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農業にとっても危険な敵!?スズメバチの対策と巣を自力で駆除する方法

itoh.tomohiro

ライター:

農業にとっても危険な敵!?スズメバチの対策と巣を自力で駆除する方法

農作物に被害を与える害虫を捕食してくれる益虫として知られるスズメバチ。その一方、スズメバチによる食害に悩む農家も少なくありません。農作業時に刺されてしまう危険性もあるでしょう。
本記事では、スズメバチを自力で駆除する方法や安全対策について解説していきます。本記事を参考に、安全かつ適切な駆除にお役立てください。

益虫だが、害虫でもあるスズメバチ

スズメバチは、農作物に被害を与える毛虫やゴキブリなどの害虫を捕食してくれる益虫である一方で、大切な農作物に食害を与えたり、農作業時のリスクとなる害虫でもあります。

特に、筆者の実家が営むブルーベリー農園にとってスズメバチは大きな脅威。毎年お盆を過ぎる頃に大発生し、熟したブルーベリーを次から次へとかじっていきます。かじられたブルーベリーは売りものになりませんし、怖くて収穫作業もできなくなるため、その対策に苦慮しているのが実情です。

あなどれない、スズメバチの毒

スズメバチの毒は強力で、刺されると強い痛みや腫れ、場合によってはアナフィラキシーショックを引き起こす可能性があります。刺された時の激しい痛みはセロトニンやヒスタミンが原因で、アナフィラキシーショックはアレルギー反応を引き起こす「ホスホリパーゼA1」「アンチゲン5」といった物質によって引き起こされます。呼吸困難、血圧低下、意識の低下などによって最悪の場合は死に至ることもあります。

筆者の祖父は農作業中に意図せずスズメバチを興奮させてしまい、数十箇所を刺されて救急搬送されたことがあります。

スズメバチに刺された場合の対処法

刺された部位を流水でよく洗い流し、針が残っている場合はピンセットなどで慎重に取り除くことが重要です。針が残っていると毒素が体内に入りやすく、症状を悪化させる可能性があります。

その後、氷や保冷剤などで患部を冷やして痛みや腫れを和らげ、市販の抗ヒスタミン軟膏かステロイド軟膏を塗布します。全身症状(吐き気、息苦しさ、じんましんなど)が出た場合は、速やかに医療機関を受診してください。アナフィラキシーショックの症状が出たら、ためらわずに救急車を呼び、エピペン(アドレナリン自己注射薬)を持っている場合は指示に従って使用してください。

スズメバチの特徴と見分け方

スズメバチは黒とオレンジの毒々しいカラーリングと大きな体、そして鋭い針が特徴的です。日本では17種類が確認されており、「オオスズメバチ」「キイロスズメバチ」「コガタスズメバチ」「モンスズメバチ」「ヒメスズメバチ」などに刺されるケースが多いようです。また、ミツバチを捕食する小型の外来種「ツマアカスズメバチ」が九州を中心に分布を拡大しており、生態系への影響やミツバチへの影響が懸念されています。

オオスズメバチは世界最大のスズメバチで、強靭な毒針を何度も刺してきます。キイロスズメバチの被害も多く、スズメバチの中でも最大級の巣を軒先などに作ります。とっくり状の巣を作るコガタスズメバチは都市部や住宅街でもよく見掛けるハチで、腹部の縞模様が特徴的なモンスズメバチは夜間にも活動する習性があります。ヒメスズメバチは腹部の先端が黒色で、地中や木の穴、屋根裏などに小さめの巣を作ります。

スズメバチの攻撃性と毒性に隠された危険

スズメバチは攻撃的な性格で、巣に刺激を与えると集団で襲ってきます。特に濃い色の服装や大きな音、振動はスズメバチを刺激しやすいため注意が必要です。
スズメバチは毒性も強く、日本ではスズメバチによる死亡例が年間10~20人程度報告されています(厚生労働省人口動態調査より)。スズメバチに刺されると、初回で体内にハチ毒に対するIgE抗体が作られることがあり、2回目以降の刺傷でアナフィラキシーのリスクが高まります。

巣作りの季節と活動のピーク

スズメバチは、越冬した女王バチが4月ごろに冬眠から目覚め、巣作りをスタートします。巣の規模が拡大し始めるのは6月ごろからで、この時期から産卵と働きバチの育成がスタートします。働きバチが十分に育成されて巣が活発に動き出すのが7月から8月に掛けての時期で、特に8月中旬はスズメバチの巣の規模が最大化して働きバチの数もピークを迎えます。

