かつお菜とはどんな野菜?

かつお菜は、福岡市を中心に古くから栽培されてきたアブラナ科の葉野菜で、カラシナ類のタカナの仲間です。濃い緑色の葉は長さ40センチ、幅25センチ前後と大ぶりで、肉厚でちりめんのような深いしわがあります。アミノ酸を多く含むため、汁物や煮物に使うとかつお節のようなうまみが出ることから「かつお菜」と呼ばれるようになったとされています。
漢字では「勝男菜」と書くことから、縁起のよい食材としてお正月料理に使われるようになり、特に福岡の「博多雑煮」には欠かせない存在です。福岡市を中心に、糸島市、北九州市、粕屋町など県内各地で生産されており、県外ではあまり見かけることのない、郷土色が強い伝統野菜のひとつです。
山形のかつお菜との違い
山形県酒田市にも「かつお菜」と呼ばれる伝統野菜があります。福岡のかつお菜とは品種や来歴が異なり、コマツナの一系統と考えられています。春先につぼみが出る前の茎葉を食用とし、こちらもうまみが感じられることから同じ名が付いたとされています。本記事では、福岡のかつお菜を紹介します。
食味の特徴
かつお菜の特徴は、名前の由来にもなったかつお節のようなうまみです。アブラナ科特有のほろ苦さがありながら、「だしいらず」といわれるほどの深いうまみが重なり、煮るだけで吸い物や雑煮の味が決まるほど存在感があります。
葉は肉厚で食べ応えがあり、芯はシャキッとした歯ざわりが特徴。主な用途は雑煮の青味ですが、煮ても炒めても歯ざわりが残るため、汁物・煮物・炒め物など幅広い料理で活躍します。
旬の時期
かつお菜は、9月上旬に種をまき、12月〜1月に収穫の最盛期を迎えます。寒さに当たることで葉がしまり、うまみと甘みがぐっと増していきます。市場には秋ごろから出回りますが、特に正月用として需要が高まる年末に出荷のピークを迎えます。
かつお菜の主な栄養素とその効果

かつお菜は、βカロテンをはじめ、ビタミンC、葉酸などを豊富に含む緑黄色野菜です。カルシウム量も多く、コマツナに匹敵するほど。さらに、食物繊維や、目の調子を整える機能性成分ルテインも含まれています。また、遊離アミノ酸の含有量が高く、うまみ成分であるグルタミン酸やアスパラギン酸が豊富なのも特徴です。
βカロテン
体内でビタミンAに変わり、皮膚や粘膜の健康維持、免疫力アップに役立ちます。油と合わせて調理すると吸収率が高まります。
カルシウム
骨や歯の形成に欠かせない栄養素で、筋肉の収縮や神経の働きを助ける役割もあります。かつお菜は葉物野菜の中でもカルシウムを比較的多く含んでいます。
葉酸
赤血球の生成を助ける栄養素で、貧血予防や妊娠期の栄養補給にも重要とされています。
かつお菜の選び方

かつお菜は、葉を3枚ほど束ねて販売されることが多いです。葉が鮮やかな緑色で光沢があり、肉厚で張りのあるものを選びましょう。葉の表面の縮み(ちりめん状のしわ)が細かいほど食感が良く、うまみも凝縮されています。
しおれているものや、葉に黄色い変色が見られるものは鮮度が落ちているため避けたほうがよいでしょう。
かつお菜の保存方法
かつお菜は乾燥に弱いため、水で湿らせた新聞紙やペーパータオルで軽く包み、ポリ袋に入れて野菜室で、できれば立てて保存します。使いかけは芯と葉を分けて密閉容器に入れ、冷蔵庫で保存。2〜3日をめどに使い切りましょう。
冷凍する場合は、軽く下ゆでして水気をしっかり切り、小分けにして保存袋へ。炒め物や汁物にそのまま使えて便利です。
かつお菜の食べ方とレシピ5選
かつお菜は、加熱調理が基本です。おひたしや汁物、炒め物など幅広い料理に使え、葉と芯を分け、葉は後から加えると、それぞれの食感を生かして仕上がりがきれいです。また、高菜の仲間のため、刻んで浅漬けにしても風味豊かに楽しめます。ここでは、副菜・汁物・主菜・ご飯ものまで、かつお菜のうまみが引き立つレシピを紹介します。
かつお菜と豆腐のだし香るおひたし

