マイナビ農業TOP > 生産技術 > 根腐病(ねぐされびょう)の症状や原因は? 予防方法や作物ごとの対策を農家が解説

根腐病(ねぐされびょう)の症状や原因は? 予防方法や作物ごとの対策を農家が解説

鮫島 理央

ライター:

根腐病(ねぐされびょう)の症状や原因は? 予防方法や作物ごとの対策を農家が解説

植物が突然しおれてしまったり、元気がなくなったりした経験はありませんか?その原因の一つが「根腐病」です。根が腐ってしまうと、水や栄養をうまく吸えなくなり、最悪の場合、株全体が枯れてしまいます。この記事では、根腐病の症状や主な原因をわかりやすく解説するとともに、具体的な予防方法や作物ごとの対策を解説します。ぜひ、ご自身の畑やプランターで役立ててください。

twitter twitter twitter twitter
URLをコピー

根腐病とは?

根腐病は、植物の根が腐ってしまい、水や栄養分をうまく吸えなくなる病気です。土の中の病原菌や、長期間の過湿状態が原因で発生することが多く、放置すると株全体が枯れてしまいます。

特に湿気の多い環境や水はけの悪い土壌で起こりやすく、初期には地上部のしおれや葉の黄ばみが見られます。根を掘り返すと、黒ずんで腐った状態になっているのが特徴です。
カビ(糸状菌)や細菌、または傷んだ根からの感染が主な原因で、気づかずに放置すると症状が進行し、最終的には植物が枯死してしまうこともあります。

また、根腐病は治療することが難しい病気です。治療に使える農薬というものもほぼないので、発病予防がとても大切になります。

主な症状

1

トマトの根腐病 引用:香川県ホームページ

根腐病が発生すると、まず株全体の元気がなくなります。特に日中にしおれるのが特徴で、夕方や夜になると一時的に回復することもありますが、進行すると回復しなくなります。

土の中では、根の先端部分から腐敗が始まり、次第に全体が黒ずんだり、茶色くふやけたりします。根の表皮が剥がれやすく、内部が黒褐色に変色するのも典型的な症状です。

また、葉が黄色く変色したり、枯れ落ちたりすることもあります。症状が進むと地上部が萎れたまま戻らず、最終的に株全体が枯死してしまいます。早期に気づくためには、地上部の異変を見逃さず、必要に応じて根の状態を確認することが重要です。

原因や発生しやすい条件

根腐病の原因は、主に土壌中の病原菌(糸状菌や細菌)によるものですが、発生にはいくつかの環境要因が重なります。
特に以下のような条件下では、発生リスクが高まります。

  • 水はけが悪く、土壌が長期間湿った状態が続く
  • 高温多湿
  • 植え付けや栽培中に根を傷つけてしまい、そこから病原菌が侵入する
  • すでに病原菌が潜んでいる土壌を使い続けている

また、通気性の悪い場所や密植状態の圃場(ほじょう)では、土壌の乾燥が進まず、根腐病の原因となる過湿状態が長引きやすくなります。こうした条件がそろうことで、土壌内の病原菌が活発化し、根の腐敗が進行してしまいます。

根腐病の予防方法と基本的な対策方法

根腐病を予防するためには、まず土壌環境を整えることが重要です。水はけの悪い土壌では病原菌が増殖しやすくなり、根腐病が発生しやすくなります。
また、連作を避けることも大切な対策方法になります。

なお、根腐病は治療が難しい病気です。もし発病を確認したら、すぐに株を取り除いて処分しましょう。

水はけを改善する


水はけの良い畝(うね)づくりや、高畝栽培を心がけましょう。水はけの良い畑は、土が団粒構造になっています。団粒構造というのは、土の粒が大小さまざまな大きさの塊になっている状態です。この状態の土は、水はけと水もちを良いバランスで兼ね備えています。腐葉土・緑肥・完熟堆肥(たいひ)などを使って団粒化した土壌を作るようにしましょう。

プランター栽培の場合は、市販の栽培用土を使ったり、底石を入れたり、排水穴の詰まりを防いだりするなどの工夫が効果的です。
また、土を長い期間使いまわしていると、土の構造が悪くなり、水はけや水もちが悪くなってしまいます。特に理由やこだわりがないのであれば、栽培を始めるたびに土を入れ替えましょう。