この時期のハチは非常に活発で攻撃性も高まるため、巣の撤去を考えている人はこの時期を避けた方が安全です。9月からは活動が徐々に終息に向かいますが、再発防止のためにも巣の完全撤去を行いましょう。

ブルーベリー農家のスズメバチ対策

先述したように、ブルーベリー農家にとってスズメバチは大敵です。ブンブン飛び回って収穫するのが怖いだけでなく、せっかく熟した実を次々にかじってしまいます。
実家のブルーベリー農園では、お盆明けごろにピークを迎えるスズメバチの絶対数を抑えるために、5月初旬〜6月ごろに女王バチを捕えるトラップを仕掛けています。

毎年、ゴールデンウィークの頃になるとブルーベリーの可憐な花が咲き乱れ、膨大な数のハナバチやクマバチがせっせと受粉をしてくれます。ちょうどその頃、スズメバチの女王蜂が冬眠から覚め、巣を作り始めます。

ホームセンターに行くと、スズメバチ専用の捕獲トラップが販売されています。こちらを農園の複数箇所に設置しています。捕獲トラップの効果は3週間ほどのため、効果が切れた後にはカルピスやCCレモンで自作の誘引剤を作って中身を入れ替えています。

この時期にトラップを仕掛けるとお盆ごろのスズメバチ被害が大きく減少している体感があります。

スズメバチの巣を駆除する前に準備すべきこと

アナフィラキシーショックのリスクもあるため、スズメバチの巣の駆除はプロに任せるのが安心です。特に巣が急速に大きくなる夏以降はできるだけプロに依頼しましょう。インターネットをはじめ、ホームセンターで依頼も行えます。また、自治体によっては無料または補助金付きで対応してもらえる場合があり、駆除業者を紹介してくれる自治体もあります。

ただ、巣を早急に撤去したい場合や巣が小さな場合などは自力での駆除にトライするケースもあると思います。自身で駆除する際の準備やコツをご紹介していきます。

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駆除は夜間に行うのがおすすめ!

多くのスズメバチは昼に活発に活動し、夜になると働きバチも巣に戻って活動も落ち着きます。夜間や早朝はスズメバチが巣内で静かにしている場合が多く、攻撃を受けるリスクが低くなります。

活動の少ない春先や初夏(4月〜6月ごろ)に駆除するのもおすすめです。この時期は巣の規模が小さく、働きバチも少ないため駆除が比較的容易です。

安全に駆除するための服装

スズメバチは黒や濃い色に反応しやすいため、明るい色で厚手の衣類を着用しましょう。また、ハチ駆除専門の防護服や防護ゴーグル、厚手のゴム手袋などを使用することを強くおすすめします。足元には長靴を着用し、肌の露出を完全に無くします。自力で駆除を行う際には、適切な服装と装備を整えることが重要です。

スズメバチの巣の駆除に必要な道具

ホームセンターに行くと、市販のスズメバチ駆除剤が販売されています。巣を駆除する際は、薬剤が遠くまで届くジェットスプレータイプの殺虫剤がおすすめです。巣から距離をとって駆除できるため、刺されるリスクが抑えられます。万が一刺された場合を考えて抗ヒスタミン軟膏かステロイド軟膏も準備しておきます。

巣を撤去した後作業のために大きなゴミ袋やシャベル、できれば巣を切り離すノコギリも用意しておきましょう。巣が高い場所にある場合には脚立や長い棒も必要です。
夜間の駆除には懐中電灯も必須ですが、光に向かってハチが飛んでくるため、スズメバチが認識しづらい赤色のセロファンを懐中電灯にかぶせて光量を抑えます。適切な薬品と道具をそろえることで駆除作業がスムーズに進められます。

スズメバチの巣の駆除手順

スズメバチの巣の駆除は、命に関わる危険を伴う作業です。安全かつ確実に進めるためには、正しい知識と準備が不可欠です。スプレーの正しい使用方法や巣の取り外し・廃棄の方法、再発防止策までを紹介します。

スプレーの正しい使い方

巣に近付き過ぎるとハチを興奮させてしまいます。駆除作業の際は、スプレーの射程を活用して巣から十分な距離を保ちながら噴射してください。

スプレーは巣の入り口を狙って、一気に噴射することがポイントです。一度に大量に噴射することでスズメバチの動きを抑える効果が高まります。巣の内部まで薬剤が回るよう噴射してしばらく時間を置き、スズメバチが沈静化したことを確認してから次のステップに進みます。外で活動していた働きバチが巣に戻ってくる場合もありますので、そちらも注意してください。

