充実した研修を受講後、「自伐型林業家」として自然の中でのびのびと働く
自然豊かな長門市は、総面積の75%が山林です。しかし、林業に携わる人は年々減少しており、豊かな森林環境を守り管理できる人材を育てることが現在の課題の一つとなっています。そこで、同市と森林組合、建設業協同組合、長門林産物需要拡大協議会が手を組み、2020年に「一般社団法人リフォレながと」を設立。同時に、「自伐型林業家」を目指す地域おこし協力隊の募集を始めました。
「自伐型林業とは、間伐を繰り返しながら残した木々を成長させていく、環境に優しい林業です」と語るのは、現在、協力隊として活動する松山晃生さん。自伐型林業は、山主からの依頼により長期間、山林を管理していくため、一定区間の木をバッサリと切る「皆伐」と比べ、小規模でコストをかけずに行え、新規参入しやすいという特徴があります。

「自然環境の保全に貢献できることが林業の魅力です」と松山さん
もともと環境問題に興味を持っていた松山さんは、20代後半に、ワーキングホリデーを利用しオーストラリアとポルトガルに滞在。農園や水産加工の会社に勤め、体を動かす仕事の面白さを知りました。帰国後、環境問題に直接貢献できる仕事として林業を選択。いくつかの林業関連企業で働いたあと、独立に向けて経験を積める場所を探し、長門市に出会いました。
地域おこし協力隊では、着任後すぐに鳥取県の「にちなん中国山地林業アカデミー」で、林業についての技術や専門知識を約半年間学びます。ここでは、林業に必要な各種資格を取得することもできるので、未経験の方でも安心して一歩を踏み出すことができます。

協力隊では、森林施業技術だけでなく森林経営に必要な基礎知識も学ぶことができる
松山さんは現在、協力隊として週4日山林に向かい、伐採や間伐、作業道づくりなどを行っています。
林業は「考えることが多い仕事」だと松山さんは語ります。地形や木の形状は千差万別、同じ条件の山林は一つとしてありません。どのように木を切り、どう運んでいくのか、常に考えているので、仕事に飽きることはないそうです。協力隊としての任期終了後も、長門市に定住し、林業だけでなく、山林資源を用いた関連事業も生み出していけたらと考えています。

「森で働くのは本当に気持ちいい。いい汗をかいて健康になれます」(松山さん)
農家や畜産農家へのチャレンジを積極的に応援する「アグリながと」
長門市では、林業だけでなく農業や畜産業でも担い手が減少しており、新たに就農する人材の確保・育成が大きな課題となっています。そこで、市と地元の養鶏農業組合や建設業協同組合が2019年に「一般社団法人アグリながと」を設立。行政と地域おこし協力隊員の間に立つ中間支援団体としてサポートを行っています。
「市と中間支援団体が協力し、隊員の業務だけでなく、長門での生活についてもきめ細かくサポートしています」と語るのは、長門市企画政策課の村上公章さん。住居の確保、技術習得、活動費の管理、関係者とのつなぎ役まで支援するので、初めて生活する土地でも隊員は地域になじみやすく、安心して活動を行うことができています。

「外からの視点で、長門市を盛り上げてほしいですね」と村上さん
ただ、農業も畜産業も、未経験者が現場に出るには技術面・知識面で高いハードルがあります。そこで林業と同じように、1年目は山口県防府市にある「山口県立農業大学校」で基礎研修を受講。基礎的な技術・知識を養ってから、2年目以降に長門市で実地研修にあたり、地域農業への理解を深めていくプログラムを採用して、人材を育成しています。
「アグリながと」の事務局長である髙橋靖人さんは「農業振興においては、スマート農業の体現を目標の一つに掲げています」と話します。作業を省力化して耕作面積を広げるために、ドローンなどICT機器を導入する農業法人が増えており、資格取得のサポートも行っているそうです。

「気候は温暖で、自然災害も少ない。長門市はとても暮らしやすい町です」と髙橋さん
畜産振興では、生まれた子牛を預かり飼養管理・育成する「キャトルステーション」を2023年に市が設置し、現在は「アグリながと」で運用しています。さらに今年から雌牛に子牛を産ませる繁殖経営にも取り組み始めたので、一貫的な飼育管理の研修が積めるようになりました。そのため、協力隊の皆さんは、幅広い畜産経営に関する技術や知識を実践的に身につけることができます。
長門市には、粘りが強い「白オクラ」や、カボスやスダチの仲間である「長門ゆずきち」などの特産野菜があります。また、ブランド和牛「長州ながと和牛」は、肉質が良く柔らかいと評判を集めています。
「こうした地域ならではの特産物を、これから継続的に生産していくためにも、若い力が必要だと考えています。新たな視点で地域の農業や畜産業を盛り上げてくれるような方をお待ちしています」(髙橋さん)
長門市には歴史に裏付けられた人の温かさがある
長門市の「地域おこし協力隊」は、これまで34名を受け入れており、卒業生27名のうち19名が長門市に定住し、地域の新しい活力となっています。協力隊の任期は農業が2年、畜産業と林業は3年まで任用が可能です。退任後は、地元農業法人や林業体などへの就業や、個人事業主としての起業も支援しています。
「農林畜産業の担い手としてだけでなく、それぞれの興味や関心を活かし、幅広い活動で長門市の新たな魅力を発信していただけたら嬉しいです。そのために、市と中間支援団体が協力して、隊員の皆さんを丁寧にサポートしていきます」(村上さん)
話を伺った皆さんが共通してあげていた長門市の魅力は「人の温かさ」。移住して3年目の松山さんも、長門市の皆さんの「近すぎず遠すぎず、心地よい距離感」と、「他者を受け入れる心」を感じているそうです。「歴史を調べると、江戸時代、長門市の仙崎港は北前船の寄港地でした。また、終戦後は大陸からの引き揚げ港でもありました。町の人が外から来る多くの人と関わってきた歴史があるからこそ、受け入れる気持ちも強いのかなと思っています」と語ります。
農業や畜産業、林業に興味がある方はもちろん、人の温かさを感じる土地で新しい生活を始めたいと考えている方にも、暮らしやすい長門市はオススメです。お気軽に、お問い合わせください。

地元産の木材をふんだんに使用した長門市本庁舎
お問い合わせ・ご相談
長門市役所 企画総務部 企画政策課
〒759-4192 山口県長門市東深川1339番地2
TEL:0837-27-0203
【関連サイト】
長門市地域おこし協力隊
【取材協力】
一般社団法人リフォレながと
一般社団法人アグリながと