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そうか病の症状や原因は? ジャガイモそうか病とかんきつそうか病の防除方法を農家が解説

鮫島 理央

ライター:

そうか病の症状や原因は? ジャガイモそうか病とかんきつそうか病の防除方法を農家が解説

畑や庭で育てているジャガイモやかんきつ類の果実に、表面がざらついたコルク状の病変ができてしまったことはありませんか? これは「そうか病」と呼ばれる病気で、ジャガイモとかんきつの両方に発生する厄介な病害の一つです。そうか病にかかると、ジャガイモは皮がでこぼこになり、見た目が悪くなるだけでなく、保存性にも影響が出ます。かんきつ類は果皮にひび割れや病斑ができ、品質が低下してしまいます。本記事では、ジャガイモそうか病とかんきつそうか病の違いや発生原因を解説し、それぞれの防除方法や効果的な農薬について詳しく紹介します。

そうか病にはジャガイモそうか病とかんきつそうか病の2種類がある

そうか病は、植物の表面にざらついたコルク状の病変を引き起こす病気の総称で、特にジャガイモやかんきつ類で発生します。ジャガイモそうか病とかんきつそうか病は異なる病原菌によって引き起こされ、それぞれ症状や発生条件が異なります。

ジャガイモそうか病の主な症状

ジャガイモの塊茎(かいけい、いものこと)の表面に特徴的な病変を引き起こし、見た目の品質を低下させます。具体的には、塊茎の表皮にかさぶた状の病斑が現れ、表面がざらついた質感になります。これらの病斑は、直径5~10ミリメートル程度のコルク化したあばた状のものが多く見られます。
また、病斑が現れたジャガイモは市場価値がなくなる上、貯蔵中に腐敗しやすくなります。

ジャガイモそうか病の原因や発生する条件

ジャガイモそうか病は、ストレプトマイセス属の放線菌が原因で発生する病気です。感染の主な経路は、汚染された土壌や種いもを通じた伝播であり、一度発生すると長期間土壌内に留まりやすいことが特徴です。

そうか病が発生しやすい環境にはいくつかの要因があります。まず、土壌のpH値が関係しており、特にpH6.5以上のアルカリ性に傾いた土壌では発生リスクが高まります。また、土壌の乾燥も発生を助長する要因の一つです。特に、6月中旬から7月中旬の塊茎の形成期から肥大初期にかけて、地温が高く乾燥した環境が続くとそうか病が発生しやすくなります。

さらに、連作を行うと、土壌中の病原菌が増殖しやすくなり、そうか病の発生リスクが高まります。また、未熟堆肥の施用も影響を与えることがあります。未熟堆肥を施すと、土壌の酸度が変化し、そうか病の発生を助長する可能性があるため、完熟堆肥を使うよう心がけましょう。

かんきつそうか病の主な症状

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病斑が現れた果実 引用:愛知県公式Webサイト

かんきつそうか病は、かんきつ類の葉、果実、枝に発生する病害で、それぞれの部位によって症状の現れ方が異なります。
新葉が展開する4月から5月にかけて発生しやすく、胞子が葉や果実に付着し、多湿な環境が12~15時間以上続くと感染が広がります。葉に感染した場合、8~16日ほどで症状が現れ、表面にいぼ状の病斑が形成されるのが特徴です。果実では、幼果期に感染が拡大すると、大量の落果が発生し、肥大が阻害されて病斑が残るため、品質の低下につながります。
果実への感染は葉に比べて潜伏期間が長く、発病までに10~15日ほどかかることが一般的です。
また、枝に感染すると枝が枯れてしまうので、早めに取り除きましょう。

かんきつそうか病の原因や発生する条件

かんきつそうか病は、カビの一種であるElsinoë fawcettiiという病原菌が原因で発生します。この病原菌は、すでに感染した葉や枝の表面に付着したまま冬を越し、春になると再び活動を始めます。特に気温が10~28℃の範囲で湿度が高い環境になると、病原菌が胞子を作り、新しい葉や果実に感染を広げていきます。

感染は主に雨によって広がります。雨が降ると、葉や枝の表面に付着していた胞子が飛び散り、周囲の新芽や幼果に付着して病気が広がります。特に、春の4月から5月にかけて、新しい葉が展開する時期に長雨が続くと、感染が広がりやすくなります。また、梅雨の時期も湿度が高く、病原菌が活発になるため注意が必要です。

そうか病、食べてしまっても大丈夫?

