生える雑草の種類はどんな条件に左右されるのか?
雑草はとても生命力が強いというイメージがあるので、種が落ちればどこでも生えると思われがちですが、実際はそういうわけではないようです。自分にとって適した条件でなければ、そもそも発芽しなかったり、発芽しても生存競争で生き残れなかったりするからです。
その条件とは、例えばその土地の日当たり、水分量、温度、土質、酸性度、塩分濃度、撹乱(かくらん/草刈りや耕運など)の程度、栄養分量など、多岐にわたります。それらを全て把握することはとても難しいですが、大まかに知っておくだけでもその土地の良しあしはすぐに分かります。
今回はその条件の中でも特に大事な酸性度、撹乱の程度、水分量、栄養分量の4つを軸として、その指標となる雑草の種類を紹介していきます。なお、学術的な根拠と僕の経験則を交えた指標になっていますので、あくまでも参考程度にご覧ください。
雑草の見た目で分かること

同じ種類でも色が薄かったり、多様性が少なかったりする土地は土壌の状態も良くないことが多い
まずは雑草の名前が分からなくても、見た目で土壌の状態について分かることがあります。雑草の大きさや茎葉の色の濃淡、そして艶があるかどうかを観察しましょう。単純により大きく、緑色が濃くて、艶がある方が健康的に育っている証なので、土壌の状態も良いと判断することができます。
また、雑草の種類が多いか少ないかも観察すべきポイントのひとつです。1つの畑で目立つ雑草の種類が1〜3種類しかない場合は、土壌酸性度が低すぎる、土が硬すぎる、土が痩せている、あるいは栄養はあっても過剰施肥によってバランスが崩れているなどの可能性があります。季節によっても異なりますが、一年草を主体として10種類ほど多様性があると、土壌環境が良い状態であると考えています。
1. 土壌酸性度(土壌酸度)と雑草の関係について

ハコベは強酸性の土壌では生育しない
野菜の栽培に適した土壌の酸性度(pH)は、一般的にpH6.0〜6.5の弱酸性だと言われています。野菜と同じように、雑草も土壌の酸性度によって生育しやすい種類が異なるため、主にどんな雑草が生えているかを調べることによってその土地の大まかな土壌酸性度を把握することができます。
特にpH5.5以下の酸性の強い土壌では生育できる雑草の種類が限られ、酸性土壌への耐性がある雑草がその土地の優占種になりやすいです。特に酸性土壌に強いと言われているのが、スギナ、ドクダミ、メヒシバなどです。ただし、これらの雑草は強酸性の土壌以外でも生育しますので、生えていたら必ず強酸性というわけではないことには注意してください。
基本的には土壌が肥沃(ひよく)になるほど、自然と土壌酸性度は弱酸性で安定しやすくなっていきます。土づくりが進んでいるかの目安にもなりますので、ぜひ覚えておくとよいでしょう。
酸性土壌への耐性 | 代表的な雑草 | 主な発生pH範囲(目安) | 特徴 |
---|---|---|---|
高い | スギナ、スズメノテッポウ、ドクダミ、メヒシバ、エノコログサ | pH4.5~5.5(強酸性) | 酸性土壌で優占しやすい。メヒシバは特に乾燥・酸性に強い。 |
中程度 | カラスノエンドウ、ツユクサ、シロツメクサ、スベリヒユ | pH5.5~6.5(弱酸性~微酸性) | 幅広いpHで生育するが、弱酸性~微酸性でよく見られる。 |
低い | ハコベ、オオイヌノフグリ、ホトケノザ、タンポポ | pH6.5以上(中性~アルカリ性) | 酸性土壌では生育が抑制され、中性〜アルカリ性で優占。 |
2. 撹乱の程度と雑草の関係について

メヒシバは撹乱の多い環境に強い
撹乱とはその土地の生態系の外部から与えられる影響によって起こる変化のことです。畑においては主に草刈りや耕起、除草剤の散布などの普段の管理の頻度や程度などがこれに関係します。厳密には台風や洪水などの自然による撹乱も含まれますが、ここでは特に影響の大きい人為的な撹乱と雑草の関係について簡単に見ていこうと思います。
耕作放棄地や原野のような場所ではセイタカアワダチソウ、ススキ、チガヤなどの多年草を中心とした植生になることが多いですが、畑作りを開始し、草刈りや耕起を行うようになると、しだいにメヒシバ、エノコログサなどの一年草中心の植生へと変化していきます。
耕すことで地下茎が寸断されたり、草刈りによって光合成が妨げられて地下茎に炭水化物を十分にため込むことができなくなったりと、多年生雑草にとって不利な環境になります。
逆に、一年草にとっては頻繁に畑が耕されたり、草刈りされたりすることによって、そのタイミングで一気に発芽し、自分たちの勢力を拡大するチャンスを増やすことができます。一度多年草優位の環境が出来上がってしまうと、一年草は生存競争に負けてしまいやすいですが、頻繁にリセットされる畑という環境においては一年草の方が適応しやすいと言えます。
そのため耕作放棄地や原野のような場所も、畑作りを進めていくと多年草中心の植生の中に少しずつ一年草が入り混じるようになり、最終的には一年草中心の植生へと変化します。

