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失敗しない!苗の選び方・植え方のキホン【畑は小さな大自然vol.39】

失敗しない!苗の選び方・植え方のキホン【畑は小さな大自然vol.39】

こんにちは、暮らしの畑屋そーやんです。家庭菜園初心者にとってはタネから育てるよりも、苗を買ってきて植える方がオススメ。より確実に早く育てることができるというメリットがあります。しかしいざ自分で苗を買って植えるときに「どんな苗を選んだら良いのだろう」「植えるときにどんなところに注意したら良いのだろう」と迷われる方も多いと思います。中には選び方や植え方を間違っていたためにうまく野菜が育たなかったということもありますので、今回は苗の選び方と植え方のポイントについて紹介したいと思います。

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苗の選び方

家庭菜園で野菜を育てる場合、苗はホームセンターや種苗店で買うことが多いでしょう。しかし、どの苗を選ぶべきかで迷ってしまうかと思います。そんなときに参考にすると良いポイントが以下の3つです。

苗の選び方のポイント

①背の高いものよりも太くて短いものを選ぶ
②顔色が良いものを選ぶ
③直根性の野菜は若い苗を選ぶ

それぞれ説明していきます。

①背の高いものよりも太くて短いものを選ぶ

背の高さよりも茎の太さや葉の大きさを重視する

まず苗を選ぶときに背が高く成長しているものを選んでしまいがちですが、そこは注意が必要です。苗の段階で上に伸びすぎているものは、茎や葉の成長ばかりに栄養が取られ、根が十分に発達していないことが多いのです。背が低くても茎や葉が太く厚みがあって丈夫なものを選ぶと、根もしっかりとしていることが多いです。

②顔色が良いものを選ぶ

葉が黄色っぽくなっているものは避ける。色が濃いというよりは発色が良いものを選ぶ

スーパーで食べるための野菜を選ぶときもそうですが、色が濃い野菜ほど栄養が多く、健康的で良い野菜だと思われがちです。しかし決してそうとは限りません。
もちろん色が薄く黄色っぽい苗は栄養、主に窒素分が不足していることが多いので、できるだけ避けます。窒素分が多いと緑色が濃くなりやすくなりますが、窒素分は多すぎると病気や生理障害になりやすくなるため、色が濃すぎるものも避けます。
色の濃淡よりも発色が良いか、人間でいうところの「顔色が良いか」で見ることが大切です。この感覚は慣れないうちは少し難しいかもしれませんが、野菜を育てているときもこの感覚は大切になりますので、少しずつ養っていきましょう。

③直根性の野菜は若い苗を選ぶ

直根性のナスは左側のように大きく育っているものよりも、右側の若い苗を植えた方が長期間の収穫につながりやすい

多くの野菜の根は、中心に太くてまっすぐ下に伸びる主根(しゅこん)があり、そこから横に側根(そっこん)が伸びるような形になっています。この主根が特に太く発達し、側根が少ないタイプのものを「直根性(ちょっこんせい)」と呼びます。これとは対照的に主根が細く、側根が特に発達したものを散根性と呼びます。
 
直根性の野菜は主根が傷ついてしまったり、十分に伸びることができなかったりすると健全な成長が難しいため、植え替えを嫌うタイプが多いのが特徴です。その代表的なものがダイコンやニンジンなどの根菜類で、これらは一般的にタネを畑に直まきしていきます。そして実は根菜類以外にもナス・オクラ・ホウレンソウ・ハクサイ・コマツナ・ミズナ・マメ類・パセリなども直根性の野菜です。これらは苗で植えられることもあるのですが、ポットの中で大きくなりすぎると、主根がポットの中で曲がってしまったり、老化してしまったりして、植え替えた後にうまく育たない場合があります。主根・側根ではないですが、ひげ根が深く下まで伸びていくトウモロコシも同じような傾向があります。これら直根性の野菜の苗を購入する場合は、できるだけ小さくても若そうな苗を選ぶことをお勧めしています。

◆直根性の野菜
ナス・オクラ・ホウレンソウ・ハクサイ・コマツナ・ミズナ・マメ類・パセリ・トウモロコシなど

苗の植え方

次に苗を植えるときの手順とポイントをご紹介していきます。

①苗を植えるタイミング

苗を植えるときはしっかりと根をはることができるまで、周辺の水分が保たれていることが大切になります。そのため晴れて気温が高い時間帯などに植えてしまうと、葉から水分がどんどん蒸散していくので、十分な水分を保つのが難しくなります。日が落ちてきた夕方の時間帯や曇っている日、雨が降った直後や降る直前などに植えると土が乾燥しづらくなりますので、根も活着しやすくなります。

