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コナガの生態とは? 駆除に効果的な薬剤や予防法も紹介

鮫島 理央

ライター:

コナガの生態とは? 駆除に効果的な薬剤や予防法も紹介

キャベツや大根、ブロッコリーなどを食害してしまうコナガ。農業の現場だけではなく、家庭菜園など身近な場所でもよく見かける害虫です。食欲も旺盛で放置していると葉がボロボロにされてしまい、大きな被害になってしまった方も多いのではないでしょうか。本記事では、コナガの駆除に効果的な薬剤や、発生を抑える予防法について詳しく紹介していきます。コナガなど害虫はしっかり予防をすることで発生数を抑え、防除がしやすいようにすることが大切です。ぜひ参考にしてみてください。

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コナガとはどのような生態の害虫?

コナガはチョウ目に属する昆虫で、アブラナ科の植物(キャベツや白菜、大根やブロッコリーなど)を食害する害虫です。幼虫は体長が最大10ミリほどの大きさになり、青虫のような姿をしています。生まれてすぐの幼虫は葉の表面を食い破り内部を食害しますが、大きくなると葉の裏面に定着し、葉に穴を空けるようになります。成虫は体長10ミリほどで、短距離を不規則に飛び回るような移動の仕方をします。茶褐色の見た目をしていて、生涯に100~200個の卵を産卵すると言われています。

発生時期が4~11月と長く、特に春と秋によく発生しますが、寒さには弱く冬ではあまり見かけません。幼虫から成虫まで2週間ほどで成長してしまうため、年間5~10回ほど発生するケースも多く、また気流にのって作物間を移動するため、被害が広がりやすいと言われています。そのためしっかりとした防除が必要ですが、薬剤耐性が高い個体も多く確認されているため、さまざまな方法で防除をすることが大切になります。

コナガが発生しやすい時期や生じる食害

コナガは4~11月と、冬の寒い時期以外であれば繁殖できる虫ですが、特に発生しやすい時期があります。生育適温が20~25℃くらいと、暖かい気温を好むコナガは、5~7月と9~10月の春と秋に特に多く発生します。なお、暖地など冬でもある程度暖かい気候の場所では、冬の期間も発生するので、注意が必要です。

葉の内側から食い破り、表側の表皮と大きな葉脈を残すように食害します。被害箇所が薄い膜のような状態になるので、目視でもわかりやすいでしょう。発生シーズン中にキャベツや大根などを栽培する際は、必ずコナガ対策を行うことが大切です。ただしコナガはアブラナ科であれば雑草にも発生するので、圃場(ほじょう)全体をしっかり管理しなくてはなりません。

コナガとアオムシの違いや見分け方

コナガとアオムシは両者ともアブラナ科の野菜に発生するチョウ目の害虫で、どちらも4~11月と同じ時期に発生します。どちらもチョウ目に属する昆虫だけあって、小さな幼虫のときは見分けがつきにくいですが、成長するにつれてさまざまな違いが出てきます。正しい防除をするためにも、しっかりと見分けがつくように下記のポイントを抑えましょう。

体の色やサイズ

コナガ:体長は最大10ミリで、若齢のうちは鮮やかな緑色ですが、成長すると濃い緑になります。
アオムシ:体長は最大30ミリで、淡い緑色をしています。

葉の食べ方

コナガ:葉の裏面から食い破り、表側の薄皮と葉脈を残すようにして食害します。
アオムシ:葉に穴を空けながら食害するため、葉がボロボロになります。

農薬の効き方

コナガもアオムシも同じチョウ目なので、オルトランなど同じ薬剤で防除できることが殆どです。しかし、コナガは薬剤耐性が高く、抵抗性を持ったものも数多く報告されているため、同一薬剤による継続的な防除は避けましょう。

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コナガが発生しやすいアブラナ科の野菜とは?

アブラナ科の植物は有毒なカラシ油成分を分泌し、害虫から身を守っています。しかし、コナガやアオムシといった幼虫はカラシ油成分を無害化する術を身に着けているため、問題なくアブラナ科の植物を食べることが出来るのです。

家庭菜園でもよく栽培されるアブラナ科の野菜のうち、代表的なものを表にしました。栽培時期を見ると、コナガの発生時期と被るものが多く、防除をしっかり行わないといけないことがよくわかります。

野菜名 栽培時期
キャベツ 春蒔き:3~7月
夏蒔き:7~11月
秋蒔き:10~5月
大根 春蒔き:4~7月
秋蒔き:9~1月
ブロッコリー 春蒔き:3~6月
夏蒔き:9~11月

コナガの生育サイクルと特徴

コナガは生育適温の20~25℃になると、約2週間で幼虫から成虫へと成長します。また、4~11月の間で、年間5~10回に渡って繁殖を繰り返し、世代交代を行います。ここでは、コナガの各成長段階での特徴を解説していきます。

卵の特徴

コナガの卵は0.5ミリほどと小さく、はじめは淡い黄色ですが、孵化が近くなると黒っぽい色に変化します。茎や葉の裏など、見つけにくい場所に産み付けられている事が多いので、見落としがちです。

幼虫の特徴

体の両端が尖っている紡錘形で、若い虫は鮮やかな緑色をしているためアオムシと間違いやすいです。時間が経つにつれて濃い緑色に体色が変わり、10ミリほどまで大きくなります。