撹乱の少ない環境では多年生雑草が繁殖しやすい。写真はヨモギの地下茎
同じ多年草であっても、頻繁に草刈りされるが耕起はされない土手のような場所はチガヤやハマスゲ、スギナのような比較的背の低い地下茎雑草が繁茂しますし、頻繁に人が通るような場所ではオオバコやチドメグサ、シロツメクサのような踏圧に強い雑草が優勢になります。
同じ畑作りでも農法によって耕起・草刈りの頻度や程度が異なってくるため、これらによっても植生が変化します。一般的に撹乱の程度が高くなればなるほど、そこで安定して生育できる雑草の種類は減っていきますので、撹乱に強いメヒシバやセンダングサ、スベリヒユなどが優勢になり、雑草の多様性は乏しくなる傾向にあります。
多様性が減って、撹乱に強い草ばかりになってきた時は、耕起や草刈りの頻度・程度を見直してもよいかもしれません。
撹乱の状態 | 代表的な雑草 | 特徴 |
---|---|---|
高頻度(頻繁な耕起・草刈り) | メヒシバ、センダングサ、スベリヒユ、エノコログサ | 一年生雑草が優占。素早く発芽・成長し、短期間で種子を生産する能力がある。 |
ほぼなし(耕作放棄地・原野) | セイタカアワダチソウ、ススキ、チガヤ、ヨモギ | 大型の多年生雑草が優占。 |
人や車両が通行する場所 | オオバコ、チドメグサ、シロツメクサ | 踏圧に強い雑草が繁茂 |
草刈りのみで耕さない場所 | チガヤ、ハマスゲ、スギナなど | 背の低い地下茎を持つ多年生雑草が優占。踏圧や草刈りに強い種類が生存。 |
3. 水分量と雑草の関係について

ドクダミは湿り気の多い場所で繁茂しやすい
土壌の水分量、地下水位によっても雑草の生える種類は大きく影響されます。水はけの良い土地ではメヒシバやスベリヒユ、オオバコなどの水分蒸発を抑える構造を持つ雑草が多く、元田んぼのような水はけの悪い土地ではチドメグサやドクダミ、カヤツリグサなどの湿った環境を好む雑草が多くなっています。
水はけの悪い土壌や保水力のない土地が改善されることで生える雑草が変わるため、土壌環境が改善されているかの指標になることがあります。
水分の程度 | 代表的な雑草 | 特徴 |
---|---|---|
乾燥 | メヒシバ、スベリヒユ、オオバコ | 葉が小さいか厚みがあり、水分蒸発を抑える構造を持つ。 |
湿潤~過湿 | チドメグサ、ドクダミ、カヤツリグサ、セリ、キツネノボタン、ミゾソバ | 湿った環境を好み、根が浅く広がる。水辺や水はけの悪い場所に多く見られる。 |
4. 栄養分量と雑草の関係について

ツユクサは高栄養の場所に生えやすい。この写真はマルバツユクサ
土壌の栄養分の量が増えることによっても生える雑草種は変化します。栄養分の少ない土地ではチガヤやメヒシバ、スズメノカタビラ、ヨモギなど生育できる雑草の種類が限られますが、堆肥(たいひ)や肥料の施肥によって土壌の栄養分量が増えるにつれ、さまざまな種類の雑草が生育できるようになります。
特に高栄養の土地でないと生育しにくいようなアカザ、ツユクサ、ハキダメギクなどが多く見られるようになると土が肥沃になってきたという指標になります。ただし過剰施肥の場合もこれらの雑草種が優勢になりやすく、野菜が栄養素の過剰障害で育たないケースもありますので注意しましょう。
栄養レベル | 代表的な雑草 | 特徴 |
---|---|---|
低栄養 | チガヤ、メヒシバ、スズメノカタビラ、ヨモギ、シバ | 少ない栄養でも生育可能。根系が発達し、葉が小さく薄い傾向がある。 |
中栄養 | ホトケノザ、ハコベ、カラスノエンドウ、オオイヌノフグリ | 適度に肥沃な土壌を好み、生育も比較的早い。 |
高栄養 | アカザ、ツユクサ、ハキダメギク、スベリヒユ、イヌビユ | 高窒素や高リン酸環境を好む。 |
理想的な雑草植生は畑や農法ごとに異なる
今回は主に4つの軸に基づいて、指標となる雑草の種類を紹介しました。ただ、実際はその土地の土質や気候、農法などによっても、その土地に最適な雑草の植生は異なると思っています。そのため栄養レベルが低い土地に生えるとされるような雑草ばかりの畑では、絶対に野菜が育たないかというとそういうわけではなく、例外もあると思います。
自分の畑にとってどんな雑草がどんな状態で生えていると理想的な状態なのか、実際にどういう植生の変化をしているかを、じっくり観察・考察してみると畑作りの面白さが増していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
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