巣の取り外しと廃棄について

巣の取り外しには長い棒や箒(ほうき)が便利です。巣が大きな場合はノコギリで切り離すとスムーズです。
巣を地面に直接落とすと、まだ生きているスズメバチが中から出てくる場合があります。巣を落とす際にはゴミ袋の中に確実に収めるようにしてください。
巣を入れたゴミ袋は密封した上で自治体の指示に従って適切に廃棄しましょう。スズメバチの巣は基本的には可燃ゴミとして出せますが、薬品や駆除方法により異なる収集方法が指定される場合があります。市役所や自治体に事前確認を行いましょう。

“戻りバチ”に注意しましょう

外出していた働きバチが、巣を駆除した後に戻ってくる“戻りバチ”にも注意が必要です。巣が無くなっていることを認識できず、その周辺を飛び回る可能性があります。スプレーの噴射や巣を撤去してからしばらくは巣に近付かず、戻りバチに刺激を与えないようにすることが重要です。

巣の再発を防止するために

スズメバチは過去の巣の痕跡や匂いを頼りにして、同じ場所に巣を作る習性があります。巣があった場所をしっかり洗浄し、木酢液やアルコールで拭き取っておくと再発を防止できます。

残った駆除剤を周辺にスプレーしておくのも有効で、ハチが近寄りにくくなります。また、ハチが利用しそうな隙間や穴を金網やコーキング材などで塞いでおくことで侵入を物理的にブロックできます。自宅周辺を定期的に点検し、屋根裏や軒下、庭木などの巣が作られやすい場所を確認しましょう。

おすすめのスズメバチ駆除剤6選

トラップ系駆除剤

アース製薬『ハチの巣コロリ

駆除エサタイプのスズメバチの巣の駆除剤で、スズメバチがエサを食べ、それを巣に運んで仲間に分けることで巣ごとの壊滅を計ります。巣の位置が分わからなくても、設置するだけで駆除につながります。4方向に足場があり、スズメバチを容器内部へしっかり導きます。

フマキラー『カダン ハチ超激取れ

人工樹液に乾燥酵母を加えた独自ブレンドの誘引捕獲液でハチを強力に誘引します。持続期間は約1カ月。ミツバチやマルハナバチは誘引されません。容器に落下したスズメバチに誘引捕獲液が密着し、溺れさせて捕獲します。一度入ったら出にくいスリ鉢構造の容器で逃がしません。

アース製薬『ハチがホイホイ

スズメバチが大好きな黒蜜と発酵した樹液の香りが素早く立ちこめ、驚異的な速さで誘引してくれます。大きな2つの入り口があるため香りが広がりやすく、どちらの方向からでもハチが入りやすい構造です。スズメバチの習性を考え、降り立つための足場を設けてあります。

スプレー型駆除剤

アース製薬『スズメバチマグナムジェット プロ

反撃阻止、速効性、致死効果に優れた5種の有効成分配合で、スズメバチを巣ごと駆除します。強力大量噴射できるバズーカタイプのため、約45秒で薬剤が全て噴射されます。

フマキラー『カダン スズメバチバズーカジェット

最大12mまで噴射できる超速ジェット噴射のため、離れた場所からでも処理できます。羽ばたき停止&行動停止成分配合でスズメバチの動きを素早く止めて暴れる隙を与えず、巣を作りそうな場所にあらかじめスプレーしておけば約5カ月スズメバチを寄せ付けません。

イカリ消毒『ハチの巣駆除ムース

ムースの泡がスズメバチの巣を包み込んで安全に駆除します。ムースを遠くまで飛ばす特殊設計によって離れた場所から駆除が行え、ムースによる窒息、即効性と蒸散性の薬剤のトリプル効果で巣から出てくるハチや巣の中に居るハチも効果的に駆除します。

スズメバチの駆除は、とにかく安全第一で!

厚生労働省の統計調査によると、1979年から2023年まで45年間で1,207人がハチによって命を落としています。そのほとんどがスズメバチによるものと考えられています。その1,207人うち、男性が966人という結果も出ています。男性はアウトドア活動や山登りなど、ハチと遭遇しやすい場面にいることが多く、ハチの巣の駆除作業中に刺されて死亡するケースも毎年のように見られます。駆除する際には油断することなく、徹底的な対策と準備を行ってから取り組むようにしてください。

また、農業に従事されている方でスズメバチの被害に毎年頭を悩ませている方は、ぜひ春〜夏の時期にトラップ系の駆除剤を試してみてください。刺されるリスクが低い安全な対策ですし、女王蜂を早期に捕獲できれば夏以降の被害が激減するでしょう。

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