ほど長持ちします。

調理例

ニンニクの丸ごと素揚げ、ニンニクのホイル焼き、ニンニクのオイル漬け

新ジャガイモ

ナス科ナス属の根菜で、南アメリカのアンデスが原産地。日本では明治以降に本格的な栽培が始まりました。アメリカ原産で粉質系の男爵、イギリス原産で粘質系のメークインの他、たくさんの品種があります。
収穫時期は春と夏の2回あり、5~6月に出回る掘りたてを新ジャガイモ(新ジャガ)と言います。新ジャガはやわらかく、皮ごと食べることができます。春の新ジャガは、鹿児島県や長崎県などの九州地方が主な産地です。

栄養

デンプン、ビタミンC、カリウムを多く含んでいます。ビタミンCはデンプンに包まれているため、保存や加熱で壊れにくいのが特徴。

食べ方

男爵など粉質のものは、ほくほくしているので茹でて粉ふきいもやマッシュポテト、コロッケにおすすめ。
メークインなど粘質のものは、肉質がなめらかで煮くずれしにくいので、煮物や煮込み、炒め物に向いています。

選び方

芽が出ておらず、重量感のあるものが新鮮です。皮がなめらかでしなびていないものを選びましょう。

保存方法

新聞紙で包んで風通しの良い冷暗所へ置きます。

調理例

新ジャガのロースト、新ジャガのガーリックバターソテー、新ジャガと新タマネギのポテトサラダ

ワラビ

コバノイシカグマ科ワラビ属の多年生シダで、日本全国の日当たりの良い草地や土手に自生し、春に出る若芽を食用とします。
4月から6月にかけて南から北へと産地が北上し、関東・東北で旬を迎える5月が出荷量のピークです。山形県は生産量日本一で、天然ものも多く出回ります。

栄養

低カロリーで食物繊維が多く、ビタミン類ではβーカロテンと葉酸を多少含んでいます。地下茎はデンプンを多く含み、ワラビ粉の原料とされます。

食べ方

アク抜きをしてから調理します。生のワラビに重曹をまぶし、沸騰した熱湯をかけてそのまま冷まします。水洗いしてから、おひたし、みそ汁の具、山菜おこわなどに利用します。
茹でてから天日干しにすると保存食にもなります。

選び方

産毛がたくさん付いているものが新鮮です。茎は緑色で太く短いものが良質。首が上を向く前の垂れているものがやわらかく食べごろです。

保存方法

アク抜きをして水に浸した状態で冷蔵庫で保存します。毎日水を取り替えて1週間程度で食べ切りましょう。

調理例

ワラビのおひたし、ワラビと厚揚げの煮物、ワラビ入り炊き込みご飯

5月が「名残」の野菜

春から初夏へと季節が移る5月。新タマネギやサヤエンドウなど、春の旬野菜が名残の時期を迎えます。その味わいを食べ方や選び方とともに紹介します。

5月が名残の野菜

新タマネギ

ヒガンバナ科ネギ属の野菜で、中央アジアが原産地です。日本では明治以降に栽培が始まりました。
収穫期は春と秋の2回あり、貯蔵ものも含めて周年で出回っていますが、収穫後にすぐ出荷されるのが新タマネギです。3~5月に出回る早生種の新タマネギは、辛みが少なく、皮がやわらかでみずみずしいのが特徴。
主な産地は、佐賀県、北海道、兵庫県、香川県などです。

栄養

炭水化物の他、ビタミンCが比較的多く含まれています。香り成分の硫化アリルにはビタミンB1の吸収を助け、新陳代謝を活発にしてくれる働きがあります。

食べ方

新タマネギは、生食にも向いています。薄切りにして水にさらすと辛みが抜けて食べやすくなります。

選び方

皮にツヤがあり、表面に傷がなく、重みのあるものが良質です。頭部が締まっているものを選びましょう。

保存方法

新タマネギは水分が多く傷みやすいです。ネットに入れて風通しの良い冷暗所に置く場合は、2~3日保存できます。
もしくは、キッチンペーパーで包んでポリ袋に入れて冷蔵庫で保存しましょう。野菜室は湿度が高めなので冷蔵室が適しています。

調理例

新タマネギのスライスサラダ、新タマネギのマリネ、新タマネギの丸ごとレンジ蒸し

サヤエンドウ

マメ科エンドウ属の緑黄色野菜で、中央アジアから中近東地域が原産地です。古代ギリシャ・ローマ時代から栽培され、日本には7~8世紀ごろに渡来しました。サヤエンドウとして栽培され始めたのは江戸時代です。
エンドウを早採りしてさやごと食べるもので、さやが大きい「大さや種」と小さい「絹さや種」があります。4~5月が旬で、福島県、愛知県、茨城県などが主な産地です。

栄養

たんぱく質、カロテン、ビタミンB1、B2、C、食物繊維が多く含まれています。

食べ方

ヘタと筋を除いてから茹でて食べます。

選び方

全体が鮮やかな緑色で、ハリがあるものが新鮮です。キヌサヤは、豆が生育していないものが良質です。

保存方法

ビニール袋に入れて冷蔵庫で1~2日保存できます。鮮度が落ちやすいので早めに茹でて食べましょう。

調理例

サヤエンドウと卵の炒め物、サヤエンドウと鶏ささみのごま和え、サヤエンドウと豆腐のサラダ

多くの野菜が出回る5月、ベジ料理で食卓充実

初夏の陽気が広がる5月は、野菜がぐんとおいしくなる季節です。
夏野菜の「走り」である夏ナスやズッキーニ、ミョウガなどは、みずみずしく爽やかな味わいで、料理に取り入れると食卓にも夏の訪れが感じられるでしょう。また、5月に出荷量が増えるグリーンアスパラガスや春トマト、新ジャガなどの「盛り」の野菜は、栄養価が高く価格も安定し、さまざまな料理に活用できます。そして、新タマネギやサヤエンドウなどの春野菜は「名残」を迎え、出回り始めた時期と比べると価格も手頃に。
多彩な旬野菜がそろう5月は、ベジ料理のバリエーションを増やす絶好のチャンスです。

5月旬ベジのラタトゥイユ

旬野菜の夏ナス、ズッキーニ、春トマト、新タマネギ、ニンニクを使ったラタトゥイユ

参考書籍
からだにおいしい野菜の便利帳(板木利隆監修|高橋書店発行)
草土花図鑑シリーズ4 花図鑑 野菜+果物(芦澤正和、内田正宏、小崎格監修|草土出版発行)
新食品成分表FOODS2023(新食品成分表編集委員会編|東京法令出版発行)

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