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売り上げは就農時の5倍 150haの農地であえて多品種に挑戦した理由

吉田 忠則

ライター:

連載企画:農業経営のヒント

売り上げは就農時の5倍 150haの農地であえて多品種に挑戦した理由

地方の大産地という言葉を聞いて、多くの人が真っ先に思い浮かべるのが北海道だろう。そして北海道で代表的なのが、品目を絞って広大な農地で育てるスタイルだ。だがそんなイメージを覆し、多品種で強みを発揮している農場がある。VIVAFARM(ビバファーム、北海道剣淵町)を取材した。

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45種類のジャガイモを栽培

ビバファームのある剣淵町は、旭川から北へ車で1時間ほどの場所にある。代表の高橋朋一(たかはし・ともかず)さんは「自分たちで作ったものを自分たちで売ろうと心に決め、現在まで突っ走ってきた」と話す。

畑の面積は150ヘクタール。小麦や大豆など北海道で一般的な作物は、地元の農協に出荷している。父親の代と同じ販売方法だ。

これに対しスイートコーンやジャガイモは、仲間の農家と一緒に設けた販売会社で、高橋さんが代表を務める「けんぶちVIVAマルシェ」に出荷している。その先にいる買い手は全国のホテルや飲食店、スーパーなどだ。

特筆すべきはジャガイモの種類の多さ。栗のような甘みが特徴の「インカのめざめ」や紫色の「シャドークイーン」、ピンク色の「ノーザンルビー」など育てている品種の数は45。高橋さんは「カラフルポテト」と呼ぶ。

農地が狭い都市近郊では、地方の産地と差を出すために品種の数を増やすのは珍しいことではない。だが北海道ではあまり聞かない。

なぜ高橋さんは畑の広い北海道で品種を増やすことを決断したのか。それを理解するために、いったん高橋さんの歩みを振り返ってみよう。

色とりどりのジャガイモ

「儲からなくて、面白くない」というイメージを一新したい

「農業は格好良くない。儲からなくて、面白くなくない。やって当たり前で誰からも評価されない」。高橋さんは若い頃、農業に対してそんな不満を抱いていたという。かつて多くの農家の子どもが感じていたことだ。

高校を卒業し、農協で1年ほど働いた後、会社勤めに転じた。主な仕事は海外から輸入された電化製品の営業。だが農業をやってみようと思い直し、30歳になるのを前に実家に戻って就農した。2006年のことだ。

仕事が苦手だったわけではない。むしろ逆。営業のスキルに自信を持ち、極めたいとも思っていた。問題は出張が多すぎること。家族との時間を確保するのが難しく、「一生やる仕事ではない」と見切りをつけた。

農業をやる以上、目標は決まっていた。面白くて儲かって、格好良い仕事にすることだ。ではどうやってそれを実現するか。

出した答えは地域で仲間を集め、企画を立てて一緒に農産物を売ることだった。新たな試みとして「軽トラマルシェ」をスタートさせた。

トウモロコシを収穫する高橋さん

スーパーフードのキヌアに挑戦

軽トラマルシェは農産物を軽トラに載せ、イベントなどで販売する取り組みを指す。2010年に開始し、2013年に商標登録した。旭川のラーメン村や学園祭、スーパーなど、現在までに200カ所に出向いて販売した。

その際、高橋さんたちが力を入れたのが、作物のバリエーションを増やすことだった。ただし多品種にするといっても、全く別の作物ばかりだと栽培技術の向上に時間がかかる。効率アップの妨げにもなる。

そこで考えたのが、同じ品目の中で種類を増やすこと。例えばミニトマトを育てている農家は、50種類のミニトマトを作る。カボチャなら30種類。高橋さんが45種類のジャガイモを作っているのはそのためだ。

ジャガイモの販売の様子

こうした取り組みの一環として、10年前から挑んでいるのがキヌアの栽培だ。

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