地域に生きる農園として創業の思いと「山末」の屋号
山末農園の屋号には、この土地で積み重ねてきた営みを次代へと手渡す覚悟が込められています。村田さんが農業に携わるきっかけは、家業の継承でした。しかし、ただ受け継ぐだけではなく、久御山という産地の魅力をもう一段引き上げたい。そんな決意から、地域の歴史と風土に根差した営みを続けています。

水と土に恵まれた久御山は、古くから育苗文化が栄え、京の食文化を支えてきました。山末農園は、その蓄積の上に立ち、九条ネギ、キャベツ、小松菜などの露地・施設栽培を組み合わせ、年間を通じて安定した出荷体制を築いています。
「旬をまっすぐ届ける」経営理念と大切にしていること

同園の根底にあるのは、「地域の皆様に愛される企業でありたい」というまなざしです。畑に立つと、作物の葉色や土の匂い、風の向きが今日の仕事を教えてくれます。そうした自然の声に耳を澄ませ、過不足のない栽培管理で野菜の力を引き出す。最もおいしい瞬間を見極めて収穫し、鮮度を保ったまま食卓へつなぐ。山末農園が掲げる「旬の時期に旬の野菜をお届けしたい」という言葉は、単なるスローガンではなく、播種計画から収穫・選別・出荷まで貫かれた日々の判断基準です。地域の方々との信頼を何よりの糧とし、畑、直売所、取引先のすべてで誠実なものづくりを徹底しています。
伝統とテクノロジーの両輪。九条ネギの周年栽培と淀苗の知恵
九条ネギの生産では、露地とハウスを組み合わせて周年栽培を行い、天候変動に強い体制を整えています。古くから伝わる淀苗の育苗技術は、踏み込み温床で健やかな苗を仕立て、一本一本に接ぎ木を施して根張りを高める、といった手間を惜しまない工程が要。山末農園はこの知恵を継承しつつ、作型の最適化や圃場ごとの環境差に応じた管理で品質の平準化を図ってきました。

防除はドローン散布(委託)を活用してムラの少ない処理を実現し、今後は直進アシスト機能付きトラクターの導入を予定。省力化と作業精度の両立に取り組みながら、将来的なIoT・AI活用にも視野を広げています。さらに直売所では、朝採れの九条ネギや季節の野菜に加え、山末農園オリジナルのホワイトスイートコーン「京の白雪姫」など、旬の魅力をそのまま手渡す仕組みを整えました。甘みが強くみずみずしい白いとうもろこしは、初夏の短い季節だけ出会える特別な一品として好評です。
人が育つ現場。若手と女性が躍動するチームづくり
「人が育てば、野菜も育つ」。山末農園の強みは、若手スタッフが多く、女性がいきいきと活躍していることです。経験に頼りがちな作業も、標準化と可視化で共有し、誰もが同じ品質基準で仕事に臨める環境を整備。先輩が培ってきた知見を惜しみなく伝え、失敗から学べる余白も大切にします。インターンシップや研修の受け入れを通じて、地域の次世代を育む土壌づくりにも取り組んできました。多様なバックグラウンドを持つメンバーが互いの得意を持ち寄り、18名のチームで収穫から選別、出荷、直売までを滑らかにつなげる。畑から店頭までの一貫した連携が、山末農園の“おいしい当たり前”を支えています。

久御山の名を掲げて。地域ブランドとこれからの展望
山末農園が見据えるのは、「新鮮でおいしい野菜といえば久御山町」という地域ブランドの確立です。伝統ある淀苗の技術で培った確かな栽培力を土台に、付加価値の高いブランド野菜の生産を推し進め、産地全体の存在感を高めていきます。若手農業者の育成に継続して力を注ぎ、持続性のある地域農業のモデルとなること。行政や地域、取引先との連携を深め、スマート農業の活用や環境配慮型の取り組みを段階的に広げていくこと。その先に描くのは、消費者から選ばれ、地域から誇られる産地の姿です。
今日も畑では、九条ネギが風にそよぎ、苗の列が静かに育ちの時を刻んでいます。旬を最短距離で届けるために——山末農園は、伝統と革新の両輪で、久御山発の“おいしい未来”をつくり続けます。
企業情報
株式会社山末農園(京都府・久御山町)
主な生産:九条ネギ(周年栽培)、キャベツ、小松菜、淀苗(野菜苗)
直売所:農園併設(季節の野菜やオリジナル白いとうもろこし「京の白雪姫」などを朝採れで販売)
代表者:村田 和弘

