水やりを見直す

水のやりすぎは根腐病の原因になるため、土の状態をよく観察し、湿度の高い時期は過剰な水やりを控えるよう注意しましょう。
特に夏場は水やりのしすぎで根腐病が起きてしまうことが多々あります。表面が乾燥しているように見えても、土の中は湿っていることもありますので、水やり前に軽く土をほぐして確認してみるとよいでしょう。

また、夏の日中に水やりをすると土壌中の水分が熱されて病気の原因になることもあります。暑い時期の水やりは、朝・夕方の比較的涼しい時間帯に行うことを徹底しましょう。

連作を避け、土壌消毒をする

同じ場所での連作は、土壌中の病原菌を蓄積させる原因になります。できるだけ連作を避け、必要に応じて土壌消毒を行い、清潔な環境を保つことが大切です。
連作は根腐病に限らず、さまざまな病気や害虫発生の原因になります。特に家庭菜園や貸し農園での栽培では、耕作面積が限られていることもあり、どうしても連作になってしまうことも少なくないでしょう。そういった場合は土壌消毒を行って、土壌中の病原菌や害虫を殺菌殺虫してしまうのも一つの手です。土壌消毒には農薬を使わない方法もあるので、薬剤を使いにくい環境の方でも挑戦できます。

耐病性品種や接木苗を使う

根腐病に強い耐病性品種を選ぶことで、発病するリスクを下げることができます。特に病気の発生しやすい地域や、過去に被害のあった圃場では有効です。また、耐病性の高い作物を台木にした接木苗を使うこともオススメです。
耐病性品種や接木苗は、普通の種や苗より少々値が張りますが、後々の栽培管理のやりやすさや病気発生のリスクを考えると、家庭菜園などではぜひ導入したい方法です。

作物ごとの対策とポイント

ここでは、作物ごとに気をつけたいポイントや対策について解説します。
根腐病の対策は、ある程度共通することも多いので、まとめて紹介していきます。

トマトやナス


トマトやナスでは、フザリウム属などのカビが原因となって根腐病が発生します。
対策として、土の団粒構造を保つため、腐植や堆肥をしっかりすき込んで、水はけと通気性を高めましょう。また、耐病性のある台木を利用した接ぎ木栽培も効果的です。さらに、高畝を設けて排水路を整備することや、必要に応じて土壌消毒や太陽熱消毒を行い、病原菌を減らすことも有効です。

ホウレンソウやレタスなどの葉物野菜

葉菜類も根腐病の被害が出やすい作物です。
密植を避け、株間を十分にとることで風通しを良くし、土壌の湿気を抑えましょう。また、土壌を深く耕し、排水性を改善することが効果的です。

イチゴ

イチゴは根腐病が発生すると株全体に影響が出やすいデリケートな作物です。植え付け前には、乾熱処理や薬剤を使った土壌消毒をしっかり行いましょう。また、高畝で排水性を確保し、苗の株元が常に湿らないように管理することが大切です。
なお、イチゴの根腐病は気温の低い時期に発生しやすい病気です。涼しい時期だからといって油断しないようにしましょう。

この他にもキュウリやサトイモ、カボチャなどさまざまな野菜で根腐病が発生する可能性があります。どの野菜の対策にも共通しているのは、水はけの良い土壌を作り、連作を避けることです。雨が降ったあとに畑に水たまりが残っていたり、いつまで経っても土がグズグズになっていたりするような場所では土壌を改善したほうが良いかもしれません。

根腐病防除に使うことができる農薬

基本的に根腐病は土壌管理や土壌消毒によって予防する病気のため、発病後に使うことができる農薬といったものは、メジャーな野菜の間ではほとんどありません。

土壌消毒で使われる薬剤はありますが、燻蒸(くんじょう)設備が必要だったり、劇物指定されていたり、刺激臭のするガスが発生したりと、家庭菜園では使いにくいものなので、簡単に紹介します。

クロルピクリン錠剤

レタスやサラダ菜、キュウリやヤマイモなどの土壌消毒に使うことができます。

バスアミド微粒剤

コンニャクやニンジン、トマトやホウレンソウなどの土壌消毒に使うことができます。

まとめ

根腐病は、土壌の状態や水管理次第で誰でも直面する可能性がありますが、基本的なポイントを押さえることで予防や早期対応が可能です。

特に、水はけの良い畝作りや排水性を高める工夫、連作を避けることが効果的です。また、耐病性品種の利用や、水やりの量やタイミングを見直すことも重要です。
ぜひ今回ご紹介した内容を参考に、健康な作物作りに役立ててください。

関連記事

あなたへのおすすめ

タイアップ企画