夏の野菜を早めに撤収し、秋の準備を始める
今年の夏はトマトが豊作だった。猛暑を見越して、例年より2週間ほど早く育苗を始めたのがよかった。数年前までは5月に入ってから遅霜が降りることもあったが、最近はそんな心配もない。それで、4月半ばに苗を植え付けた。真っ赤な大玉やフルーツのように甘いミニ、それから果肉のしっかりした調理用トマトも。全部でおよそ40本。6月には収穫が始まり、7月のピークには毎日のようにかごいっぱいのトマトがとれた。新鮮なうちに食べきれない分は、皮を湯むきしてからコトコト煮込んでトマトピューレにした。1年分とまではいかないが、半年分くらいは仕込めたはずだ。100%オーガニックのトマトピューレだぜ。

自家製トマトピューレ。煮沸したビンに詰め、脱気することで常温保存できる
そのトマトもお盆を迎える頃にはもう終わり。スイートコーンやズッキーニやエダマメもとり終えた。ナスは秋に備えて一休み。キュウリやカボチャは7月に種をまいた抑制栽培(収穫時期を意図的に遅らせる栽培方法)の株が育っている。収穫は秋だ。
ともあれ、夏野菜といわれるものは、じつは夏のハイシーズンには収穫がほとんど終わってしまうんだ。そもそも暑すぎる。トマトも、ナスも、キュウリも生育適温をはるかに超えているんだから、そりゃ元気もなくなるさ。
8月に入れば暦の上ではすぐに立秋だ。1年をおよそ15日ごとに区切った二十四節気のひとつだが、それらは古来、農作業の目安を示している。立秋は、秋に向けた農作業を始めるときだ。
この日、セルトレーにキャベツとブロッコリーの種をまいた。苗ができるのは1カ月後だ。それまでに畑も準備しておかなくてはいけない。

ブロッコリー。立秋に種をまいて植え付けは9月上旬。11月に収穫できる
一坪ミニ菜園とは
そうそう、うちには「一坪ミニ菜園」ってのもあるんだ。
一坪ミニ菜園とは、枠で囲んだ約2×2メートルの小さな畑だ。この枠を4×4の16マスに区切り、1マス1品目を基本に野菜を栽培するのだ。すると春16+秋16で、年間32品目の野菜が栽培できる。マスの中央に野菜を1株植え付けると、隣り合う野菜との株間は40~50センチになり、これはトマトやキャベツ、ダイコンなど多くの野菜にとってちょうどいい間隔だ。
一坪ミニ菜園の大きさは畳2枚分とほぼ同じ。マスに区切ることで植え付けや収穫の時期が異なる野菜を一緒に育てても管理しやすく、効率的に多種類の野菜を育てられるのである。
限られた広さの庭や貸農園を合理的に使える素敵な菜園だ。
この一坪ミニ菜園も秋の作付けをしなくちゃいけない。今回はその話だ。

16のマスに1マス1品目で植え付ける
夏野菜の残渣は堆肥やマルチにして処理
日ごとに日照が短くなり、気温が下がっていく秋は、種まきや植え付けが1日遅れると、収穫は秋が深まるにつれて1週間、2週間とずれていく。キャベツでも、ダイコンでも年内に収穫するには、9月10日頃までに種まきや植え付けを終えたい。
栽培が終わった夏の野菜は、根っこから抜き取って処分する。トマトやキュウリなどは株が大きく育つため残渣(ざんさ)もそれなりにかさがあるが、コンポスト箱に積み上げておけば、来年の春には極上の堆肥(たいひ)になっている。堆肥化する時間と手間をかけたくないというなら収穫バサミで細かく刻んで、ミニ菜園の周りや野菜の株元に敷いてもいい。それほど時間をかけずに分解され、その場で土に還る。

ナスの株元に残渣を敷いてマルチング
夏の野菜を収穫したあとは、1マスあたり30~50グラムの肥料を施し、消費した土の養分を回復させておく。そうすれば、その後に植え付ける作物がスムーズに養分を吸収できる。
果菜類が多い夏の野菜に対して、秋冬の野菜は葉茎菜類や根菜類が中心だ。代表的なのはキャベツ、ブロッコリー、ハクサイ、ダイコン、ニンジン、カブ、ホウレンソウ、コマツナなど。気温が下がっていく秋から冬にかけて生育し、野菜によっては低温にさらされることで糖分を蓄積して甘くなる性質を持っている。

