【理由その1】不便さ故の「衝動買い自動回避」
田舎には商店があまりありません。よって「会社帰りに買い物したら買いすぎちゃった!」という事態はほぼ起こりません。あるとしたら農協の購買で「むしパンミックス」を1袋買っちゃったわ、くらいのレベルです。
決して物欲がないわけではありません。例えば、有名コーヒーショップの「期間限定○○フラペチーノ」などをSNSで見かけて「絶対飲みたい!」と思いますが、筆者が住む地域では最寄りのショップまで片道一時間以上かかります。数週間後にたまたま近くを通ったときには既に熱量が冷めていて、結果的に「もう飲まなくてもいいかな…」と、衝動買いが避けられているのです。

そもそも車移動が基本なので、駅のポスターや中吊り広告を見る機会がありません。近くにコンビニもないので「新作スイーツ」や「○○フェア」が知らないうちに終わっています。衝動買いを防ぐ極意としては一般的に「時間を置く」「情報を遮断する」などが常套手段ですが、田舎で生活していると、図らずもこれらの要度が達成されています。日々の小さな買い物の積み重ねがなくなることで、年間を通して大きなお金が貯まるようになったと実感します。
【理由その2】服飾費の大幅カット

田舎から都会の会社に通うタイプの人だと話は変わりますが、田舎住まいでかつ田舎で働いている場合、だんだんとおしゃれに対する気力が消えていきます。特に筆者のような農業者では、家族以外の人に会うのは直売所に行ったときくらい。地元のマダムたちはエプロンかちゃんちゃんこが定番なので、ユニクロのパーカーを着ていけば適度なフレッシュ若者感がばっちり演出できます。ファッション誌の「オフィスの着回し30days」を読んでいた筆者は今や「パーカー 365days」です。

先日、都会に出かけた際に実感したのですが、ファッションというのは自己表現だけでなく、自らを取り巻く集団との適応にも用いられています。「街に行くからオシャレしなきゃ」という感情は、街がオシャレな場所であることに加え、街にオシャレな人がたくさん集まっているから同調しなくてはという心理が働くのでしょう。周囲が新色チークやトレンドのパンツに一切関心を示さない中で「今年の流行にアップデートしよう」という気持ちは、よほど内発的な思いが強くないと一人で維持することは困難です。元来オシャレでなく周りに合わせていただけの私は、田舎でもオシャレし続けられる友人を「真のオシャレ人」として尊敬の眼差しで見つめています。
【理由その3】外食難民で、自炊がマストに

都会では日常的な外食ですが、田舎での外食には計画性が必要です。ただでさえ数少ない田舎の飲食店は、近年の高齢化でさらに減少傾向。しかも個人経営の店がほとんどなので、閉店時間が早かったり、不定休のため、ちょっと食べに行こうと思ったら閉まっていたということもしばしばあります。
街の飲食店へのアクセスが1時間もかかるような田舎だと「今から自分で作った方が早い」となるのは当然でしょう。結果、わが家の外食は日常的な選択肢の一つから、特別な日のお出かけへと変化しました。2024年の総務省家計調査では、二人以上の世帯が月に約1万5000円を外食に使っているという結果が出ていますが、これほどの外食費を支出することはほぼありません。

また、総菜を購入しようと思っても、お総菜屋さんも昼までしか開いていないとか、毎日同じお店のお惣菜だと飽きるなどの理由もあり、買う頻度はかなり少なくなりました。外食はもちろん中食も買わない材料費だけの自炊が毎日となると、ずいぶんお金が貯まります。ちなみに総菜を買わないと、かさばりがちな容器類のゴミが減り、ゴミ袋が一つ下のサイズで済むというのは新たな発見でした。
【理由その4】「必要なもの」に対する価値基準の変化
ここまで紹介してきたように、田舎暮らしではお店が遠い(物理的距離)、看板やポスターなどマーケティング商材が目に入りにくい(情報遮断)、都会的な身だしなみに揃えなくてよい(同調心理の不在)などにより、物欲を刺激する機会が著しく減少します。その結果、私は本当に物を買わなくなりました。

周りに流されずよく考えて判断するうちに、本当に求めていたものは想像していたよりも遥かに少ないことに気づいたのです。そして、これまでは本当に必要なものを買っていたのではなくて、さまざまな刺激によって「必要だと思わされていた」のだと感じました。自分自身と向き合い、深く考えることで「足るを知る」境地にたどり着いたのです。これは自分の適正量を大切にするミニマリストの感覚に近いかもしれません。
「田舎だってネットなら広告も目に入るし通販でいくらでも買い物できるから危ないのでは?」と思われるかもしれません。けれど、外部刺激を上回る内省的な価値基準が確立された今、ネットショッピングの罠にハマることもないだろうと思っています。
【理由その5】都市と地方の社会構造の違い

上記のような節約行動の全てを、物欲で説明できるわけではありません。要因の一端としては、都会暮らしと田舎暮らしの構造的な違いもあるでしょう。
都市生活というのは仕事が高度に専門化した労働市場の上に成り立っています。そのため、基本的な生活機能(食、移動、修繕、娯楽など)の多くが外部サービスに置き換わり、貨幣でのやり取りが必要になります。つまりお金を介さなくては快適な暮らしを送るのが難しい面があり、それは「消費が暮らしを作る」という都市型資本主義社会を形成しています。
一方、田舎暮らしには家庭菜園やDIY、地域での助け合いなど、未だ貨幣を介さない暮らしの支えとなるものが残っています。もちろん田舎でも価値観の都会化が進み、年々その度合いは変わってきていますが、消費するだけではない、食べ物を生み出すという生産者的機能が残っていたり、お金を介さない労働力の直接のやりとりなんかがあり、お金に依存しなくても生活の一部分が回る構造が見られます。「田舎で暮らしていたらお金を使うことが減った」という現象は、このように社会構造の違いが影響していると見ることもできます。
まとめ
田舎=必ず節約できるとは限りません。自動車の維持費などの交通費やインフラ、災害対策など費用が都市よりも高額になる場合ももちろんあります。それでも、あなたの求める生活スタイルが田舎と親和性が高い場合には、大きな節約につながる点もまた事実ではないかと思います。楽しく充実した生活を送るには、目先の節約よりも自分のライフスタイルを大切にしながら暮らせる場所を選ぶことも重要でしょう。

















