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主枝を理解すれば剪定が怖くない! 果樹の骨格づくりの基本

主枝を理解すれば剪定が怖くない! 果樹の骨格づくりの基本

剪定(せんてい)で最も大切なのは、実は細かい枝の処理ではなく「骨格」を理解することです。人間に背骨があるように、果樹にも主幹・主枝・亜主枝という骨組みがあり、これらが木の一生を支える土台となります。骨格さえしっかりしていれば、多少の剪定ミスがあっても木は元気に育ち、安定して果実を実らせてくれます。逆に骨格が乱れていると、どんなに細かい手入れをしても良い結果は得られません。この記事では、果樹の骨格を構成する各部位の役割と、理想的な骨格づくりの方法を解説します。

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前回まで枝の種類について学んできましたが、今回はいよいよ剪定の本丸、「骨格」について解説します。果樹栽培の成功は、この骨格で8割が決まると言っても過言ではありません。なぜなら、骨格は一度作ってしまうと後から修正することが非常に難しく、その木の一生の生産性を左右するからです。

樹木はフラクタル構造?

果樹を前にして剪定バサミを持つと、誰もが立ちすくんでしまいます。縦横無尽に伸びた枝、複雑に絡み合う樹形、どこから手をつけていいのか見当もつきません。
でも、ちょっと待ってください。木の全体を見ると複雑でややこしいですが、一部だけを切り取って見てみましょう。木というのは一部と全体がよく似ている「フラクタル構造」を有しています。

まず、剪定されていない1本の枝を手に取ってみてください。太い部分から細い枝が分かれ、その細い枝からさらに細い小枝が出ています。よく見ると、分岐の仕方には規則性があることに気づくでしょう。太い枝から出る細い枝の角度、間隔、そして勢いの違い。この小さな枝の中に、実は木全体の設計図が隠されているのです。

例えば、真っすぐ上に伸びた部分では角度が急で、強く伸びています。下に下がるにつれて、小さな枝が均等に出ているかもしれません。角度はおとなしめでしょう。下向きに垂れた部分は勢いを失い、新しい枝の発生も少ないはずです。
このような枝が出ているということは、木全体の意思としても地面と垂直方向に強く伸びたい、そして横に弱い枝を出したいと思っているということです。切らずに放っておくとどんどん高くなります。

一方、低い位置から強い枝が出ているような木の場合、あまり高くならなくてもよいから横に広がりたいと願っていることがわかります。

この観察から何がわかるでしょうか。そう、木全体でも同じことが起きているのです。枝が分かれる角度、枝が出る間隔、これらすべてが、手のひらの上の小枝と同じ法則に従っているのです。
分岐せず一直線に伸びようとする木もあります。それぞれの木が、原産地において他の植物との競争の末たどり着いた戦略があるんですね。この植物の意思を尊重したり、制御したりして私たち人間のために都合の良い状態を作り出すことが剪定の目的です。

観賞用か、収穫用か

本格的に剪定をはじめる際に一番重要なことは、その木の骨格を作り出すことです。
もちろん放置していても十分に植物は花や果実をつけますが、人間の手の届かないところに着果させるようになってしまいます。だって自然界では、鳥に食べてもらった方が遠くに種を運んでくれますからね。

カラスの餌を作っているならそれでもいいですが、やはり人間の手の届く範囲に収めたい。それが栽培ですので、人間はその技術を数千年間磨いてきました。

なので、果実を収穫する剪定と、葉や花を観賞する剪定では切り方が全く違います。

もしも花を見るだけ、葉で庭の目隠しをしたいだけであれば、バリカンでバリバリ刈り込むように形を整えるとよいでしょう。当然ハサミで全て表層を切るだけで構いません。
これを続けていると、切られた部分から分岐、分岐を繰り返し、葉や花が表面に密集します。密集すると、樹冠内に太陽光が当たらないので、内側は全て枯れ上がりますが、庭木の役割は十分果たすことができますね。


全く剪定をしなくても同様のことが起こります。公園にあるサクラの木には、誰も剪定していないようなものも多く見られます。そういった木の中は全部枯れていて、表層だけにみっちり花が咲きます。
では果実の収穫用の剪定とは何が違うのでしょうか。サクラの木だって、サクランボを収穫しようと思えば剪定が必要になります。果樹として剪定するとき、木の骨格づくりはどうすればよいか、部位ごとに見ていきましょう。

主枝(しゅし):骨格の要

主枝は主幹から直接分かれて伸びる太い枝で、木の骨格の中核を成します。主枝の数、角度、配置が、その木の一生の形を決定づけると言っても過言ではありません。主枝選びは、まさに果樹栽培の最重要ポイントなのです。
主枝とは何か、と言われても、植物の方が「私が主枝になります」と主張して連携をとりながら生長するわけではありません。人間が勝手に「これを主枝と呼ぼう」と決めてしまいます。なので、あなたの木の主枝はあなたが決定してください。
厳密に理想的な主枝を作ろうと思えばその判断基準はいくらでもあるのですが、とりあえず1本の木の中から、「こいつを主枝にしよう!」と選んであげてください。

主枝は1本でも2本でも3本でも構いません。普通はどんなに多くても4本までとするのが定説ですが、楽しむための木であればさほど気にせず、残したいものを残せばよいです。

理想的な角度は地面に対して水平から30~45度程度で2本主枝がメインです。これより立っていると、木が高くなりやすくなります。逆に垂れ下がりすぎると、枝の勢いが弱くなります。上向きの力を取り返そうとして徒長枝がビュンビュン出てきたりもします。若木のうちは支柱やひもを使って誘引し、理想的な角度に固定することが大切です。

