高温障害とは?
高温障害とは、稲が適正な気温を超えた高温にさらされることで、生育や収量、品質にさまざまな悪影響を及ぼす障害のことです。近年では地球温暖化の影響もあり、夏季に気温が35℃を超える猛暑が続くと頻繁に発生しています。
稲の高温障害の代表的な症状には以下のようなものがあります。
・充実度の低下(粒が薄くなる)
・胴割粒の増加
・止葉枯れ症
白未熟粒(乳白米)

農業協同組合新聞より画像を引用
登熟期の高温により、米粒の胚乳部分に十分なデンプンが蓄積されず、米粒が白く濁る症状です。見た目が悪化するだけでなく、味や食感にも悪影響を及ぼします。
充実度の低下(粒が薄くなる)
高温によって登熟期間が短くなると、米粒が十分に膨らまず、偏平で縦溝が深くなる現象が起こります。これにより、米の外観品質や精米歩合が低下します。
胴割粒の増加
高温条件下で急激に乾燥が進むと、米粒に亀裂が入りやすくなり、割れやすくなる症状が発生します。これが胴割粒と呼ばれ、精米ロスや食味の低下を引き起こします。
止葉枯れ症
水不足や高温が続くと稲の蒸散が過度になり、最上位の葉(止葉)が萎れて枯れ上がる症状です。止葉枯れは稲の光合成を妨げ、登熟不良を招きます。
高温障害の発生時期や条件
稲の高温障害は、特に出穂期(開花期)から登熟期(出穂後20日間)にかけて発生しやすく、この時期の気温が重要な要素になります。具体的には、出穂後10~20日間の気温が高いと障害が発生しやすくなり、日中の最高気温が30℃以上、特に32℃を超えると高温障害のリスクが大幅に高まります。夜間でも最低気温が23℃を上回ると稲の呼吸が活発になり、デンプンの蓄積が妨げられてしまうからです。
高温障害を引き起こす要因として、主に以下が挙げられます。
・夜間での高温
・土壌や水の高温化
・乾燥による影響
高温による水不足
高温が続くと、稲の吸水速度が蒸散に追いつかず、水分不足を引き起こします。その結果、葉の気孔が閉じて光合成が停止し、生育が停滞します。
夜間での高温
夜間の温度が高いと、稲の呼吸作用が活発になり、昼間に蓄積したデンプンが消費されます。これにより、穂に運ばれる養分が不足し、乳白米(白未熟粒)が多発します。
土壌や水の高温化
高温が続くことで田んぼの土壌や水温が上昇すると、根の機能が低下します。根が十分に水分や養分を吸収できなくなり、地上部の生育が阻害されます。
乾燥による影響
フェーン現象のような高温で乾いた風が吹くと、急激な水分不足が起こりやすくなります。稲は乾燥から身を守るため、細胞内に糖を蓄える浸透圧調節を行いますが、その結果、デンプンの合成が阻害され、白未熟粒の発生につながります。
稲の高温障害を防ぐ対策方法
適切な水管理
稲の高温障害対策には、適切な水管理が欠かせません。特に、登熟期は水温と地温を適切に保つことが重要です。この期間に効果的なのが間断かん水です。昼間の暑い時間帯は浅く水を張り、夕方以降に水を追加することで地温を下げ、胴割れや白未熟粒の発生を抑えることができます。また、収穫直前まで軽く通水する走り水を行うことで、過乾燥や高温時の根のダメージを防ぎます。これらは手軽に導入でき、効果も比較的短期で得られる対策方法です。
土壌改良を行う
高温障害対策の土台として、土壌改良も重要な要素です。特に作土深を15㎝以上確保し、通気性・保水性・排水性を高めることで根がしっかりと張り、安定した生育が可能となります。堆肥を適度に施用し、土壌中の有機物を増やすことで、稲の生育後半にも安定して窒素が供給され、白未熟粒の発生を抑えることができます。こうした土壌改良は短期的な即効性は低いものの、長期的な栽培基盤の強化につながるため、持続的な高温障害対策として効果的です。
高温障害に強い稲を栽培
