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米価上昇と増産と直接支払い、沸騰するコメ問題の先に待つ水田政策見直し

吉田 忠則

ライター:

連載企画:農業経営のヒント

米価上昇と増産と直接支払い、沸騰するコメ問題の先に待つ水田政策見直し

しばらく膠着状態が続くかに思われた「令和の米騒動」が、にわかに動き始めた。米価の抑制をミッションに自民党の小泉進次郎氏が新たな農相に就くとともに、石破茂首相はコメを5キロ3000円台に下げると明言した。事態の行方は、2027年度に迫った水田政策の見直しに影響する可能性がある。

小泉氏が農相に就任

江藤拓前農相の不用意な発言が、局面を変えるきっかけになった。

「コメは買ったことありません。支援者の方々がたくさんコメをくださるので、まさに売るほどあります。私の家の食品庫には」

5月18日に佐賀市での講演でこう語った。米価がなかなか下がらないことについて、江藤氏は「大変責任を感じています」とも話している。コメはいくらでもあるのに世間は騒ぎすぎだと言いたかったわけではない。

それでも高米価への不満とコメ不足への懸念が消費者の間に漂う状況を考えれば、配慮に欠ける言葉だったのは間違いない。野党から責任を問う声が強まる中、21日に辞表を提出した。

代わって起用されたのが、10年前に自民党農林部会長を努めた経験のある小泉氏だ。21日夜の記者会見で「結果を出すことで政治・行政への信頼につなげたい」と語り、米価の抑制に向けて決意を表明した。

石破首相がコメの増産を表明

一方、21日には石破首相も米価に関して思い切った発言をした。「(5キロ当たり)3000円台でなければならない」。党首討論で、国民民主党の玉木雄一郎代表に問われ、目指す水準について明言した。

この日の首相には他にも注目すべき発言があった。まず増産にかじを切るべきだとの考えを示した。需要に合わせて生産量を調整するコメ政策の修正を示唆する言葉だ。

これと併せ、首相はコメ農家に対する直接支払いの補助金を創設することにも前向きな姿勢を示した。増産すれば米価が大きく下がる可能性がある。それでも営農を継続できるようにするためだろう。

高止まりする米価への世論の批判や農相の交代、米価抑制への決意表明と動きがあまりに多く、焦点を絞るのは難しい。ただ先行きを考えるうえで、直接支払い導入の可能性を示唆したことは、大きな意味を持つ。

主食米への直接支払いは、旧民主党政権が戸別所得補償制度の名称で導入した。だが2012年の自民党の政権復帰に伴い、段階的に廃止された。代わりに自民党が実施したのが飼料米への補助金の拡充だった。

異常気象と農家減という構造問題

米価高騰という短期的な課題への対処から、思わぬ形でコメ政策全般に関わる論点が浮上した。直接支払いはそれほど重いテーマだ。

これから議論の対象になる直接支払いは、旧民主党の戸別所得補償とは制度の目的がまったく違う。当時の制度は生産調整への協力が条件になっており、コメを減産することに主眼が置かれていた。

これに対し、石破首相が言及した直接支払いは、コメを増産することを前提にしている。

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