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6月が旬の果物は? 「走り」「盛り」「名残」で、夏に向かうひとときを楽しむ

sato tomoko

ライター:

6月が旬の果物は? 「走り」「盛り」「名残」で、夏に向かうひとときを楽しむ

全国的に梅雨入りした6月。大玉スイカやブドウなど夏の果物が出回り始め、サクランボが短い旬の盛りを迎え、ビワのシーズンは早くも終盤に向かっています。昔ながらのウメやクワの実の収穫もこの時期。このように農作物には旬があり、旬にはさらに「走り(はしり)」「盛り(さかり)」「名残(なごり)」の三つの時期があります。国産フルーツを味わい尽くすヒントをお届けします。

旬とは?

果物の旬とは、その果物の味が最も良い食べごろの時期で、栄養価も高くなります。収穫がピークを迎え、スーパーや直売所などに出回る量も多くなるので安い価格で、おいしく栄養価の高い状態の果物を手に入れることができます。また、貯蔵されて食べごろを迎えた果物も、その時期が旬と言えるでしょう。

6月が旬の果物をカット

旬の走りの果物は、みずみずしくフレッシュな味わいを生かして生食や水分を生かした調理法がおすすめです。盛りはベストタイミングで、さまざまな食べ方で楽しめます。名残の果物は味が凝縮され水分が少なめなので加熱調理にも向いています。

6月が「走り」の果物

6月になると果物売り場には夏のフルーツが並び始めます。みずみずしさと爽やかな酸味、軽やかな甘さが魅力の走りの果物は、生食はもちろん、冷たいドリンクやサラダにもおすすめ。6月に出始めるプラム、モモ、大玉スイカ、デラウェアのそれぞれの特徴やおいしい食べ方をご紹介します。

6月が「走り」の果物

プラム(スモモ類)

スモモはバラ科サクラ属の果樹とその果実で、中国を原産地とする日本スモモ(プラム)とコーカサス原産の西洋スモモ(プルーン)に大別されます。プラムは主に生食用として栽培され、プルーンはドライフルーツなどの加工品でも知られていますが、生食用にも栽培されています。出荷時期はプラムが一足早く、大石早生(おおいしわせ)などの早生品種が6月ごろから店頭に並びます。品種によって味わいが異なり、9月下旬ごろまで楽しめます。山梨県はスモモの生産量が全国一位です。

栄養

生果は、カロテン、カリウム、葉酸、ペクチン(食物繊維)、微量のビタミン類のほか、皮にアントシアニンを多く含んでいます。乾燥プルーンは生果と比べてカロテンのほか、鉄、カルシウム、マグネシウム、リンなどのミネラルが豊富です。

食べ方

主に生食する他、ジュース、ジャムなどに加工します。好みで皮ごと食べることもできます。

選び方

皮に張りと弾力があり、全体的に色付いているものを選びましょう。甘い香りがしたら熟しているサインです。果皮に付着している白い粉はブルームという物質で、水分の蒸発を防ぐ働きがあり鮮度の良さを示します。

保存方法

未熟な果実は常温で追熟させます。熟した果実は乾燥しないように紙袋などに入れて冷蔵庫の野菜室で保存します。できるだけ早く食べ切りましょう。

調理例

スモモとナッツのサラダ、スモモとヨーグルトのマリネ、セミドライスモモ

モモ

バラ科サクラ属の果樹で、中国が原産地とされ、6000年以上前から栽培されていると言われます。日本でも弥生時代には食べられていたと推測されており、古くから親しまれてきた果物です。日本各地でさまざまな品種が栽培され、多汁で柔らかい白肉種、かためで酸味もある黄肉種に大別されます。黄肉種はかつて缶詰用として主に活用されていましたが、近年は甘みの強い生食用品種が増えてきました。6月ごろから「ちよひめ」「竜門早生(りゅうもんわせ)」などの極早生品種が出回り始め、ほんのり香る甘さと、みずみずしい味わいが楽しめます。早生のモモは、山梨県、和歌山県が主な産地。7~8月の盛夏に向けて、福島県など全国各地の産地から品種リレーで出荷が続きます。

