サツマイモは万能の作物
中野さんが就農したのは2021年。「起業したい」との思いを抱き、将来性を見込んで選んだのが農業だった。現在の面積は6.5ヘクタールで、品目はサツマイモ。加工して付加価値を高めることができる点に期待した。
読みは当たった。洋菓子の材料や天ぷら用の輪切り、サイコロ状のカットなど、さまざまな用途のために加工業者が買い取ってくれた。自ら干し芋も製造している。中野さんは「こんな万能の作物はない」と話す。
今後の展開として視野に入れているのが、OEM(相手先ブランドによる生産)だ。対象は農家。サツマイモ農家の中には、規格外品などの扱いに困っている人がいる。その加工を受託して、干し芋を提供することを計画している。

中野さんが作った干し芋
戦略的に選んだ有機栽培
漠然と何かを始めたりせず、作戦を練ったうえで一手を打つ。就農に際して最も大切な一点だ。その一環として中野さんが選んだのが有機栽培だった。
「代々続く農家のサツマイモと、新規就農者のサツマイモのどっちを買いますか。歴史には勝てない」。中野さんはそう話す。「ではどうすれば勝負できるか」。その点を考えて、有機栽培を選択した。いわく「うちは戦略的有機」。
最初に借りた畑の0.7ヘクタールを慣行栽培と減農薬、有機栽培の3つに分け、生育に差が出るかどうかを1年目に確かめてみた。結果は「それほど違いがない」。それを踏まえ、2年目から有機栽培へとかじを切った。

有機JASの認証マーク
戦略的有機という言葉には注釈が必要だろう。代々続く農家に負けないために選んだのは事実。だがいざサツマイモを販売してみると、日持ちのよさを含め、品質の高さを評価されることが多いことに気づいた。