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参院選の焦点に浮上したコメ増産と所得補償政策 持続可能な稲作の実現を

吉田 忠則

ライター:

参院選の焦点に浮上したコメ増産と所得補償政策 持続可能な稲作の実現を

参院選の投開票が20日に迫った。なお続く「令和の米騒動」を背景に、今回はかつてないほど農政に注目が集まっている。主要各党は農政でどんな公約を掲げているのか。コメに関係する政策を軸に点検してみよう。

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生産調整の見直しが課題に

まずは自民党から。コメの取引に関連して、事前契約を推進することを公約に掲げてた。米価がこれほど話題になっているにもかかわらず、「事前契約」という、ある意味細かいテーマを前面に出している点が気にかかる。

2027年度に予定している水田政策の見直しにその後で触れているので、これから検討する内容に踏み込むのは避けたということだろうか。与党の立場にあるので、農政の現状とかけ離れたものを出しにくい面があるのだろう。

ただし、公約だけを見て自民党農政の方向を占うことはできない。石破茂首相がこの間、コメを増産する必要性を繰り返し指摘しているからだ。参院選後は増産が農政のテーマとして浮上する可能性は十分にある。

コメの増産が課題になっている

この点に関しては、国民民主党が公約ではっきりと打ち出した。「主食用米の増産をはかり、需給と米価の安定を実現します」というのがその内容だ。

2024年春ごろから始まったコメ不足と米価の上昇をきっかけに、コメの生産調整を何らかの形で見直すべきだという意見が強まっている。多くのメディアも生産の抑制を目的にした政策を続けるべきではないと報じている。

一方で、何も手を打たずに増産すれば、米価の下落を招いて、稲作の持続可能性を脅かすという懸念もある。そこで、増産と稲作の存続をいかに両立させるかがテーマになる。最大の焦点は所得補償の制度設計だ。

セーフティーネットの拡充も課題

所得補償政策については、立憲民主党が食料と農地を守る直接支払制度の創設を公約に掲げた。畑や草地も対象にしているので、稲作に限定した制度ではないが、米価の下落に備えることも可能な内容になっている。

国民民主党も水田政策の見直しに関連して、直接支払い制度の再構築を公約に盛り込んだ。畑地化の抑制と水田面積の維持も掲げている。

いずれも旧民主党政権が導入した戸別所得補償制度の流れをくむ。旧民主党は戸別所得補償を掲げて農村票を獲得し、政権の座に就いた経緯がある。立憲民主党と国民民主党は一貫してその「復活」をアピールしている。

米価の下落に備える制度が必要

一方、自民党は主食用米を対象にした直接支払いを公約に盛り込んではいないが、ここでもやはり石破首相の発言に触れておきたい。主食用米の増産と併せ、所得補償政策を取り入れるべきだと主張し続けているのだ。

これに関しては、小泉進次郎農相が既存の収入保険の拡充について度々言及している。期待されたほど加入が進んでいない制度ではあるが、拡充の中身次第ではセーフティーネットの役割を果たすことができるかもしれない。

所得補償政策は財源の問題が絡むので、いざ制度の中身を詰めようと思うと、思うほど簡単ではないだろう。補償する際の条件が緩すぎると、競争を通した効率化の努力にブレーキをかけかねないという懸念もある。

それでも、稲作農家の急激な減少と気候変動による生産の不安定化を考えれば、増産と所得補償政策を検討対象から外すことはできないだろう。今回の参院選に限らず、今後の農政のテーマであり続ける可能性が大きい。

政権の枠組みが農政に影響する

日本維新の会にも触れておこう。他党と比べ、より消費者の立場に比重を置いて農政を考えているのが同党の特徴で、ミニマムアクセス(MA)の枠外でコメの輸入にかかる高関税の時限的な引き下げを公約に盛り込んだ。

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