かつお菜の持つだしのようなうまみを生かした、やさしい味わいのおひたし。豆腐を合わせることで素材の風味がより引き立ちます。
材料(2人分)
- かつお菜 1枚(約90g)
- 木綿豆腐 1/2丁
- かつお節 適量
- しょうゆ 小さじ2
- みりん 小さじ1
作り方
- かつお菜は芯と葉に分け、熱湯で芯→葉の順にさっとゆでて冷水にとり、水気をしぼって食べやすく切る
- 豆腐はペーパータオルに包んで軽く水切りし、一口大に手でちぎる
- ボウルにかつお菜と豆腐を入れ、しょうゆ・みりんでさっと和える
- 器に盛り、かつお節をのせる
かつお菜としらすの混ぜご飯

かつお菜のうまみをいかした、風味豊かな混ぜごはん。しらすの塩気と相性がよく、冷めてもおいしくお弁当にも。今回は玄米ご飯で作りました。
材料(2人分)
- 温かいごはん 300g
- かつお菜 1/2枚(約45g)
- しらす 大さじ3
- 白ごま 小さじ2
- しょうゆ 小さじ2
- ごま油 小さじ1
作り方
- かつお菜は細かく刻み、熱湯でさっとゆでて水気をしぼる
- ボウルに温かいごはん、かつお菜、しらす、白ごまを入れる
- しょうゆ・ごま油を加えてさっくり混ぜる
- 味を見てしょうゆ(分量外)で調える
かつお菜と厚揚げのみそ炒め

厚揚げのコクとかつお菜のうまみで、ご飯が進むみそ炒め。サッと作れてボリュームもあり、日常おかずに便利です。
材料(2人分)
- かつお菜 2枚(約180g)
- 厚揚げ 1枚
- サラダ油 小さじ1
- みそ 大さじ1
- みりん 大さじ1
- 砂糖 小さじ1/2
作り方
- かつお菜は葉と芯に分け、食べやすく切る。厚揚げは一口大に切る
- フライパンに油を熱し、厚揚げを焼き色がつくまで炒める
- かつお菜の芯→葉の順に加えて炒め、みそ、みりん、砂糖を加えて全体を絡める
かつお菜と鶏だんごの汁

かつお菜のうまみと鶏だんごのやさしい味が調和する、冬にうれしい汁物です。
材料(2人分)
- かつお菜 1枚(約90g)
- 鶏ひき肉 150g
- 長ねぎ(みじん切り) 5cm分
- ショウガ(すりおろし) 小さじ1/2
- にんじん 1/4本(細切り)
- だし汁 400ml
- 塩 少々
- しょうゆ 小さじ2
【A:鶏だんご用調味料】
- 酒 小さじ1
- しょうゆ 小さじ1/2
- 片栗粉 小さじ2
- 塩 少々
作り方
- かつお菜は葉と芯に分け、芯は2〜3cm、葉はざく切りにする。にんじんは細切りにする
- ボウルに鶏ひき肉、長ねぎ、ショウガ、【A】を入れて混ぜ、一口大のだんごにする
- 鍋にだし汁とにんじんを入れ、中火で煮立てて鶏だんごを落とす
- アクを取り、かつお菜の芯→葉の順に加え、塩・しょうゆで味をととのえる
- ひと煮立ちしたら火を止める
かつお菜と豚バラのミルフィーユ蒸し〜ゆず風味〜

