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加工向け野菜に求められるのは、歩留まり?GAP?【バイヤーが欲しがる青果物#4】

加工向け野菜に求められるのは、歩留まり?GAP?【バイヤーが欲しがる青果物#4】

青果物の市場は、幅広い青果物を少量ずつ扱う飲食関係、家庭向けの青果物を販売するスーパーマーケット関係、サラダやお弁当に使用される加工野菜を扱うコンビニ関係など多岐にわたる。そうした中、どの売り先に向けて青果物を作るか、どの市場と相性が良いのかを見極めることが、販路開拓の鍵を握ると言えるだろう。各市場のバイヤーに、それぞれ求める生産物の特徴を聞く本連載。第4回では、青果物卸を行う横浜市場センター株式会社でサラダや惣菜、お弁当向けの加工野菜を担当する村松靖晃(むらまつ・やすあき)さんに話を聞いた。

■横浜市場センター株式会社プロフィール

横浜市場センター株式会社 _ 横浜丸中グループ および他 3 ページ - 個人 - Microsoft​ Edge 2025_02_12 5_56_55 神奈川県横浜市に本社を構える横浜丸中グループ。横浜市中央卸売市場の指定卸売会社である横浜丸中青果株式会社が産地で集荷した青果物を販売することを目的として2000年に設立。市場から仕入れた青果物を、首都圏を中心とした全国の量販店・コンビニ・外食・中食・総菜工場などに販売するほか、近年は、産地と直接契約し、出荷全量を販売に結び付ける「畑まるごと買い」にも力を入れる。

デイリーメーカー向けの加工業界の変化

-村松さんの部署では主にどのようなところ向けの青果物を扱っているのでしょうか。

前回、弊社の相澤からコンビニの店頭に置かれる青果物を扱っているという話があったかと思います。私どもの部署では、主にコンビニの店頭に置かれたサラダや惣菜、お弁当を作っているデイリーメーカー(ベンダー)と呼ばれる工場向けに青果物を販売しています。

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-コンビニのお弁当などは各社の企業努力もあり伸びているイメージですが、近年、どのように需要が推移しているでしょうか。

地域によって事情は変わってきますが、近年はコロナウイルスの感染拡大によって、2割ほど売上が減少した年もありました。詳しい内容でいうと、住宅地近辺のコンビニでは中食の需要もあり微増しましたが、緊急事態宣言やその後の在宅ワークが進んだことで、オフィス周辺でのコンビニ需要は減少し、売上全体としては落ちていったイメージです。

現在は、コロナ直後に比べると戻ってきたものの、伸びているかと言われるとそうではなく、全国的には横ばいで推移しています。

それでも、京都府だけは例外的に大幅な伸びを見せています。皆さんも想像される通り、これはインバウンド需要の影響が大きく、海外からの旅行者が多く訪れているため、府全体での消費量が増加しているからと考えられます。

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筆者が仕事で京都を訪れた際も多くの外国人観光客で溢れていた

加工業界で扱われる青果物について

-ここからはお弁当などでよく扱われる青果物について伺いたいと思います。現在の取り扱い品目上位はどのようなものがあるのでしょうか。また、変わった品目は扱われていますか。

私どもの扱っている数量で言うと、主に袋やカップのサラダ、惣菜などで使われるキャベツが最も多いです。次いで、同様の用途やサンドウィッチで使用されるレタス類。それに任イン、ダイコン、長ネギが続きます。特に取扱量が多いキャベツは、日量約10トンの納品があります。

変わった品目でいうと、今だとルッコラやバジルを扱っています。コンビニは、新商品など商品の入れ替わりも多いので、それに伴って細かい品目の入れ替わりがよくあります。

-加工向けだとGAPの取得を必要とする企業もあると耳にしますが、村松さんの部署ではどうでしょうか。

おっしゃる通り、全部が全部GAPが必要である訳ではありませんが、求められる企業さんもあります。むしろ、私どもの取引先では、求められるケースの方が多いです。

それに伴い、GAPを取得していない産地は取り扱い数量が減少傾向にあり、既にGAPを取得している産地や生産者、GAP取得に前向きな産地や生産者との取引が自然と増えています。

-輸入品目でいうと取り扱い品目や市場はどのように変化しているのでしょうか。

輸入で言うと、むきタマネギやニンジン、パプリカがあります。どうしても、各国の方針もあり海外への輸出を視野に入れた大規模な生産が行われているので、日本よりも効率良くコストを抑えて生産しています。その分、国産に比べて価格が低いです。また、輸出を見越して生産しているのでグローバルGAPを取得している分、GAPを必要としている取引先にも出荷ができるので扱いやすくなってきます。

その一方で、為替の影響や物流費の高騰などで輸入と国産の価格差が縮まりつつあるので、ひと昔前よりは国産の需要は伸びてくるのではと思います。

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カットキャベツ

加工業界で求められる青果物について

-次に業界で求められる青果物についてお聞きします。サラダや惣菜、お弁当などで、昔に比べて取り扱い数量が伸びた、又は伸びている品目はあるのでしょうか。

基本的にそこまで取り扱い品目に変化は見られませんが、唯一、青ネギや葉ネギは昔に比べて増えています。

従来、西日本で多く食べられてきた品目でしたが、近年はうどんの上に乗せる薬味として東日本でも食べる文化が定着してきました。それに伴って、10年前は九州や四国に産地がある程度でしたが、近年では関東や東北、北海道にも、新たな産地が形成されてきています。

