シルクスイートとは?絹のようになめらかな食感が魅力

「シルクスイート」は、群馬県前橋市のカネコ種苗株式会社が開発したサツマイモ品種です。従来の蜜芋とは一線を画す、なめらかでしっとりとした食感と上品な甘さが特徴。2011年に「シルクスイート」を商標登録、2012年に種苗販売を開始し、2018年に品種登録(登録名:HE306)された比較的新しい品種です。
親品種は、食味と外観にすぐれた「春こがね」と、形が整いやすい「べにまさり」。両者の長所を受け継ぎ、きめ細かくクリーミーな舌ざわりを実現しました。「シルク=絹のようになめらか」「スイート=甘い」という名のとおり、舌の上でとろけるようなやさしい甘さが魅力です。
見た目の特徴

形は均整の取れた紡錘形で、皮は薄く明るい赤紫色。果肉は淡いクリーム色で、加熱すると鮮やかな黄金色に変化します。紅はるかと見た目が似ていますが、シルクスイートのほうが皮の質感がなめらかで、加熱後にしっとりとした光沢が生まれるのが特徴です。
食味の特徴
シルクスイートは水分量が多く、加熱するとしっとりなめらかで、スイートポテトのような舌触りが楽しめます。繊維質が少ないため口当たりがよく、軽やかでクリーミーな甘さが特徴。焼き芋はもちろん、スイートポテトやモンブランなど、素材の味を生かしたスイーツにもよく合います。冷めてもパサつきにくいため、冷やし焼き芋にもおすすめです。
紅はるかとの違い

左から、紅はるか、シルクスイート、鳴門金時
紅はるかとシルクスイートは、焼き芋で人気を二分する品種ですが、それぞれに異なる個性があります。どちらも親品種に「春こがね」を持ちますが、紅はるかは「蜜芋」と呼ばれるように粘り気が強く、ねっとりとした濃厚な甘さが特徴。一方、シルクスイートはなめらかで上品な甘さが魅力です。焼き芋の人気品種で分類すると、鳴門金時が「ホクホク系」、紅はるかが「ねっとり系」なら、シルクスイートは「しっとり系」といえるでしょう。
実際に蒸した芋を比較したところ、糖度は紅はるかが約40度、シルクスイートが約30度、鳴門金時が約20度という結果に。数値からも、シルクスイートは濃厚すぎず上品で、飽きのこない甘さであることがわかります。

左から、紅はるか(神奈川県産)、シルクスイート(千葉県産)、鳴門金時(徳島県産)。糖度は各1本(約230g)を蒸し器で50分加熱し、果肉小さじ1杯を同量の水で薄めて屈折式糖度計で測定した値を2倍にして算出
旬の時期と主な産地
シルクスイートの収穫時期は9〜11月ですが、掘りたてよりも5週間ほど貯蔵して追熟させることで、より甘くしっとりとした食感になります。店頭に出回る食べ頃は11月から翌年2月にかけて。寒い季節に焼き芋で味わうと、上品な甘さがいっそう引き立ちます。
主な産地は茨城県・千葉県・福島県で、近年は鹿児島県や熊本県、福岡県など西日本でも栽培が広がっています。
栄養
シルクスイートは、エネルギー源となる炭水化物のほか、ビタミンCや食物繊維、カリウムを豊富に含み、美肌や腸内環境の改善に役立つといわれています。サツマイモのビタミンCはデンプンに守られているため、焼き芋や蒸し芋などの加熱調理でも損失が少ないのが特徴です。
皮にはポリフェノール、皮付近には整腸作用を持つヤラピンも豊富に含まれています。これらは比較的熱に強いため、焼き芋などに調理して皮ごと食べるのがおすすめです。シルクスイートは水分量が多く、食物繊維はやや少なめですが、その分なめらかで食べやすいのが魅力です。
焼き芋小1本(約150g)あたりのカロリーは約230kcalで、同量の白ごはんと同程度かやや低めです。脂質がほとんどなく、自然な甘みで満足感が得られるため、おやつやエネルギー補給にもぴったりです。
おいしいシルクスイートの見分け方

ふっくらとした紡錘形で、太さが均一なものを選びましょう。焼き芋やふかし芋には細長く小ぶりなものが扱いやすく、太く大きめのものはスイーツやおかずにおすすめです。皮にハリとツヤがあり、しなびていないものが新鮮。表面に黒い蜜のようなにじみが見られる場合は、ヤラピンが糖化して染み出たサインで、内部の糖度が高く、熟成が進んでいる証拠です。
シルクスイートの保存方法
新聞紙で包んで乾燥を防ぎ、段ボールやかごに入れて13〜16℃の常温で長期保存できます。冷蔵庫は低温障害の原因になるため避けましょう。収穫後は5週間ほど追熟させることで、甘みが増します。
焼き芋として長期保存する場合は、加熱後に皮付きのまま丸ごと冷凍し、食べるときに自然解凍または電子レンジで温めます。調理用には、加熱後に食べやすい大きさにカットして冷凍しておくと便利です。
シルクスイートの焼き芋&スイーツレシピ5選
しっとりとなめらかな食感が魅力の「シルクスイート」は、焼き芋はもちろんスイーツにもぴったりのサツマイモです。おいしく仕上げるコツは、65〜75℃の低温でじっくり加熱すること。デンプンが糖に変わり、自然な甘みとクリーミーな口どけが生まれます。ここでは、焼き芋の基本レシピと、焼き芋を使ったアレンジスイーツを紹介します。
※記載の加熱時間はMサイズ(約200g)を目安にしています。芋の大きさによって時間を調整してください。
基本の蒸し焼き芋|冷やしてもおいしい

