酪農経営の用地不足を補完
森永酪農販売は配合飼料の販売が事業の柱。関連事業として、栃木県那須町で牧場を運営している。酪農家から生後約1カ月のメスの子牛を預かって育て、分娩の2カ月前をめどに酪農家のもとに戻す。前身の会社の時代も含めると、30年余りの実績がある。
預託期間はおよそ20カ月で、預かっている頭数は現在約500。栃木県を中心に、北は宮城県から西は京都府の酪農家から預託を受けている。
預託事業が必要とされる事情はいくつかある。1つは牧場の用地の不足。北海道と違って広い用地を確保するのが難しく、生乳を生産しない子牛のためにスペースを割くのは経営の重荷になる。人手不足も深刻だ。
この点について、森永酪農販売で農場事業部長を務める関根博昭(せきね・ひろあき)さんは「酪農家が生乳の生産に集中できる環境づくりをサポートするのが目的」と話す。酪農経営が厳しくなる中、その需要が高まっている。

関根博昭さん
健康な牛の育成で酪農をサポート
子牛の育成の預託事業には、生乳の質を高めるうえでも意義がある。「牛を健康に育てることがその基礎になる」(関根さん)からだ。
この点に関し、森永酪農販売は専門技術を持つスタッフがいる強みがある。関根さんを含め、那須町の牧場で働く14人のうち5人が獣医師の免許を持っている。家畜人工授精師の資格を取得しているスタッフも複数いる。
いくら注意して丁寧に育てても、子牛が体調を崩すことはどうしてもある。そんなとき症状を素早く正確に把握し、適切に対処できるかどうかは牛の成長を大きく左右する。那須の牧場はそのための体制が整っている。
牛を妊娠させるときも同様。牛の発育状況をデータをもとに把握し、妊娠する確率が高くなるタイミングを見定めて人工授精を施す。ここまでを適切にこなすことで、健康な搾乳牛を酪農家に返すことが可能になる。
これに対し、多くの酪農家は獣医師を雇用する経済的な余裕がなく、必要なときは動物病院などに連絡して来てもらっているのが実情。その間に対処が遅れれば、重篤化するなど牛の健康を損なうリスクもある。
生乳の品質を左右するのは、搾乳牛の飼育の仕方だけではない。分娩前でまだ経済的な利益を生まない段階でも、牛を健全に育てておくことが生乳の質に影響する。森永酪農販売の牧場はその役割を担っている。

受精卵の移植も大切な仕事
猛暑に対応して餌を調整
酪農家にとって、森永酪農販売の事業が求められる事情はほかにもある。猛暑により、牛を育てるハードルが年々高まっているからだ。飼料に関して専門知識があることが、ここで意味を持つ。


