ただし、スペースに限度があるなど、理想的な角度にすることはほとんどの場合困難です。プロ農家でも、理想の状態であることは少ないので、皆さんのお庭に合わせて、「これを主枝に決める」ことが大事です。

いきなり切りすぎると木に相当のダメージがあるので、毎年ちょっとずつ切り落としていくとよいです。本当は仕立てる若木のうちからやっておく作業ですので、後から修正しようと思ったら時間がかかります。
もしどの骨格も、主枝にしたいのが無いな、と思ったらイチから作り直すのもよいでしょう。欲しいところから出ている強い枝を大事に育てて、主枝にしていきます。近くに大きな枝があったら、その主枝候補の枝にたっぷり太陽が当たるように切り落として生長を促進させましょう。

重要なのは、主枝と主枝が重なって日陰を作っていないことです。重なっている場合はどちらか好きな方を残して一方は完全に切り落としてしまいましょう。

亜主枝(あしゅし):生産の実働部隊

亜主枝は主枝から分かれて伸びる、主枝より一回り細い枝で、ここまで含めて骨格とします。ただし、骨格が複雑になると剪定も複雑になるので、応用的なものだと思ってもらってもよく、無いなら無いで構いません。
主枝だけでは埋められなかったスペースを亜主枝で埋めるために両腕を広げ、スペースいっぱい有効活用しようという意図があります。

勘の良い人は、そんなことしなくても、主枝をたくさん配置すればスペースの無駄はなくなるんじゃないの?と思うかもしれません。それは正しいです。

ただ、木の根元は勢いの強い枝が出やすくて混み合いやすく、果実の品質も低くなりがちなので、亜主枝という手法が選ばれてきました。たくさん主枝を配置する方がわかりやすいのでそれでももちろん構いません。剪定に正解はありません。

亜主枝の配置には明確なルールがあります。まず、主枝の基部(付け根)から50センチ以上は空けて、最初の亜主枝を出させます。その枝は亜主枝というよりもう一個の主枝になります。それ以降も50~70センチ間隔で互い違いの向きに亜主枝を配置していきます。同じ側に連続して亜主枝を出すと、バランスが悪くなり、主枝の生長に影響が出てしまうことがあります。

亜主枝の方向も重要です。基本的には主枝に対して45~60度の角度で、外側に向かって伸ばします。若干内側に向かうくらいの方が、生育が落ち着くのでおすすめです。重要なのは、主枝の真上から発生した枝を使わないこと。真横や、若干下から出てきた強い枝を亜主枝にするのが定石です。上からでた枝は強く上に生長しようとするのでね。

側枝(そくし):果実生産の最前線

ここが一番重要です。側枝とは主枝や亜主枝から出る細い枝で、果実がなったり葉っぱがついたりする枝全般のことをいいます。剪定講座の第1回で説明した、徒長枝や結果枝、結果母枝などもすべて側枝と捉えてください。

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ここに葉や花、果実がつくのでとても重要なのはわかるのですが、本当に重要なのは、この大事な大事な葉や花のつく側枝を、切り落として更新していくことです。
主枝と亜主枝はずっとこのまま。側枝だけを延々と毎年更新していきます。それが果樹の剪定です。
側枝の耐用年数は1〜5年くらい。ブドウタイプは1年、モモタイプは2〜4年、リンゴタイプは3〜5年くらいたったら根元から切り落として、新しい1年目の枝を育てていきます。
常に1年目の新人側枝、ベテランの4年側枝が共存していてぐるぐる循環していることが果樹剪定の肝になります。
これによって、常に木の内部まで枯れることなく、上から下まで葉や花、果実が実る、人間にとっても植物にとってもwin-winな状態をつくることが可能になるのです。カラスにとっては不都合かもしれませんが。
どうでしょう、骨格はすごく大切ですよね?

よくある骨格づくりの失敗と対処法

骨格づくりでよくある失敗は「知らなかった」ということに尽きます。若木の頃からこれを理解して仕立てていなければならないものですので、知らなかったならしょうがないのです。場合によっては、思い切って伐採し、もう一度やりなおす勇気も必要です。

しかし、家庭果樹においては、せっかく大きくなった木を伐採するよりも、ちょっとずつ改良して、目的の形に改造していくほうが良いでしょう。
「側枝や亜主枝が主枝より強くなりすぎる」のが全ての問題の根源です。「主枝はこれ」と決めたら、側枝はどんどん更新していく。もったいないからと放置しておくと、側枝だったものが徐々に亜主枝のように長大になり、結果主枝が2本3本と増えていって、混み合いすぎて樹冠内に日が当たらなくなって枯れ上がるという結果になります。

まとめ:骨格は果樹との長い付き合いのための基礎

果樹の骨格づくりは、その木と長く付き合っていくための基礎工事です。最初の数年間でしっかりとした骨格を作れば、その後の管理は格段に楽になり、安定した収穫を長年にわたって楽しむことができます。

主枝、亜主枝、側枝それぞれに明確な役割があり、これらが調和して初めて、健全な果樹として機能します。骨格づくりは確かに難しく感じるかもしれませんが、基本原則を理解して、じっくりと木と向き合えば、必ず良い骨格を作ることができます。
焦らず、数年かけて理想の樹形に近づけていきましょう。失敗しても、果樹は意外と寛容で、修正のチャンスを与えてくれます。大切なのは、毎年の変化を観察し、その木に合った管理を続けることです。良い骨格を持つ果樹は、きっとあなたの期待に応えて、おいしい果実を実らせてくれるはずです。
この骨格を理解した上で、第1回の側枝の扱い方を見てみると全体像が見えてくると思います。

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