栄養

カリウム、食物繊維、ナイアシンのほか、ポリフェノールの一種であるカテキンを含んでいます。

食べ方

主に生食で味わいますが、ジュース、ジャム、洋菓子などにも利用できます。

選び方

甘い香りがあり、皮のうぶ毛がきれいで、傷や押し跡のないものが良品です。果実はとてもデリケートなので手で触れずに見て選びましょう。

保存方法

未熟でかためのものは常温に置いて追熟させます。冷やし過ぎると風味が損なわれるので、食べる直前に冷蔵庫で軽く冷やすと良いでしょう。

調理例

モモのカプレーゼ風サラダ、モモとハーブのスムージー、モモの軽いソテーバニラアイスクリーム添え

大玉スイカ

ウリ科スイカ属の一年草で、アフリカ南部のカラハリ砂漠が原産地とされています。大玉種と小玉種があり、夏本番を前にして大玉スイカが出回り始めます。小玉スイカは1~3kgであるのに対して、大玉スイカは5~10kgが一般的で、それ以上に大きいものもあります。大玉スイカは、品種や栽培方法によって差がありますが、総じて皮が厚めでシャリ感が強く、ジューシーな味わいが特徴です。この時期の主な産地は、千葉県、熊本県、茨城県など。店頭では、手に取りやすい1/8カットで販売されることが多くなっています。

栄養

スイカの90%以上は水分で、水分補給に適しています。利尿作用や体を冷やす効果もあります。カロテン、カリウム、リコピンを含んでいます。

食べ方

生食が最もおいしいですが、ジュースにもおすすめ。冷やすと甘みが増します。

選び方

果皮に張りとツヤのあるものが新鮮です。見た目よりも重いものを選ぶと、水分と糖分を多く含み、おいしく感じられる可能性が高いです。カットスイカは、果肉がくっきりとした赤色で種が黒く、果肉が締まっているものが良質です。果肉と果皮の色の境目がはっきりしているかも確認しましょう。

保存方法

丸のままなら風通しの良い冷暗所で10日間ほど保存できます。冷やし過ぎると甘みが落ちるので、食べる1~2時間前に冷蔵庫へ入れましょう。カットしたものは切り口をラップで覆って冷蔵庫で保存します。

調理例

天然塩スイカ、スイカの生ハム巻きピンチョス、スイカのグラニテ

デラウェア

ブドウはブドウ科のつる性植物で、西アジアや北アメリカが原産地。約5000年前から栽培されてきたと言われています。世界ではワイン用が生産の約8割を占めますが、日本では生食用が主流です。中でもデラウェアは、種なしで皮が薄く、食べやすい定番品種。果汁が多く糖度が高いことが特徴です。ハウス栽培のものが5月から、露地ものは6月下旬から8月ごろまで出回ります。6月は島根県や大阪府などで出荷が本格化。7月ごろから山形県や山梨県などの主要産地が加わって夏本番を迎えます。

栄養

ブドウ糖が疲労回復を助けます。カリウム、カルシウムの他、皮にはポリフェノールの一種で抗酸化作用のあるアントシアニンが多く含まれています。

食べ方

生食する他、ジュースや干しブドウにも利用できます。皮が薄いので丸ごと食べることも可能です。

選び方

濃い赤紫色の粒が密に房に付いていて、粒に張りがあるものを選びましょう。軸が青々としていて、果皮に白い粉(ブルーム)が付着しているものが新鮮です。ブルームは水分の蒸発を防ぐために果皮から分泌される天然の物質です。

保存方法

ビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室で保存します。2~3日を目安に食べ切りましょう。

調理例

デラウェアのつぶシャーベット、デラウェアとマメ類のサラダ、デラウェアのつぶつぶゼリー

6月が「盛り」の果物

梅雨の合間に楽しむサクランボ、濃厚な甘みが魅力のマンゴーなど、多彩な果物が店頭に並びます。旬の「盛り」に生で味わうのはもちろん、料理にも取り入れてはいかがでしょう。梅干しや梅酒などを手作りする「梅仕事」も6月の風物詩です。

6月が「盛り」の果物

ウメ(青梅)