蒸し器やせいろでじっくりふかすことで、シルクスイート特有のしっとり感を引き出します。仕上げにトースターで軽く焼くと香ばしさがプラス。冷蔵庫で冷やしてもおいしく楽しめます。
作り方
- よく洗ったシルクスイートを蒸し器(またはせいろ)に入れ、中火〜弱火で40〜50分、竹串がスッと通るまで蒸す
- 香ばしさを出したい場合は、蒸した後にオーブントースター(200℃)で約10分追い焼きする
オーブンでじっくり焼き芋|とろける甘さ

オーブンでじっくり加熱することで、外は香ばしく中はとろけるような甘さに。粗熱を取って冷やすと、スイーツのようなしっとり感が楽しめます。
作り方
- 洗ったシルクスイートをアルミホイルで包み、160℃のオーブン(予熱なし)で約90分焼く
- 竹串がスッと通ったら庫内で10分休ませ、しっとり仕上げる
基本のスイートポテト

シルクスイートの絹のようななめらかさを生かした定番スイーツ。焼き芋を使うと甘みが増して、スイーツ感がよりいっそうアップします。
材料(作りやすい分量・約6個分)
蒸し焼きしたシルクスイート200g、バター10g、砂糖小さじ2、卵黄1個、生クリーム大さじ2
作り方
- 蒸し焼きしたシルクスイートの皮をむいて裏ごしし、バターと砂糖を加えて混ぜる
- 生クリームと卵黄(ツヤ出し用に少し取っておく)を加えてなめらかに混ぜる
- 天板にクッキングシートを敷き、生地を成形して並べ、残りの卵黄を塗る
- 210℃に予熱したオーブンで15分焼き、表面に焼き色がついたら完成
皮ごとりんごスイートポテトカップ

皮付きのシルクスイートを輪切りにして器にし、りんごを混ぜたスイートポテト生地を詰めて焼き上げます。ほっくりした芋の甘さと、りんごの酸味が好相性です。
材料(作りやすい分量・約6個分)
蒸し焼きしたシルクスイート中1本(約200g)、りんご1/2個、バター10g、砂糖小さじ2、卵黄1個、生クリーム大さじ2、シナモン少々(好みで)
作り方
- 蒸し焼きしたシルクスイートを皮付きのまま3〜4cm厚に輪切りし、中央をスプーンでくり抜いてカップを作る。くり抜いた中身はボウルに取っておく
- りんごは皮付きのまま5mm角に切り、バターで炒め、砂糖小さじ1(分量内)とシナモンを加えて茶色くなるまで加熱する
- くり抜いた芋を裏ごしし、残りの砂糖・バター・生クリーム・卵黄を混ぜ、炒めたりんごを加えて軽く混ぜる
- 生地をカップに詰め、210℃のオーブンで15分焼き、表面に焼き色がついたら完成
シルクスイートのホットシェーク

焼き芋と牛乳をミキサーにかけて作る、冬にぴったりのあったかドリンク。朝食やデザートにもおすすめです。
材料(2人分)
焼き芋100g、牛乳200ml、はちみつ小さじ1、シナモン少々
作り方
- 材料をすべてミキサーに入れてなめらかになるまで攪拌する
- 小鍋で温め、カップに注ぐ
- 仕上げに生クリームや砕いたナッツ(分量外)をトッピングしてもよい
シルクスイートの栽培方法

シルクスイートは、他のサツマイモと同じく家庭菜園でも育てやすい品種です。ただし、ツル割れ病にかかりやすいため、苗は植え付け前に消毒するか、ウイルスフリー苗を購入すると安心です。植え付けは気温が安定する5月中旬〜6月上旬、収穫は10月頃が目安です。
準備
水はけのよい場所を選び、土を深く耕してから適量の堆肥を混ぜ込みます。堆肥を入れすぎるとツルばかり伸びて実が肥大しない「ツルぼけ」になるため、1平方メートルあたり50g程度にとどめましょう。プランター栽培では、深型の鉢に野菜用培養土を使うと手軽です。
植え付け
種芋ではなく苗を使い、畝を立てて30cm間隔で斜めに3〜4節を差し込みます。やや深めに植えると根張りがよくなります。
管理・水やり
植え付け直後はたっぷりと水を与え、その後は乾燥気味に管理します。ツルが地面を覆い始めたら、節から根が出て栄養が分散しないよう「ツル返し」を行い、芋の肥大を促します。
収穫
植え付けから110〜120日ほど経ち、葉が黄ばんできたら収穫の合図です。100日を過ぎた頃に試し掘りして大きさを確認するとよいでしょう。ツルを短く残して株元を持ち、傷をつけないよう丁寧に掘り取ります。収穫後は2週間〜1カ月ほど風通しのよい場所で貯蔵すると、デンプンが糖に変わって甘みが増します。
絹のような口どけで用途が広がる
シルクスイートは、紅はるかと並ぶ人気品種として、近年の焼き芋ブームを支えるサツマイモです。紅はるかが粘質系でねっとりと濃厚な甘さを持つのに対し、シルクスイートは水分が多く繊維が少ないため、絹のようになめらかでしっとりとした食感が特徴。スプーンですくって食べることもでき、その上品な甘さと口どけのよさから、広く親しまれています。

糖度は紅はるかよりやや控えめながら、十分な甘みとコクがあり、冷やし焼き芋にしてもおいしく、すっきりとした後味が魅力です。スイートポテトなどのスイーツ材料としても評価が高く、煮崩れしにくいため煮物にも適しています。離乳食や介護食にも使いやすく、子どもからお年寄りまで幅広い世代に愛される万能なサツマイモ。焼き芋はもちろん、スイーツ、おかず、ドリンクなど、新しい食べ方を試してみてはいかがでしょうか。


















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