里芋につく主な害虫
セスジスズメ(スズメガの幼虫)

セスジスズメの幼虫は、黒や緑の体に黄色や赤の斑点が並び、尾に1本の突起を持つ大型のイモムシです。成長すると体長は7〜8cmにもなり、非常に旺盛な食欲で葉を食害します。2〜3匹で一晩のうちに1株分の葉を食い尽くすほどの勢いがあります。卵は葉裏に単独で産みつけられ、孵化後すぐに食害を開始します。発生時期は6月〜10月で、特に8月下旬以降にかけての発生が多くなります。
ハスモンヨトウ(ヤガ科の夜盗虫)

ハスモンヨトウは、ヨトウムシ類の中でも特に注意が必要な害虫です。成虫は夜行性で、葉の裏側に卵を塊で産みつけます。幼虫は若齢のうちは集団で葉裏を食害し、やがて成長すると葉を葉脈だけ残して食い尽くすようになります。昼間は株元の土に隠れていることが多く、見落とされやすいのも厄介な点です。発生は5月ごろから始まり、8月〜11月にかけて被害が大きくなります。特に秋口の繁殖力には注意が必要です。
ワタアブラムシ

ワタアブラムシは、葉や茎に群がって植物の汁を吸う小型の害虫で、黄緑や黒っぽい体色をしています。被害が進むと葉が丸まったり縮んだりして、生育が著しく悪くなります。さらに厄介なのは、アブラムシがウイルス病を媒介するという点で、モザイク病やわい化症状など、作物全体に深刻な影響を及ぼします。春から発生し、特に6〜8月の高温期に爆発的に増殖します。繁殖スピードが非常に早いため、早期の発見と物理的・化学的な防除が求められます。
ハダニ類

カンザワハダニは体長約0.5mmの非常に小さなダニで、葉の裏側に生息し、口針を刺して葉の細胞内容物を吸収します。これにより、葉は白い斑点状に変色し、進行すると全体が黄化して枯死することもあります。高温で乾燥した環境を好むため、梅雨明けから夏にかけて多発する傾向があります。発生初期には被害がわかりにくいため、注意深い観察が必要です。農薬が効きにくいこともあり、物理的な水洗いや天敵利用などとの併用が効果的です。
コガネムシ類

コガネムシ類は成虫も幼虫も被害をもたらす厄介な害虫です。特に問題なのは地中に潜む幼虫で、里芋の根や塊茎を食害し、生育を大きく阻害します。被害を受けた株は葉がしおれ、最終的には収穫量や品質の低下につながるため、農家にとって見過ごせない存在です。
成虫は前年に孵化した幼虫が土中で越冬し、5〜6月頃に羽化して地上に現れます。その後、交尾・産卵を行い、土中に産みつけられた卵が6〜7月頃に孵化。幼虫は秋まで活発に活動しながら根や塊茎を食害し、気温が下がると再び越冬に入ります。こうしたサイクルにより、毎年継続的に被害をもたらします。
このように防除が難しいコガネムシ類ですが、そこで頼りになるのが「ダイアジノンSLゾル」です。マイクロカプセル化された有効成分が土壌中で長期間保たれるため、コガネムシの幼虫の発生を効果的に抑制することができます。
植付前に一度土壌へ処理しておくだけで、根域をしっかり守ることができ、里芋の初期生育を安定させることができます。
里芋の病害虫の効果的な防除方法5選
葉裏を確認し、卵・幼虫の除去を行う

里芋の害虫の多くは、葉の裏に卵を産みつけたり幼虫として潜んでいたりします。特にセスジスズメやハスモンヨトウの幼虫は葉裏に隠れ、被害が一晩で拡大することもあるため、葉が白っぽくなったり透けたように見えた場合は要注意です。こまめに葉の裏を確認し、卵や幼虫を手で潰すか取り除くことで、初期段階での被害拡大を防げます。
また、防虫剤を散布する際も、葉表面だけでなく裏側にもまんべんなく行き渡らせることが効果の鍵となります。夜盗虫の成虫が飛来した際には、葉ごと取り除いて処分すると被害を抑えやすくなります。
雑草除去による害虫源の排除を行う

雑草は害虫の隠れ場所や産卵場所になりやすく、里芋周辺の雑草を放置すると害虫発生の温床になってしまいます。細かく除草を行うことで、害虫の侵入や増殖を未然に防げます。さらに土壌を耕起し表層を掘り起こすと、地中に潜む幼虫やサナギなどが地表へ露出し、天敵や直射日光によって自然に駆除されやすくなります。
こうした耕種的防除は農薬を使わずに害虫を減らせる、持続可能な対策です。作付け前や収穫後、雑草処理と一緒にしっかり耕すことで、里芋の定着と健全な生育に役立ちます。
防虫ネット・粘着テープなどを利用する

