糖度やうま味を高めるソフトスチーム加工
エルテクノが使っているのは、「ソフトスチーム」と呼ばれる食品加工の技術。早大とその関連のベンチャー企業、埼玉県が共同で開発した技術をもとに、エルテクノが独自の工夫を重ねて事業化した。
「天神農園」の名前で自社ブランドでさまざまな加工品を製造しているほか、埼玉県内の農家を中心に農産物の加工も受注している。製造後は加工品を農家に渡し、農家が自らの名前で販売している。
隣の神川町にある「めぐる農園」のトウモロコシはそのひとつ。エルテクノがソフトスチームの技術を使って糖度やうま味を高め、オーブンで表面に焦げ目をつけて、真空パックにしてから引き渡す。

めぐる農園のトウモロコシと枝豆の加工品
さいたま市の農家の加倉井聖子(かくらい・せいこ)さんは、韓国の合わせ発酵調味料のヤンニョムと自ら育てたシソの実を持ち込み、瓶詰めの「しその実ヤンニョム」という商品に加工してもらっている。
さいたま市の百貨店で2024年に試食販売会を開くと、250個が早々に完売した。加倉井さんは「エルテクノの技術がなければ商品は完成しなかった」と話す。現在は商品のバリエーションを増やしている。

しその実ヤンニョム
野菜や肉の細胞を壊さない
ここでエルテクノ代表の内田保雄(うちだ・やすお)さんを紹介しておこう。
じつは内田さんは日本の流通業界で、欠くことのできないある技術を開発した実績がある。セブンイレブンが1980年代にPOSレジを導入したとき、バーコードリーダーを開発し、納品したのが内田さんなのだ。
当時内田さんは30代前半。「誰もやったことのない、自分だけの商品をつくりたい」というのが開発の動機だったという。そのころはバーコード自体もなかったので、バーコードを印刷するプリンターも製造した。

内田保雄さん
その内田さんがバーコードリーダーの世界から離れた後、いまから20年ほど前に注目したのがソフトスチームの技術だった。
野菜や肉を加工するとき、100度以上で加熱すると細胞が壊れ、栄養やうま味成分の一部が流出してしまう。ソフトスチーム加工はミストを使って50~90度の範囲内で加熱して、細胞が壊れるのを防ぐ。
内田さんはこの技術を活用し、野菜や肉、魚などの食材がそれぞれ何度でどれだけの時間加熱すれば最もおいしくなるかを調べ上げ、事業化に成功した。その際力を入れたのが、近隣の農家と結びつくことだった。

ソフトスチーム加工を施す機械


