-実際に業界で求められてたり、現在、必要としていたりする具体的な品目はあるのでしょうか。

私の部署で「安定した需要があるものの、生産量的に調達できる取引先が足りていない、つながりが少ない」ところでいうと、GAP認証のある青ネギやニンジン、長ネギが挙げられます。これらの品目は通年して安定した需要があるものの、気候変動の影響を受けた時にどうにもならないほど物が無くなる傾向にあります。

ニンジンは大きな産地が国内に何箇所かあるので、全体としての生産量はあるとは思いますが、GAPを持っている生産者となると、そう多くはありません。

また、青ネギに関しては東北や北海道の産地形成がされつつあるものの、現状は主要産地が九州や四国になるので、8〜10月に掛けて気温が高すぎて成長が止まってしまいます。それに伴い、毎年のように物が足りなくなっています。北海道や東北、北陸などでその時期に栽培されつつありますが、まだまだ足りていないので、需要はあるかと思います。長ネギも青ネギ同様で、夏時期の関東での生産が難しいからという話ですね。

もちろん、無い時期だけ欲しいといった話ではなく、そういったタイミングで出荷できる産地と他の時期においても取引したいなと思います。

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筆者が別件で加工工場を取材した際に輸入の青ネギの入荷が増えているという話がでた

生産者から寄せられた質問をぶつけてみた

-ここからは、あらかじめ生産者から募った質問に回答いただきたいと思います。まずは、加工関係に出荷する場合の最低出荷量について教えてください。

品目によって変わるので一概には言えませんが、キャベツなどの大型野菜と呼ばれる品目では、キロ単価的にも厳しい部分があるので、トラックに乗せる積載効率で単価を合わせるようにするしかありません。なので、どうしても生産規模や生産量があって、量を動かせるという話でないと難しいです。

その一方で、先ほど話にでたルッコラやバジルのようなキロ単価の高いハーブ類でしたら、ヤマトなどの物流を使っての納品は可能です。実際、うちの部署でも10トン車満載で運んで来る品目もあれば、宅急便で届く品目もあります。

ただ、弊社の場合でしたら、横浜中央卸売市場に関連会社があるので、横浜の市場まで運べる物流があるよとなれば柔軟に話ができる部分もあるかと思います。

-加工向けに販売したいとなったら何を意識して栽培したらいいでしょうか。

1番は取引先に喜ばれる野菜。すなわち、歩留まりが良い野菜です。

例えば、キャベツ1つにしても品種によって、ふわふわのキャベツがあれば、外葉が少なくて中まで詰まっているキャベツがあります。ご想像のように、この2つでは、加工した時に1玉で3つ分のサラダができるのと、4つ分のサラダができるのでは、1玉当たりの作業効率が変わります

もちろん、その土地にあった品種や耐病性も重要ではありますが、私どもの部署では、加工向けの工場がお客さんになるので、そういった加工に適した品種選定をして作っていると取引に繋がりやすいです。

-生産者に求めるスキルだったりはありますか。

私どもの部署でいうと、GAPに付随したデータを必要とする取引先があります。加工向けだと、何か問題が起きた時に生産から物流までどこで問題が起きていたのか分かる必要があります。

必ずしも取引先すべてが必要というわけではありませんが、生産管理のデータなどを残していて、いつでも頂ける状態になっていると助かります。

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右に見える段ボールは全てキャベツで右奥にずらっと並んでいる(横浜市場センターにて)

今後の加工向けの業界は

-最後に今後予想される業界の動きについて教えてください。

コンビニ業界では、新規店舗の増加がこれ以上見込まれない状況にあり、サラダや惣菜、お弁当といった商品の販売においても成長の限界が感じられます。しかし、市場の伸びは限界を迎えつつも生産者にとっては良い方向に進むと考えられます。

ニュースでも報道されているように、これまで袋入りのカットキャベツが100円といった一定価格で販売されていたような価格設定を変えていくと、業界最大手に位置する企業が表明しました。現在はまだ検討段階ではあるものの、業界全体で価格変動制、いわゆるダイナミックプライシングに対する検討が進められており、商品価格が需要と供給、あるいは市場環境に応じて柔軟に変動する方向へとシフトしていくのではと思います。

このような価格改定の流れは、将来的には契約単価にも影響を与える可能性があり、適正価格の設定によって生産者が安定した生産を維持できるようになることが期待されます。もし、適正な価格での取引が成立しない場合、生産者側の負担が増加し、結果的には供給が不安定になるリスクも存在します。そのため、売価の見直しが今まさに進行中であり、生産者と流通業者の双方にとって持続可能な契約価格の形成が進むことが重要とされています。

価格の変動が生活者や消費者にどのように受け入れられるかという課題も残る一方で、適正な取引価格を実現するための取り組みが、業界の健全な発展に寄与する可能性が高いといえるでしょう。

取材協力

横浜丸中グループ
横浜市場センター株式会社

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