6月はウメの収穫が最盛期を迎える時期。ウメの実が熟すころに降る雨を「梅雨」と言うように、季節感を強く感じさせる果実です。ウメはバラ科サクラ属の樹木とその果実で、中国が原産地とされています。観賞用・薬用として日本へ伝わり、江戸時代には果実が栽培され、加工品が流通するようになりました。収穫時期の違いで「青梅」と「完熟梅」に分けられ、青梅は肥大した未熟果で梅酒などに向き、完熟梅は黄化してから収穫したもので梅干しやジャムに向いています。また、大きさによって、小ウメ、中ウメ、大ウメに分類されます。全国各地で栽培されていますが、特に和歌山県は「紀州南高梅」の産地として有名で、生産量は全国の6割以上を占めています。

栄養

クエン酸やリンゴ酸などの有機酸が豊富で、疲労回復や食用増進の効果が期待されます。また、ビタミンEも多く含んでいます。

食べ方

梅漬け、梅干し、梅酒、梅酢などに加工します。未加工のウメは中毒を起こす可能性があるため、生食は厳禁です。

選び方

青梅は果皮に張りがあり鮮やかな緑色をしているものを選びます。梅干し用には果皮が黄色く色付いたものを選ぶか、購入後に追熟させて用いると良いでしょう。

保存方法

冷暗所に置き、できるだけすぐに利用しましょう。

調理例

青梅から作るカリカリ梅漬け、青梅のみりん漬け、青梅の甘露煮

サクランボ

宝石のような赤い果実が目を引くサクランボは、バラ科サクラ属の落葉高木の果実で、和名では「桜桃(おうとう)」とも呼ばれます。サクランボは明治初期に日本へ導入されました。開花期に遅霜がなく、収穫期に雨が少ない気候が栽培に適しているため、山形県をはじめ、山梨県、秋田県など、比較的冷涼な東日本を中心に栽培されています。6月下旬から7月上旬にかけて出荷の最盛期を迎え、甘みの強い「佐藤錦」や「紅秀峰」などの人気品種が出回り、初夏の味覚として親しまれています。

栄養

微量ながら各種ビタミンとミネラルに加え、リンゴ酸、クエン酸、ブドウ糖、果糖などが含まれています。

食べ方

主に生食しますが、酸味が強い酸果(サワーチェリー)はジャム、ジュース、シロップ漬け、洋菓子などに利用します。

選び方

皮にツヤと張りがあり、軸の色が青々としたものを選びましょう。

保存方法

冷蔵に弱いため風通しの良い冷暗所で保存し、早めに食べ切りましょう。冷やしたい場合は食べる1~2時間前に冷蔵庫へ入れます。

調理例

サクランボとモッツァレラチーズのサラダ、サクランボのクラフティ、サクランボのピクルス

マンゴー

濃厚な甘みととろけるような果肉で人気のマンゴーは、南国を代表する果物の一つ。ウルシ科マンゴー属の植物で、インドやミャンマー、マレー半島が原産地とされ、中でもインドには500以上の品種があると言われています。日本では沖縄県、鹿児島県、宮崎県が主な産地で、代表的な品種は赤く色付く「アップルマンゴー」。果皮が緑色で大型の「キーツマンゴー」も栽培されています。主にハウス栽培で一年を通して生産されていますが、初夏の6月から7月にかけて出荷のピークを迎えます。

栄養

カロテン、ビタミンC・Eが豊富で、カリウム、葉酸、食物繊維も含む栄養バランスの良い果物です。

食べ方

生でそのまま味わうのが一般的ですが、シャーベットやスムージー、ドライフルーツにもおすすめ。未熟果はチャツネやピクルスに加工されることもあります。カットするときは、平たい種に沿って3枚におろし、果肉に格子状の切れ込みを入れて皮を押し出すと、食べやすく見た目も映えます。

選び方

果皮に張りとツヤがあり、ずっしりと重みを感じるものを選びましょう。甘い香りがしたら食べごろのサインです。

保存方法

未熟なものは常温で追熟させます。熟したものはラップに包んで冷蔵庫の野菜室で保存し、できるだけ早めに食べましょう。

調理例

マンゴーとヨーグルトのラッシー、マンゴーとチキンのグリル、ココナッツミルクとマンゴーの二層ゼリー

6月が「名残」の果物

6月下旬、旬の終わりを迎えるビワやクワの実は、「名残」の味覚として季節の移ろいを伝えてくれます。どこか懐かしく、やさしい甘みが特徴のこれらの果実は、生食はもちろん、昔ながらのドライフルーツやジャムなどの保存食にもぴったりです。短い旬を、手仕事とともに楽しんでみてはいかがでしょうか。

