ヨトウムシ類とは?
ヨトウムシ類とはヨトウガやハスモンヨトウなどの幼虫のことで、成長した幼虫は昼間は土の中に隠れており、夜に出て来て野菜の葉を食べてしまうため「夜盗虫(ヨトウムシ)」と呼ばれています。葉菜・果菜・根菜とあらゆる野菜の葉を食べてしまい、日中に発見しづらいことから嫌われている害虫の一つです。
幼虫の発生時期はヨトウガが4〜6月、9〜11月ごろ、ハスモンヨトウが7〜11月ごろになります。冬はサナギの状態で越冬し、ヨトウガは夏の間もサナギになって休眠します。
ヨトウムシ類の生態
ヨトウムシ類の卵は、葉の裏にびっしりとまとめて産み付けられているのが特徴です。ヨトウムシ類の種類によっては、数百個まとめて産み付けられているものもあります。卵の色は黄色や白っぽいもの、黒っぽいものなど様々な種類があります。またその卵の塊ごとマユのようなもので覆われていることもあります。
このように見た目の特徴は異なりますが、50個以上のたくさんの数の卵がまとめて産み付けられている場合は、ヨトウムシ類の卵の可能性が高いです。
ヨトウムシ類は孵化後、何度か脱皮をします。生まれたばかりの小さい若齢幼虫は、集団で行動しており、淡い緑色のものが多いです。このころは昼行性なので日中でも確認することができます。
そこから脱皮を繰り返し大きく成長した老齢幼虫は夜行性になります。この頃には単体で行動するようになり、色も茶色が濃くなり模様がはっきりしてきます。大きさも3〜5センチほどになり、食べる量も増えるため、被害が大きくなります。
ヨトウムシ類の天敵
ヨトウムシ類の天敵は鳥類やカエル、ムカデ、クモ類や寄生蜂、アシナガバチなどです。また夜間に地表を徘徊する捕食性天敵のゴミムシ類やハサミムシ類なども有力な天敵となります。
アシナガバチは刺されるととても痛いので嫌われがちですが、畑ではヨトウムシやアオムシを食べてくれる天敵となります。それらを捕まえて肉団子状にし、自分の巣にいるアシナガバチの幼虫にエサとして与えているのです。こちらから攻撃したりさえしなければ基本的には大人しいハチですので、畑で見ても慌てて叩いたりしないようにしましょう。
ヨトウムシ類の対策
ヨトウムシ類の予防・対策方法をいくつか紹介します。
捕殺する
ヨトウムシ類の幼虫は大きくなると夜行性になるため、捕まえるのが難しくなります。そのため昼間でも発見しやすい卵もしくはまだ若くて昼行性である若齢幼虫のうちに捕まえるのがポイントになります。卵や若齢幼虫は一つの葉の裏にまとまってくっついているので、葉ごと取り除き、足の裏で踏み潰すなどして駆除します。幼虫が大きくなってからでは対処が大変になりますので、こまめに野菜の葉の裏の様子を見るようにしておきましょう。
防虫ネットをかける
ヨトウムシ類は野菜の葉の裏に卵を産み付けることで増えていきます。野菜の種まきや苗の植え付けを行う時点で防虫ネットをかけ、ヨトウムシ類の成虫が飛来して卵を産み付けるのを防ぎます。
米ぬかトラップ
豆腐が入っていた容器や空き缶などに米ぬかを詰めて地面に埋め、口のところと地面の高さを同じにしておきます。そうするとその中にヨトウムシ類が入りこむため捕まえることができます。ヨトウムシ類は米ぬかをうまく消化できないらしく、そのまま死んでしまうこともあります。ただし、米ぬかを放置しているとナメクジなど他の虫を呼び寄せてしまうこともあるので、注意しましょう。
天敵の利用
ヨトウムシ類の天敵は鳥類やカエル、ムカデ、クモ類や寄生蜂、アシナガバチ、ゴミムシ、ハサミムシなどであると紹介しました。単純にこれらのムシの数を増やせばヨトウムシ類の大発生は防げるかもしれませんが、密閉された空間でない限り、意図的に特定の生き物の数をコントロールしようとするのは難しいです。天敵を増やすというよりは害虫や天敵も含めて、多様な種類の生き物がいる状態を作ることを目指しましょう。
そのためには多様な種類の植物が畑に生えている状態を作ることで、多様な虫が生きられるようになります。同じ畑の中で様々な種類の野菜を植えたり、野菜の生育の邪魔にならない場所であれば雑草も数種類残しておくことで、より生態系は複雑になっていきます。複雑になればなるほど特定の虫だけが大発生する可能性が低くなっていきます。
完全駆除ではなく増えすぎないような対策を
ヨトウムシ類は完全駆除の難しい害虫の1つです。駆除しすぎるとその天敵となるムシも減ってしまい、時間が経つとより繁殖力の強いヨトウムシ類がまた増えてしまうということもあります。ヨトウムシ類が完全にいない畑を目指すというよりも、今回ご紹介した対策と予防を行いながら、その数が増えすぎないようにするという気持ちで付き合っていきましょう。
監修:鹿児島大学農学部害虫学研究室教授 津田勝男
次の記事:畑の雑草図鑑〜ドクダミ編〜【畑は小さな大自然vol.41】