近年、温暖化による高温障害に強い品種が多く育成されています。きぬむすめ・こしいぶき・つや姫・とちぎの星などの高温耐性品種は、高温年での登熟不良や白未熟粒の発生を抑え、収量や品質を確保しやすい特徴があります。さらに晩生品種を選び、秋の涼しい時期に登熟させる方法も有効です。高温障害対策としての品種選定は、最も効果が明確で長期的な対策になります。
適切な肥料・資材を使用
高温障害により稲の肥料切れが起きると、登熟不足や品質低下につながります。こうした状況を防ぐには、即効性のある肥料の追肥が重要です。特に、高濃度散布が可能な窒素液肥は、肥料焼けが発生しにくく、無人航空機やブームスプレイヤー等を使って手軽に散布できます。登熟期の肥料不足を素早く補い、登熟歩合の改善、収量や品質の低下を防ぐことができます。この方法は高温障害対策として現場で即効性を求める農家に最適です。
これまでにないおすすめの新しい肥料・資材
CORON(コロン)
CORONは、特に高温障害時の窒素不足を迅速に解消することができる高濃度の液状窒素肥料です。最大の特徴は、通常の液肥に比べて高窒素成分(窒素成分27%)であるにもかかわらず、肥料焼けが起こりにくい点です(※)。希釈倍率は2~5倍(v/v)という高濃度で使用できます。葉面散布のため、肥料成分が葉から直接吸収され、素早く効果を発揮します。
さらに、無人航空機(ドローン)やブームスプレイヤー、動力散布機など、多様な機械散布に対応していることから、大規模な農地でも効率的な作業が可能です。 また、高窒素成分のため、肥料タンクへの補充頻度が減少し、省力化と作業時間短縮につながります。特に稲作において、高温で穂肥が切れて登熟不足が心配される場面に活躍してくれます。
(※)著しい高温かつ日照の強い場合など、葉面散布に不適と考えられる条件下では散布は避けて下さい。早朝もしくは夕刻等の涼しい時間帯に散布してください。
ユートリシャTMN
ユートリシャTMNは、従来の肥料とは全く異なる新しい概念のバイオスティミュラント資材です。有効成分であるメチロバクテリウムという微生物が、空気中の窒素を直接植物が利用できるアンモニウムに変換することで、作物が安定的かつ継続的に窒素を得られる仕組みになっています。 この微生物が葉の気孔から植物内に入り、生育期間中継続的に窒素を供給するため、根からの窒素吸収が不足する環境下でも安定した生育を実現できます。特に生育後半の登熟期の窒素不足を防ぐことで、高温障害による登熟不足や収量低下の回避につながります。
また、土壌に流亡しないため環境汚染のリスクが低く、持続可能な農業に適したクリーンな窒素源として評価されています。散布方法も水で希釈して葉面散布するだけとシンプルであり、微生物の力を活かした自然で環境に優しい農法の実現に寄与します。
TM コルテバ・アグリサイエンスならびにその関連会社商標
Skeepon(スキーポン)
スキーポンは、お酢の主成分である酢酸を利用し、植物の耐乾燥性・耐暑性を同時に強化する新しいタイプの農業資材です。農薬や従来の肥料とは異なり、植物本来の耐乾燥性・耐暑性を引き出して高温や乾燥といった環境ストレスから植物を守ることが特徴です。
具体的には、根からの吸収により植物の高温耐性を高め、夏の高温や日照りによる枯死や生育停滞を防ぎます。また、夜温が高い夏の環境下においても登熟歩合を改善し、農業生産性を高めます。 また、植物本来の力を引き出す資材のため、環境への影響にも配慮されており、環境配慮型農業に最適です。定植前の育苗段階から使えることに加えて、夏季の酷暑期を迎える前に使用することで生産性の安定化にも貢献します。
まとめ
近年の猛暑による稲の高温障害は、収量や品質の低下につながる深刻な問題です。しかし、適切な肥料や資材を活用することで、短期間で効果的に被害を軽減することが可能です。特にCORON・スキーポン・ユートリシャTMNなどの新資材は手軽に導入できるため、栽培時の高温対策として最適です。肥料切れや水不足など、急なトラブルへの備えとして、ぜひ導入を検討してみてください。