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卸売市場が“危機”と“再生”の狭間に――農業経営者が今考えるべき活用法

卸売市場が“危機”と“再生”の狭間に――農業経営者が今考えるべき活用法

いま、日本全国にある生鮮食品や花卉を扱う卸売市場は、市場経由率の低下や取り扱い高の減少、築40年以上の建物の改修の必要性などを背景に大きな変革期を迎えている。ここでは、農業生産者にとっても一つの販路として重要な卸売市場の現状を整理し、今後の農業経営において卸売市場をどのように活用していけば良いか、考えてみたい。

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転換期を迎えている卸売市場

卸売市場の歴史は古く、江戸時代からその歴史は始まっている。各地で生産される農産物を効率的に消費地に供給するシステムとして今も昔も、卸売市場は重要な役割を担っている。日本の場合、生産地が分散していたことに加え、消費地においても商店街が元気だった時代には、八百屋、魚屋、肉屋といった小さな商店が分散していた。そのため、円滑に生鮮食品を流通させるには、個別に取引をするよりも、まとめて取引ができる場が非常に重要であった。そのため、農産物をJA等が取りまとめつつ、消費地では卸売市場がそれを小売店や飲食店に分配する仕組みとして機能してきたのである。

しかし、昨今では、生産者の大規模化や、小売店の大規模化、特に食品スーパーなどの量販店が増えていく中で、卸売市場を介さず、直接取引をする傾向が強まっている。卸売市場を介さなくても、大きな量の取引ができるプレーヤーが生産者側にも、消費地側にも存在していれば、直接取引する方が効率的であるし、商談のなかで詳細に品質などについて調整できるためである。
その結果、平成初期をピークに卸売市場の経由率は減少の一途をたどっている。また、人口減少や高齢化によって、生鮮食品の需要も減少してきたことから、各卸売市場の取扱高は減少し、維持できなくなった卸売市場、その中で事業を行う卸売業者は廃業が進み、市場の数も事業者数も減少している。
さらに最近では、卸売市場の施設の築年数が40年以上のところも増え、建て直しや大規模修繕の必要性に迫られているところも少なくない。しかし、中央卸売市場などは自治体が市場開設者として運営責任を担っているところがほとんどであり、取扱高が減ったなかで、新たに大きな公金を投下して再整備を行うことへの判断が難しいケースも多い。

出典:農林水産省「卸売市場をめぐる情勢」

このように一見すると、卸売市場は衰退の一途を辿っている。しかしながら、日本全国に産地が分散して存在し、産地リレーのように時期で品目ごとの産地がスライドしていく日本においては、依然として卸売市場は安定的に農産物などを流通させるための重要なインフラであると言える。量販店においても、生産者との直接取引は増えつつも、仕入れのメインは卸売市場を経由しているところがほとんどなのである。
また、最近は卸売市場のなかでも営業スタイルを大きく変化させ、新たな産地開拓を積極的に行ったり、生産者と連携した販売活動を行ったり、卸売市場としての販売先を広げる活動を行うようなところも出てきている。施設の大規模改修や建て直しについても、消費者を呼び込む商業施設を併設する、温度管理を徹底した設備を導入したり、加工施設を作ることで付加価値を高めて販売できるようにするなどの機能強化をすることで攻めの姿勢で取り組むところも増えつつある。卸売市場は今、大きな転換期を迎えているといえよう。

卸売市場のメリットとデメリット

卸売市場に生産者が出荷するメリットは複数あるが、最も大きなメリットは、卸売市場は法律上、引き受け拒否ができないこと、その日に全てを売り切る原則になっているため、サイズや見た目の規格に適合していれば、必ず販売できるチャネルであることだ。いつでも安定的に販売できる、つまり生産した農産物を現金に換えることができる先というのは経営上、重要である。卸売市場をメインの出荷先にすることで、自社の営業コストを最小限にできる。生産活動に特化したい生産者としては非常に有用なチャネルであると言える。
しかし、デメリットも存在する。それは卸売市場で販売する場合の価格は需給バランスに大きく左右されてしまい、自分で価格を決めることが難しい点である。豊作の場合など、他の産地も豊作であれば供給が需要を上回ってしまい、卸売市場の価格が非常に安くなってしまい、出荷しても赤字になってしまうこともある。生産者にとって、価格決定権を持てないことが最大のデメリットであると言える。

生産者は卸売市場をどう活用すべきか

では、生産者はどのように卸売市場を活用すべきだろうか。
一つは「サブ」の出荷先として、自社で生産した農産物の販売における量の調整弁として活用する方法がある。規模の大きい農業法人等においては、基本的に自社で営業活動を行い、直接顧客へ販売することが農業経営の一つのセオリーである。自社で価格決定権を持ち、客先と交渉し、販売することで収益をあげていくことが重要である。しかし、顧客との契約栽培がメインであったとしても、天候等の影響を考慮し、契約数量を超える量の生産を行うことになる。この時、予定通りか、それ以上の収量が上がった場合など、売り先に紐づいていない在庫が発生する。しかも農産物の場合は鮮度があるため、できるだけ早く、その在庫を販売しなければならない。この時に活用できるのがいつでも受け入れてもらえる卸売市場である。これが自社の生産・販売のバッファーとして「サブ」の販路として卸売市場を活用する方法である。

もう一つはメインの販路として活用する方法である。卸売市場も以前は委託販売がメインであり、出荷したのち、セリで価格が決まることがほとんどであったが、現在では買取で受け入れる卸売業者も増えてきている。これは、事前の商談でシーズンごとに価格を決めて取引するような形が多く、通常の直接販売に近い形で取引できる。また、卸売市場法の改正により、卸売市場内の仲卸業者との直接取引も可能になったことから、直接取引的に卸売市場を使う選択肢は増えている。さらに言えば、前述の通り、卸売市場に出荷することで販路開拓に営業コストをかける必要がなくなるため、生産に特化した農業経営ができる。このとき、生産コストを抑えた生産ができれば、卸売市場の相場が安価だったとしても収益を上げる農業経営が可能となる。大規模化、機械化を進め、低コスト生産を志向する農業経営と卸売市場は非常に親和性が高いのである。
卸売市場が大きな転換期を迎えるいま、生産者も自分の農業経営のなかでの卸売市場の使い方を考えていくことが必要だろう。

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