白菜ミルフィーユ風に、かつお菜と豚バラを重ねて蒸し煮にした一品。かつお菜のうまみと豚バラのコクで味わい、ゆずの香りが広がります。
材料(2人分)
- かつお菜 2枚(約180g)
- 豚バラ薄切り肉 150g
- しめじ 適量
- ゆず皮(すりおろし) 少々
- しょうゆ 大さじ1
- みりん 大さじ1
作り方
- かつお菜は葉と芯に分け、葉は大きければ縦半分に切る。芯は火が通りやすいように薄くそぎ切りにする
- まな板にかつお菜の葉を広げ、その上に豚バラをのせ、芯を散らしながら、葉→豚バラ→芯→豚バラの順に重ねて層にしたら、全体を軽く押さえて整え、3〜4cm幅に切る
- 切り口を上にして鍋に並べ、かつお菜の端材としめじで隙間を埋める
- 水としょうゆ・みりんを加え、ふたをして中火で7〜8分、豚肉に火が通るまで蒸し煮にする
- 器に盛り、ゆず皮を散らして仕上げる
かつお菜の栽培方法

かつお菜はタカナの仲間で、比較的育てやすい葉物野菜です。春と秋に種まきできますが、病害虫の被害が少ない秋まきがおすすめです。暖地・中間地では11月ごろから収穫でき、寒冷地では越冬させて春先に収穫します。深型プランターでも栽培可能です。
準備
畑は種まきの2週間前までに耕し、堆肥と石灰資材を混ぜて畝を作ります。プランター栽培の場合は、日当たりのよい場所に置き、市販の野菜用培養土を使うと手軽です。
種まき
9月上旬ごろ、株間40cmで点まきするか、深さ1cmのまき溝を作って筋まきし、発芽後に間引きながら育てます。まいたあとは薄く覆土し、たっぷり水を与えます。
管理・水やり
発芽後は、土の表面が乾いたら十分に水やりします。生育に合わせて間引き、本葉5〜6枚までに1本立ちにします。追肥は株の生育を見ながら適宜行います。
収穫
草丈が30cmほどになったら収穫できます。外葉から順にかき取れば、とう立ちする春先まで長く収穫できます。

気をつけたい病害虫と対策
かつお菜はアブラナ科のため、アブラムシ・アオムシ・コナガなどの害虫がつきやすい野菜です。初期生育の段階で防虫ネットを張ると被害を大きく減らせます。アブラナ科の連作は避け、風通しのよい環境で育てましょう。
アブラムシ
日当たりや風通しが悪い場所で発生しやすく、葉裏や新芽に群がって汁を吸います。見つけたら水で洗い流す、粘着テープで取り除くなどして早めに対処します。黄色に集まる性質を利用した黄色粘着板の設置も効果的です。
アオムシ
アブラナ科を好む緑色の幼虫で、葉を食害します。種まき直後から網目の細かい防虫ネットや寒冷紗を張り、チョウの侵入を防ぐのが最も効果的です。小さいうちに見つけて手で取り除くと被害を抑えられます。
コナガ
春から秋の暖かい時期に多く発生し、幼虫が葉や新芽を食害します。薬剤での防除が難しいため、防虫ネットや寒冷紗で成虫の侵入を防ぐことが基本です。アブラムシ対策としても同じネットが有効です。
冬の台所に受け継がれる福岡の味
博多の町では、年の瀬になると市場にかつお菜が並び、お正月を迎える準備が始まります。江戸時代中期にはすでに栽培されていたとされるこの伝統野菜は、博多雑煮に欠かせない存在として、長く地域の食文化を彩ってきました。

昭和40年代には、福岡市中央卸売市場の10番売り場が年末にかつお菜一色に染まるほどの出荷量を誇ったそうです。近年は気候変動の影響で栽培の難しさが増していますが、地元の料理研究家や野菜ソムリエたちが、正月以外の日常使いを広げようと、新たなレシピ提案や情報発信に力を入れています。
雑煮のイメージが強いかつお菜ですが、和え物、漬物、煮物、鍋料理、炒め物と、実は幅広い料理に活躍する万能野菜です。βカロテン、カルシウム、アミノ酸を豊富に含み、栄養面でも優れています。福岡の冬を支えてきた青菜の深いうまみを、ぜひ日々の食卓でも楽しんでみてください。
取材協力:日本伝統野菜推進協会





















読者の声を投稿する
読者の声を投稿するにはログインしてください。