②吸水


根が活着するまでの水切れを防ぐために、植える前にしっかりと苗に吸水させることがポイントです。植える前日の夕方から水を2~3cmほど張ったトレーなどに苗をつけておき吸水させておきましょう。このとき水の量が多すぎたり、2〜3日以上水につけっぱなしだと、根が呼吸できずに腐ったりしますので、注意します。

③土づくりは早めに済ませておく

特に臭い堆肥は土に入れてからさらに発酵して熱をもつことが多いので、早めに入れておく

堆肥や肥料はできるだけ苗を植える2〜3週間前に済ませておき、土になじませておく方が良いです。堆肥や肥料の種類や質によっては、入れてからすぐに苗を植えると障害を起こすものがありますので、堆肥や肥料の説明をしっかりと読んであらかじめ準備しておきましょう。

④穴を掘って水を入れる

たっぷりと水を入れ、染み込んでから苗を植える

苗を植える場所に、ポットの土がちょうど入るくらいの大きさの穴を掘ります。穴に太い根などがあれば取り除いておきましょう。また土の中にモグラなどの掘ったトンネルが出来ている場合がありますので、これは土で埋めておきます。
そして掘った穴に、ジョウロで水を入れます。8分目くらいまで溜まるまで水を入れた後、この水が自然に染み込むまで少し待ち、なくなってから苗を植えていきます。苗を植えた後に水をかけるイメージがあるかもしれませんが、土の上から水をかけても表面を流れるだけで、深く染み込むまでには相当な水の量が必要になります。基本的には穴の中にたっぷりと水を入れておけば、それ以上は必要ありません。
また雨が降った直後や降る直前の時は、水やりしなくても雨の水分で十分なことが多いです。

穴に苗を植える

根が絡みあったまま植えると、根は土の中で広がることができない

苗をポットから取り外します。このときに苗の茎や葉にできるだけ土が付着しないように、傷つけないように注意します。そこから細菌やカビが入って病気になる可能性があるためです。
そして根がぐるぐると巻いて絡みあっている場合はほぐしてから植えていきます。先ほど挙げた直根性の野菜の場合はできるだけ主根を傷つけないように軽くほぐす程度にします。それ以外の植え替えに強い野菜は、根が切れても良いので、しっかりとほぐしてあげます。
このとき根の周りの土はできるだけ残しておき、一緒に土の中に植えます。

苗の根が絡みあっている場合は、ほぐしてから植え付ける。直根性でなければ根の先は切れてしまっても新たに生えてくるので大丈夫

苗を植える深さについて

苗を植える深さについては、細かく言うと野菜の種類によって違いますが、基本的にポット内の土と畑の土が同じ高さになるように植えておけば特に問題はありません。このときよくある失敗が、根元が土に埋まってしまっているときです。こうなると土の中のカビの菌によって野菜が腐っていきます。苗の根元がしっかりと陽に当たるように、土に埋もれないように植えてください。逆に根元が見えるようにと、苗の周りが凹んでそこに水が溜まらないようにだけ注意してください。

苗を植える向き

よく見る方向に野菜の正面を揃えると綺麗に見える

これは野菜の生育とはそこまで関係ないかもしれませんが、個人的にとても大切にしているのが苗を植える向きです。野菜には向きによってこっちが正面だなとか、こっちから見ると綺麗に見えるなという方向があります。その正面の方をよく人が通る方向や眺めることの多い方向に向けて植えます。この向きを揃えていると畑の見栄えもよくなります。

苗の周りの土を枯れ草や落ち葉で覆う

苗の根元までしっかりと敷くのがポイント

これは必ず必要な作業というわけではありませんが、最後に苗を植えた後に株元に枯れ草や稲わら、落ち葉などを敷き詰めるとさらに良いです。こうすることで、土の乾燥や雑草を防ぐ他、雨によって跳ねた土が苗に付着して病気になると行ったことを防いでくれます。ウッドチップやビニールマルチなどでも同様の効果が得られます。

苗の植え付けができるようになると畑がより簡単になる

タネでまくよりも苗から育てた方が収穫までが早く、より確実に育ちます。ですので今回ご紹介した選び方・植え方のキホンさえ抑えていれば、一気に野菜づくりのレベルが上がりますのでぜひマスターしましょう。
 
次の記事:畑の害虫図鑑〜ヨトウムシ編〜【畑は小さな大自然vol.40】

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