そうか病に感染したジャガイモやかんきつ類の果実を食べても、人体に有害な影響が出ることはほとんどありません。ただし、感染した部分は見た目が悪く、味や食感にも影響を及ぼす可能性があります。そのため、調理前に病変部分を取り除くことをおすすめします。

また、感染が広範囲に及んでいる場合や、腐敗が進行している場合は、品質や安全性の観点から、食用としての利用を避ける方が良いでしょう。

そうか病の基本的な防除方法

ジャガイモとかんきつ類では病気の発生条件が異なりますが、どちらも適切な環境管理と予防策を講じることで、そうか病の発生を抑えることができます。

ジャガイモそうか病の防除方法

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ジャガイモそうか病を防ぐためには、土壌の管理が重要です。特に、土壌のpHがアルカリ性に傾くと病原菌が活発になるため、事前に土壌の酸度を確認するようにしましょう。なお、ジャガイモは弱酸性から中性の土壌を好むため、苦土石灰などの資材をあまり使わないようにすると良いでしょう。

また、無病の種いもを使用することで、初期感染を防ぐことができます。種いもを選ぶ際は、傷や病斑がないものを選び、健全なものを植え付けるようにしましょう。

さらに、同じ畑でジャガイモを連作すると病原菌が蓄積し、そうか病の発生リスクが高まるため、他の作物との輪作を取り入れ、土壌の病原菌密度を低減させることも効果的です。

かんきつそうか病の防除方法

かんきつそうか病を防ぐためには、適切な剪定を行い、風通しを確保することが重要です。枝葉が密集していると湿度が高くなり、病原菌が繁殖しやすい環境が整ってしまうため、定期的に枝をすいて、風通しを良くしましょう。

また、発病した枝葉は病原菌の感染源となるため、早めに取り除き、病気の拡大を防ぎましょう。さらに、窒素肥料を使い過ぎると枝葉を弱くし、病気のリスクを高める要因となってしまいます。適切な施肥管理を心がけ、健康な樹勢を維持することも病害防除のポイントとなります。

そうか病の治療や防除に効果的な農薬

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そうか病の治療や防除に使うことができる農薬を、ジャガイモとかんきつ類それぞれに分けて紹介します。
農薬を使う際は、どちらのそうか病に使うことができる農薬なのかをしっかり確認してから使いましょう。

なお、ジャガイモそうか病の農薬は、基本的に植え付け前にしか使用できません。植え付け後に発病しても、治療する薬剤はありませんので注意してください。

ジャガイモそうか病に使うことができる農薬

ヨネポン水和剤
ヨネポン水和剤は、ジャガイモの種芋に吹き付けて使用します。植え付け前に殺菌することで、そうか病の発生リスクを抑えることができます。

石原フロンサイド粉剤
石原フロンサイド粉剤は畑の土に混ぜ込んで使う農薬です。土壌の殺菌や消毒をする薬剤なので、発病後の治療には使えないことに注意しましょう。

ネビジン粉剤
ネビジン粉剤も植え付け前に畑の土に混ぜ込んで使う農薬です。ジャガイモの他にも、ダイコンやブロッコリーの根コブ病の予防などに使うことができます。

かんきつそうか病に使うことができる農薬

トップジンM水和剤
トップジンM水和剤は、みかんのそうか病に使うことができます。速効性と残効性を併せ持ち、強い浸透力もあり、植物内部に侵入した病原菌を死滅させることができます。

Zボルドー
Zボルドーはかんきつ類に使用することができ、有機栽培での使用も許された農薬です。耐性菌出現リスクも低く、そうか病以外の幅広い病気にも有効なので、使いやすい農薬です。

GFベンレート水和剤
GFベンレート水和剤は、みかんのそうか病に使うことができます。浸透移行作用により病原菌の侵入を防ぐ予防効果と、侵入した病原菌を退治する治療効果を兼ね備えています。

まとめ

そうか病はジャガイモやかんきつ類に発生し、作物の品質や収穫量に影響を与える病気です。ジャガイモは塊茎にかさぶた状の病変ができ、見た目が悪くなり、保存性も低下します。かんきつ類は葉や果実に病斑が発生し、特に幼果期の感染が品質低下や落果の原因となります。

防除には、適切な土壌管理や栽培環境の調整が重要です。ジャガイモはpH管理と輪作、かんきつ類は剪定と適切な施肥で病気を抑えます。また、発病前の予防的な農薬散布も効果的ですが、耐性菌対策のために適切なローテーションを行うことが大切です。

そうか病は一度発生すると防除が難しいため、日頃の管理と早期対策が欠かせません。ぜひ本記事を参考にして予防を徹底し、健康な作物を育ててください。

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