害虫による飛来被害、とくにアブラムシやチョウ類に対しては、防虫ネットの使用が非常に有効です。寒冷紗や防虫ネットを畝に張るだけで、害虫の侵入を物理的に遮断できます。また、黄色や銀色の粘着テープを設置することで、アブラムシなどが引き寄せられて捕獲される働きも期待できます。
こうした物理的な防除手段は、農薬を使わずに済み、環境や人体への負担を軽減できる点が魅力です。
太陽熱による土壌滅菌処理を行う

夏の高温期を活かした太陽熱土壌消毒は、農薬を使わずに土壌中の病害虫や雑草種子を減少させる方法です。耕起・畝立て後、圃場全面を透明ビニールなどでしっかり覆い、地温を35℃以上(理想は40‑60℃)に維持しながら1~4週間ほど放置します。
これによって病原菌やセンチュウ、土壌中の害虫卵・幼虫などを効率的に抑制できます。ただし、天候依存で効果が出にくい冷夏の年や、土壌深部まで温度が届きにくいことに注意が必要です。実施時には、土壌水分の調整や石灰窒素の併用で効果を高める工夫も有効です。
里芋のコガネムシ類幼虫防除に特におすすめなのはダイアジノンSLゾル

「ダイアジノンSLゾル」防除の仕組み
ダイアジノンSLゾルは、古くから使われてきた有機リン系殺虫剤有効成分であるダイアジノンを、マイクロカプセル化することで進化させた製剤です。土壌中の有機物ごとダイアジノンSLゾルを採餌したコガネムシ類の幼虫の消化器官の中で、カプセルが潰れて有効成分が放出されることで殺虫効果を発揮します。
ダイアジノンを高分子膜で包んだマイクロカプセル製剤のため、安定した状態で長期間保たれ、土壌中で150日から180日以上の長期にわたり持続効果を発揮します。いちごを除く主要作物(里芋・やまのいも・かんしょなど)では、植付前の1回使用で、収穫までコガネムシ類幼虫の被害を大幅に軽減します。
作業者に寄り添った高い安全性
薬剤散布時および散布後の特有の刺激臭が大幅に抑えられている点にも注目です。取り扱い時の不快感が軽減され作業効率や安全性の向上にもつながるため、作業者にとっては大きなメリットです。また、普通物(毒劇物に該当しないものを指していう通称)であるため、管理がしやすく、現場での使い勝手にも優れます。
ダイアジノンSLゾルの使い方と注意点

散布・混和のポイント
効果を最大限発揮させるためには、畑の全面にまきむらのないようできるだけ均一に散布してください。被害の多い圃場では、圃場の外周をていねいに散布することも重要です。また、ダイアジノンSLゾルのマイクロカプセルは紫外線によって分解されやすいため、散布後は早めに土壌と混和してください。混和の深さは、コガネムシ類の幼虫の生息域に合わせて、深くなりすぎないように注意して、15㎝~20㎝の深さまでで均一になるようにしてください。
希釈時の注意点
薬液を準備する際は、使用量に応じて希釈し、その都度使い切ることが基本です。保管中や希釈後の薬液は沈殿しやすいため、希釈前にボトルをしっかり振るとともに、希釈後は速やかに散布してください。
もし希釈後に放置してしまった場合も、再度よくかき混ぜてから使用します。農薬は成分の分離や劣化によって効果が不安定になることがあるため、新鮮な薬液で処理することが前提です。また、散布器具に残った薬液は河川などへ流さず、周囲に配慮して適切に処理します。
農薬用タンクで散布液を調製する場合のポイント

ダイアジノンSLゾルは里芋以外も有効

・やまのいも
・さといも
・さといも(葉柄)
・らっかせい
・いちご
・なし(苗木)
・つつじ類
・ひのき(苗畑)
・すぎ(苗畑)
・さくら
・芝
・樹木類
ダイアジノンSLゾルは、里芋(さといも)だけでなく、いちご・かんしょ・山のいも(やまのいも)など、複数の作物に農薬登録があります。たとえば、里芋や、やまのいもではコガネムシ類幼虫の防除に有効で、植付前に全面土壌混和で1回処理することで、収穫までコガネムシ類幼虫による被害を大幅に軽減することが確認されています。
また、いちご栽培においても有効成分が土壌中の害虫に持続的に作用するため、ポット育苗時や定植前の処理に適しています。
まとめ
里芋は、セスジスズメやハスモンヨトウ、アブラムシ、ハダニ、コガネムシなど、さまざまな害虫の被害にさらされやすい作物です。特に夏から秋にかけては発生が集中し、短期間で深刻なダメージを受けることも少なくありません。
そのためには、日常的な観察による早期発見と、物理的・耕種的な対策を組み合わせた総合的な防除が必要です。さらに、土壌に潜むコガネムシ類の幼虫やヨトウムシ類の防除には、農薬の力をうまく取り入れることも非常に有効です。
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