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農水省が米騒動でついに認めた判断ミス 生産と流通の実態把握から再出発を

吉田 忠則

ライター:

連載企画:農業経営のヒント

農水省が米騒動でついに認めた判断ミス 生産と流通の実態把握から再出発を

石破茂首相がコメの増産を表明したことが、大きなニュースになっている。稲作の未来を左右する政策転換だが、ここでは関連する別の出来事に注目したい。一連の混乱の中で、農林水産省が判断を誤ったことを事実上認めたのだ。事態を見誤ったことをここまではっきり公表するのは異例のことだ。

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首相がコメの増産を表明

石破首相は5日に開いたコメに関する閣僚会議で、生産を抑えることを基本にしてきた政策を改め、増産に転じる考えを表明した。もし実現すれば、1970年に本格的に始まったコメの生産調整にとって大きな転機になる。

だがここで取り上げるのは、首相に増産の決断を促したひとつの資料だ。タイトルは「今般の米の価格高騰の要因や対応の検証」。農水省が作成した。

その内容に入る前に、これまでの農水省の説明を振り返っておこう。

2024年春ごろに米価が上がり始めて以降、農水省はその原因についてさまざまな説明をしてきた。例えばパンや麺類と比べて米価は上昇が緩やかだったため、相対的に「割安感」で出て、購入する機会が増えた。

農水省は「コメは足りている」と説明していた

気象庁が南海トラフ地震への注意を呼びかける臨時情報を8月に出したことで、多くの家庭がコメを多めに買ったことも要因に挙げた。インバウンド(訪日客)による外食需要の増加の影響も、同じころ指摘していた。

この間、一貫していたのは「コメは足りている」という判断だ。だから新米が出回れば米価の上昇は収まると考えて、政府備蓄米の放出を見送った。

年が変わり、2025年1月末に備蓄米の放出を決めたときも、理由は「円滑な流通に支障が生じる」から。スタンスは変わらなかった。

精米歩留まりの低下とインバウンド需要

5日に公表された「今般の米の価格高騰の要因や対応の検証」と題した資料は、一連の判断が正確なものではなかったと認める内容だった。

検証の結果は需要と供給の両面にわたる。まず供給から。生産量の見通しに関して「精米歩留まりが低下していることを考慮していなかった」。歩留まりの低下は、関係者の間で影響の深刻さがかねて指摘されていた。

2023年の猛暑による高温障害で、多くの地域で1等米が減少した。等級が下がっても、玄米ベースの生産量は落ちていないように見えた。だが流通の過程で精米すると、粒が割れたりして量が目減りしてしまったのだ。

これにインバウンド需要や家庭で買う量が増えたことなどが重なり、「生産量は需要量に対して不足した」と認めた。「人口減少によるマイナス・トレンドの継続を前提」としたことも、需要の過小評価につながった。

精米の歩留まりが需給を左右する

判断ミスを検証する内容はさらに続く。米不足で流通の現場は早い段階からパニックに陥っていた。にもかかわらず、農水省は「流通実態の把握に消極的であり、マーケットへの情報発信や対話も不十分」だった。

政府備蓄米に関しても、「放出時期が遅延した」と認めた。その結果、「卸売業者の不安を払拭できず、さらなる価格高騰」を招いたという。

驚くべき内容だろう。これまで長く農業や農政を取材してきたが、農水省がこれほど率直に情勢判断と対応を誤ったと認めるのを見たことがない。社会の混乱と政治への影響が、いかに大きかったかを示している。

真実を把握するカギは現場にある

本来なら農水省を厳しく批判すべきところなのかもしれないが、ここでは別の点に触れておきたい。筆者も農水省と同様、当初は事態を甘く見ていたからだ。正直なところ、米価の高騰がこれほど長く続くとは思っていなかった。

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