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起業家的な発想で始めた農業 原動力は「支えてくれた人たちへの恩返し」

吉田 忠則

ライター:

連載企画:農業経営のヒント

起業家的な発想で始めた農業 原動力は「支えてくれた人たちへの恩返し」

事前にいくら緻密な計画を立て、どれだけ周到に準備して起業しても、必ず予想外のことが起きる。農業の場合、そんなとき力になってくれるのが地域の応援。前回に続き、千葉県野田市で就農した中野あずささんを取り上げたい。

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サツマイモは万能の作物

中野さんが就農したのは2021年。「起業したい」との思いを抱き、将来性を見込んで選んだのが農業だった。現在の面積は6.5ヘクタールで、品目はサツマイモ。加工して付加価値を高めることができる点に期待した。

読みは当たった。洋菓子の材料や天ぷら用の輪切り、サイコロ状のカットなど、さまざまな用途のために加工業者が買い取ってくれた。自ら干し芋も製造している。中野さんは「こんな万能の作物はない」と話す。

今後の展開として視野に入れているのが、OEM(相手先ブランドによる生産)だ。対象は農家。サツマイモ農家の中には、規格外品などの扱いに困っている人がいる。その加工を受託して、干し芋を提供することを計画している。

画像1)干し芋

中野さんが作った干し芋

戦略的に選んだ有機栽培

漠然と何かを始めたりせず、作戦を練ったうえで一手を打つ。就農に際して最も大切な一点だ。その一環として中野さんが選んだのが有機栽培だった。

「代々続く農家のサツマイモと、新規就農者のサツマイモのどっちを買いますか。歴史には勝てない」。中野さんはそう話す。「ではどうすれば勝負できるか」。その点を考えて、有機栽培を選択した。いわく「うちは戦略的有機」。

最初に借りた畑の0.7ヘクタールを慣行栽培と減農薬、有機栽培の3つに分け、生育に差が出るかどうかを1年目に確かめてみた。結果は「それほど違いがない」。それを踏まえ、2年目から有機栽培へとかじを切った。

画像2)有機マーク

有機JASの認証マーク

戦略的有機という言葉には注釈が必要だろう。代々続く農家に負けないために選んだのは事実。だがいざサツマイモを販売してみると、日持ちのよさを含め、品質の高さを評価されることが多いことに気づいた。

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