蛹の特徴

コナガは繭を作り、その中で蛹化します。中身の見える網目状の特徴的な繭を作り、蛹は長さ6ミリほど、淡い緑色や淡い褐色など個体によって蛹の色はまちまちです。

成虫の特徴

成虫は10ミリほどの大きさで、茶褐色で大きな翅を持ち縦に長いシルエットをしています。生涯で100~200個ほどの卵を作物の葉裏に産み付けます。暖地と寒地で異なりますが、寿命は夏季で2~4日、冬季で12~13日ほどとされています。

農薬を使ってコナガを駆除する方法

コナガの基本的な駆除方法は、農薬散布になります。ですが、コナガは薬剤耐性が強く、同じ農薬を使い続けると、その薬剤に対し耐性がある個体が発生してしまい、防除が難しくなるおそれも。農薬を用いる場合は、複数の系統の薬剤をローテーションして使用しましょう。

オルトラン粒剤

出典:住友化学園芸株式会社


オルトラン粒剤は、キャベツやブロッコリー、大根や白菜など幅広い作物に使用できる薬剤です。は種時や植え付け時に1度散布するだけで、ゆっくりと有効成分が浸透し長期間に渡って防除することができます。コナガのほか、アオムシにも有効です。

グレーシア乳剤

出典:日産化学株式会社


グレーシア乳剤は、殺虫成分がコナガに直接作用するため、速効性が非常に高い薬剤です。新しい薬剤なので、従来の薬剤に抵抗性のあるコナガに対しても効果が見込めます。降雨性も高く、雨が降っても効果が持続します。持続時間も長く、2週間ほどは有効です。

アファーム乳剤

出典:シンジェンタジャパン株式会社


アファーム乳剤は60種類以上の作物と、30種類以上の害虫に使用できる薬剤です。コナガの防除だけではなく、家庭菜園でもよく見かける殆どの害虫に対して効果があるため、一度に多くの種類の害虫を防除することができます。

コナガの発生を防ぐ! 効果的な予防法

コナガを始めとした害虫対策は、そもそもの発生を防ぐことで被害を小さくすることが大切です。ここでは、コナガ対策に有効な予防法について説明していきます。

防虫ネットや寒冷紗を設置する


防虫ネットや寒冷紗を上手く使うことで、コナガの被害を抑えることができます。防虫ネットをトンネルにしたり、寒冷紗をべたがけすることで、コナガの成虫が作物に寄り付こうとしても物理的に接触できず、産卵をできなくさせることができます。
防虫ネットの網目は1ミリか0.6ミリのものが良いでしょう。

散水する

散水することでコナガの発生数を抑えることも可能です。水をかけることで、産み付けられた卵が地面に落ちたり、メスの産卵行動を抑えられることがわかっています。

ただ栽培している作物や時期によって、適切な水やりの回数や量は異なります。散水だけで予防するのではなく、その他の方法と組み合わせて予防するようにしましょう。

吸引する

ガーデン用のエンジンバキュームでコナガを吸引してしまうのも1つの手です。根気のいる作業ですが、飛び回っているコナガの成虫を直接バキュームで吸い取って殺してしまえば、確実に数を減らすことができます。ただこの方法だけでコナガを防除しきれるわけではないので、他の方法と組み合わせることが大切です。

天敵が棲み着く畑にする

天敵昆虫を利用し、薬剤を使わずともコナガを防除し被害を未然に防ぐこともできます。自然界に存在する、クモ類やゴミムシ類、ハサミムシ類、寄生バチや鳥を味方につけることで、自然とコナガの数を減らすことができるというものです。

ただ、コナガ駆除に使用する農薬の中には天敵昆虫にも効いてしまうものもあります。農薬の取捨選択が必要になるため、正しい知識を身に着けなくてはなりません。

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コンパニオンプランツを植える

異なる種類の作物を合わせて栽培することで、病害虫に対して様々な予防効果を発揮することがあります。これらをコンパニオンプランツといい、コナガ対策になる作物にはセリ科やキク科の野菜があります。例えば、ニンジンやパクチー、セロリなどのセリ科野菜や、レタスや春菊などのキク科野菜の匂いを嫌って、コナガが寄り付かなくなります。

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卵や幼虫は見つけたらすぐ駆除

コナガは2週間ほどで成虫になり、繁殖を繰り返していくため、早期の防除が大切です。成虫を見かけたら、卵や幼虫がいると思って葉の裏面を探してみてください。もし見つけたら、すぐに駆除しましょう。

コナガ被害を抑えるためには、早め早めの防除が大事

コナガは成長が早く、4~11月と生息可能な時期も長いため、早め早めの継続的な防除が大切になります。

農薬散布による駆除が基本になりますが、薬剤耐性の発生を避けるためにもさまざまな種類の薬剤をローテーションし、同時に農薬に頼らない防除もしていかなくてはなりません。防虫ネットを使うにしろ、天敵やコンパニオンプランツを利用するにしろ、大切なのは注意深く観察すること。日頃から菜園をよく観察し、小さな違和感に気づいて早期に対応することが大切です。その時のことをしっかりメモに残し、次作以降の参考にすることも良いでしょう。正しい知識を身に着け、適切な方法でコナガを防除し、より良い菜園生活を送ってください。

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