6月が「名残」の果物

ビワ

上品な甘さとみずみずしさが魅力のビワは、バラ科ビワ属の常緑樹で、日本と中国が原産地とされています。江戸時代に中国から伝わった品種を元に栽培が本格化しました。代表的な品種に「茂木」と「田中」があり、茂木は果汁が多くて酸味が弱く、田中は果肉が緻密(ちみつ)で甘みが強いのが特徴。主な産地は温暖な長崎県や千葉県、愛媛県で、旬が短い初夏の味覚です。

栄養

カロテンが豊富で、マンガンやマグネシウムなどのミネラルも含んでいます。葉はタンニンやビタミン様物質を含み、昔から生薬として利用されてきました。

食べ方

生食するのが一般的ですが、ジャムやゼリーなどに利用することもあります。皮は、お尻側に切れ目を入れると手できれいにむけます。

選び方

果皮に張りがありうぶ毛が密生しているものが新鮮です。

保存方法

常温で保存し、3~4日で食べ切りましょう。冷やす場合は、食べる2~3時間前に冷蔵庫に入れると良いでしょう。

調理例

ビワジャム、ビワのシロップ漬け、ビワの果実酢

クワの実(マルベリー)

クワの実(マルベリー)

6月に収穫を迎えるクワの実は、英語でマルベリーといい、クワ科クワ属の植物です。クワ(桑)は日本でも古くから養蚕用の葉として栽培されており、葉は茶に加工されたり、実はそのまま食用としたり、滋養に富んだ自然の恵みとして親しまれてきました。小さな粒が集まって一つの実となる形状は、ブラックベリーやラズベリーとも似ています。完熟すると黒紫色になり、やさしい甘みが感じられます。果実はデリケートで日持ちがしないため、生で味わえるのは主に産地周辺。群馬県、長野県、滋賀県、埼玉県など、養蚕が盛んだった地域で今も栽培されています。

栄養

ビタミンA・C・Eのほか、ポリフェノールの一種で抗酸化作用のあるアントシアニンが豊富です。鉄、カルシウムも含み、スーパーフードとしても注目されています。

食べ方

そのまま生食する他、ジュース、シロップ、洋菓子などに利用します。

選び方

黒紫色に完熟し、軸が青々としているものを選びましょう。押すと潰れやすいので、パック詰めのまま状態を確認するのが理想的です。

保存方法

キッチンペーパーを敷いた容器に入れ、ラップをかけて冷蔵庫で保存します。2~3日で食べきるようにしましょう。冷凍してストックしておくのもおすすめです。水洗い後に水気をきって、軸を取り除き、冷凍用保存袋に入れて冷凍庫へ。

調理例

クワの実入りマフィン、クワの実シャーベット、クワの実の砂糖漬け

季節の移ろいがもたらす旬の恵みと手仕事の知恵

6月はジューシーな夏の味覚が出回り始める一方で、短い旬を終える果物もあり、「走り」「盛り」「名残」で、季節の恵みの豊かさを感じられる月です。
スモモやモモ、大玉スイカ、デラウェアは夏を告げ、ウメやサクランボ、マンゴーは香りと甘みが豊かで品種も出そろい、ビワやクワの実は名残の果物として季節の移ろいをそっと伝えてくれます。特にウメやクワの実には、昔ながらの手仕事や懐かしさを感じる人も多いはずです。短い旬の果実を長く楽しむためのシロップ漬けやジャム、果実酢といった保存食には、先人の知恵と暮らしの工夫が詰まっています。こうした季節の恵みを味わいながら、心も体も整えるひとときを楽しんでみてはいかがでしょうか。

6月は梅仕事

6月といえばウメ仕事の季節。赤柴色の小ウメは「パープルクィーン」という品種

参考書籍
からだにおいしい野菜の便利帳(板木利隆監修|高橋書店発行)
草土花図鑑シリーズ4 花図鑑 野菜+果物(芦澤正和、内田正宏、小崎格監修|草土出版発行)
新食品成分表FOODS2023(新食品成分表編集委員会編|東京法令出版発行)

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