キャベツも秋の定番。ミニ菜園でも立派なものができる
これらの野菜は畑に直接種をまいて育てるものと、苗を植え付けるものに分けられる。種をまくのは、ニンジンやダイコン、カブなどの根菜とコマツナやホウレンソウなどの葉物。根が太く、長く育つダイコンは1マス1株が基本だが、小型の根菜や葉物はマスの中に3~4条で種をすじまき(※1)して、間引きながら収穫していき、最終的に10株前後を大きく育てる。
苗を植え付けるのはキャベツやブロッコリーやハクサイ、レタスなど。1マス1株が基本だ。苗は自分で育苗することもできるが、ミニ菜園では栽培する数が限られるので、市販の苗を入手するのが手軽だ。
※1 土に浅い条(すじ)を作り、その条に沿って種をまく方法。
種まき、植え付けのコツと害虫対策
近年は、9月に入っても彼岸を過ぎるまで気温が高い日が続く傾向にある。秋の野菜は、基本的に冷涼な気候を好むので、必要に応じて遮光ネットや寒冷紗(かんれいしゃ)をトンネル掛けして高温や強光を和らげてやるといい。乾燥にも要注意。苗は曇りの日を選んで植え付け、根鉢に十分吸水させたうえで、植え穴にもたっぷり水をやってから植え付ける。

ハクサイの苗。しおれないようにたっぷり水をやり涼しい時間帯に植え付ける
ニンジンやダイコン、コマツナなどの種まきは、雨のあとの畑が湿っているときにやれば水やりの手間がない。一方で、種まき後に激しい雨が降ると種が流されやすく、土質によっては乾いたあとに土が固く締まって発芽しにくくなる。特に秋は前線による長雨や台風も多いので、天気予報は要チェック。乾燥しすぎるのはよくないが、土壌にわずかでも湿り気があれば、水やりは控えたほうがいい。
秋は、春と並んで害虫が多い季節でもある。特にキャベツやブロッコリー、ハクサイなどアブラナ科の野菜には、共通した害虫がつく。アオムシ、ヨトウムシ、コナガ、キスジノミハムシなどで、防除には防虫ネットをトンネル掛けするのが確実だ。
ミニ菜園の場合、トンネルは2列(8マス)をまとめてかけるのが合理的だ。2列の幅は約80~100センチなので、長さ210センチまたは240センチのトンネル支柱(ダンポールなど)が利用できる。

2列をまとめてトンネル掛けする
春から初夏にかけてショウガや落花生やサトイモなどを植え付けていれば10月にとれる。秋ナスもその頃には終わる。それでマスが空いたらエンドウやソラマメ、タマネギ、ニンニクなど、越冬させて翌年に収穫する野菜を植え付けるといい。
エンドウやソラマメは低温に強い幼苗で越冬させなくてはいけない。早い時期に栽培をスタートすると冬が来る前に大きく育ちすぎてしまうので、種をまくなら10月下旬、苗の植え付けは11月上旬~中旬が目安だ。タマネギは地域や品種にもよるが、12月上旬まで植え付けできる。

エンドウやソラマメは幼苗で越冬させる
一坪ミニ菜園の秋冬プラン
一坪ミニ菜園の秋冬プランを2つ紹介しよう。
育てやすい秋冬定番野菜

育てやすい定番野菜というならこれだ。害虫がつきやすいアブラナ科のキャベツやブロッコリー、ハクサイなどは北側の2列に植え付けて、まとめて防虫ネットをトンネル掛けする(※2)。カブ、コマツナ、チンゲンサイ、ラディッシュは生育が早いので、10月に収穫できる。空いたマスにはエンドウ、ソラマメ、タマネギを植え付けて越冬させる。
※2 畳2枚分の広さで年間32品目の野菜ができる!「一坪ミニ菜園」【DIY的半農生活Vol.20】の秋冬プランは、春作からの継続のため前作の作付けを考慮して南側にアブラナ科を植え付けているが、今回は秋作スタートプランのため、北側にアブラナ科を受け付けている。こうすることで、防虫ネットのトンネルがほかの作物の影になるのを避けられる。
花野菜やハーブで彩る菜園

花野菜や色味のある野菜、ハーブを組み合わせて見栄えよく菜園をデザインするのも素敵だ。
スーパーではあまり並ばないメキャベツやコウサイタイなど、珍しい野菜を栽培できるのも家庭菜園の楽しみだ。とれた野菜をそのままサラダにしても華やか。ローズマリーは植えっぱなしでOK。肉や魚料理でちょっと風味付けしたいときに、サッと摘んで使えるのでとても便利だ。
庭先のちょっとしたスペースを利用してプチ自給自足
10アールの畑の隅に、ふとしたひらめきで一坪ミニ菜園を作ってから、今年で9年になる。幅20センチ、厚さ14センチの枕木で組んだ枠は、まだまだ傷んじゃいない。毎年、作物が少なくなる冬にシャベルに3~4杯の堆肥を入れるくらいで、土づくりといったようなことは、ほかに何もしていないが、作物はよく育っている。そりゃ、ときにうまくできないこともあるけれど、マスの野菜すべてがダメになることはないし、ひどい連作障害を感じたこともない。

限られた広さでたくさんの種類を作れるのが一坪ミニ菜園のいいところ
ということで、みなさん! お家に小さな庭があれば、野菜を育てましょう。畳2枚分のスペースで、年間32品目もの野菜を作れるのです。芝生や花壇も素敵だけれど、自分で食べるものを自分で作れたらちょっと誇らしい。せっかくだから、オーガニックにこだわって。そして、店頭に並ぶ1玉500円のキャベツを笑ってしまおう。





















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