テントウムシにもいろんな種類がある
一口にテントウムシと言っても実は様々な種類があり、食べるものも異なります。アブラムシなどを食べてくれる肉食系のテントウムシもいれば、野菜を食べる草食系、カビを食べる菌食系のテントウムシもいます。草食系はいわば野菜にとっての害虫であり、肉食系・菌食系は益虫となるものが多いです。それぞれを見分けられるようになると、どんなテントウムシを残すべきで、どんなテントウムシに注意すべきかが判断できるようになりますので、それぞれ代表的なものをご紹介します。
アブラムシなど害虫を食べる肉食系テントウムシ
肉食系テントウムシの代表格はナナホシテントウです。テントウムシといえばこれをイメージする方が多いと思います。様々な種類のアブラムシを食べてくれる益虫です。
もう一つよく見る肉食系テントウムシがナミテントウです。こちらは上の写真のように、黒地に赤色のものや赤字に黒、そして斑点の数も違ったりなど様々な色や模様のものがあります。こちらもさまざまな種類のアブラムシを食べてくれる他、ヨトウガ(※1)の卵を食べてくれます。
※1 ヨトウガの幼虫は、葉物野菜を食い荒らすため、害虫とされている
上の写真はナミテントウの幼虫です。こちらもアブラムシなどを食べてくれるのですが、成虫と違って見た目があまり可愛くないため、間違って潰してしまうことも。実は強力な味方ですのでぜひ生かしておきましょう。
病気を防ぐ菌食系テントウムシ
益虫となる菌食系のキイロテントウです。このキイロテントウはキュウリやカボチャの葉によく発生するうどん粉病の原因となるカビを食べます。ただし葉の表面の菌だけを食べるので、葉の中まで侵食した菌を食べることはできません。ですので、うどん粉病の根絶までは期待できませんが、感染の拡大を防いでくれることがあります。
野菜を食べる害虫、草食系テントウムシ
テントウムシの仲間であっても、野菜をエサとするものもあります。
上の写真はニジュウヤホシテントウと呼ばれる種類で、特にジャガイモやナスなどのナス科の野菜を好んで食べる害虫です。名前の通り、28個の斑点がついています。テントウムシに似ていて益虫かと思いきや、野菜を食べる害虫であることから、テントウムシダマシと呼ばれることもあります。
ニジュウヤホシテントウの見分け方
草食系テントウムシの中でも主な害虫となるニジュウヤホシテントウを見分けられるようになりましょう。
成虫の見分け方
ニジュウヤホシテントウの成虫は、羽の色が薄く鈍い色をしているため判別しやすいと思います。さらに肉食系テントウムシは動き回って、アブラムシなどの餌を探して食べるため、草食系テントウムシに比べて動きが早いのですが、ニジュウヤホシテントウなどの草食系は、葉の上でじっとしていることが多く、簡単に捕まえることができます。
幼虫の見分け方
次に幼虫ですが、ニジュウヤホシテントウの幼虫は、ナミテントウやナナホシテントウと違い、カラダ中にトゲトゲがあるため、見分けることができます。
卵の見分け方
最後に卵に関しては、ナナホシテントウやナミテントウなどの肉食系テントウムシの卵は、上の写真のようにぴったりとまとまって産み付けられていますが、ニジュウヤホシテントウはより間隔を空けて広い範囲に産み付けられます。
ニジュウヤホシテントウの天敵
ニジュウヤホシテントウの天敵としてはヒメコバチなどの寄生蜂が知られています。この寄生蜂はテントウムシの中に卵を産み付け、その中で孵化すると、テントウムシの中身を食べながら成長します。
また鹿児島大学津田教授の害虫学研究室にて、捕食性のカメムシがニジュウヤホシテントウの卵と幼虫が捕食されているところが確認されています。またジョロウグモがニジュウヤホシテントウの成虫を、フクログモの一種が幼虫を捕食しているところも確認されています。
ニジュウヤホシテントウの対策
ニジュウヤホシテントウはナス科の野菜を好んで食害します。特にナスでの被害が多く見られます。少しであれば問題はありませんが、大半の葉がかじられてしまうようですと、光合成の効率が下がり、野菜の生育が阻害されることがあります。そうなることを防ぐための以下の4つの対策をご紹介します。
対策① ジャガイモと他のナス科野菜を離して植える
対策② 捕殺する
対策③ イヌホオズキをおとりにする
対策④ 防虫ネットをする
対策① ジャガイモと他のナス科野菜を離して植える
ニジュウヤホシテントウは3〜4月ごろに越冬した成虫が、ジャガイモの葉に卵を産みつけます。それが孵化して幼虫からサナギになり、6月ごろにそれらの新成虫が出てきて一気に数を増やします。そのためジャガイモの近くにナスやトマトなどを植えていると、そちらに新成虫が来やすくなるため食害にも 遭いやすくなります。
対策 ② 捕殺する
ニジュウヤホシテントウは卵・幼虫・成虫のいずれも他のテントウムシと異なる特徴があるため、見分けることができます。また動きも鈍いため簡単に手で捕まえることができますので、ニジュウヤホシテントウの被害が見られる場合は捕殺しましょう。
対策③ イヌホオズキをおとりにする
ナス科の雑草で、イヌホオズキという植物があります。ニジュウヤホシテントウは他のナス科野菜よりもこのイヌホオズキを好んで食べるので、おとりとしてイヌホオズキを取り除かずに残しておくのも1つの対策として考えられます。ただしイヌホオズキがほとんど食べ尽くされるほど、ニジュウヤホシテントウが多いようでしたら、次は野菜に移ってきますので、早めの対策を行いましょう。
対策④ 防虫ネットをする
越冬した成虫がジャガイモに卵を産み付けないように、ジャガイモを防虫ネットで囲います。この段階で卵が産み付けられなければ、そのあとの数も増えないためナスやトマトなどに来るニジュウヤホシテントウの対策にもなります。
まずはよく観察しよう
今回ご紹介したようにテントウムシには様々な種類があります。それぞれ模様や色、食べるエサが異なりますので、まずはしっかりと観察するところから始めてみましょう。
監修:鹿児島大学農学部害虫学研究室教授 津田勝男
次の記事:畑の雑草図鑑〜ハコベ編〜【畑は小さな大自然vol.34】