農業をする上で重要な育苗
育苗とは、畑に種を直接まいて育てるのではなく、育苗ポットなどの容器である程度成長するまで育てることをいいます。畑とは別の場所で、環境を整備して育てることによって、雨風や気温といった自然の影響を受けにくくなり、丈夫で良い苗を作ることができます。ほかにも育苗を行うメリットとしては、次のようなことが挙げられます。
メリット1 管理の手間が少ない
種を直接畑にまくと、雨や風によって飛ばされてしまったり、害虫の被害にあったり、雑草も生えやすくなるなど、リスクが高まります。育苗は、室内で温度管理をしながら、自然環境や害虫などから苗を守ることができるので、結果的に管理の手間が少なくなります。
メリット2 初心者でも育てやすい
作物が発芽しやすい環境をつくれるため、畑に種を直接まいて栽培するよりも育てやすくなります。畑に移植した後も、生育度合いがそろいやすいというメリットがあります。苗の生育度合いに個体差があると、栽培管理がしにくくなってしまうため、収量や品質低下の原因となってしまいます。
メリット3 育苗中に畑で他の作物を育てられる
育苗している間、空いている畑で他の作物を育てることができるため、より多くの作物を育てたいという方にもおすすめです。
育苗を始めるために必要な物
ここからは、育苗を始めるにあたって、育苗ポットや育苗箱など必要な物を紹介します。
育苗ポット
育苗専用に作られた、植木鉢のような形状の容器を育苗ポットといいます。
素材がポリエチレンやポリ塩化ビニル製の「ポリポット」のほか、ピートモスなどの土に還る自然素材で作られたポットなどがあります。
ポリポットの場合、再利用ができるためコストパフォーマンスに優れていますが、ピートモスなどの自然素材でできたポットは再利用できない代わりに、そのまま畑の土に植えることができるため移植の手間が省け、苗の根も傷付けずに済むというメリットがあります。また、通気性が良いため苗の成長が早いという特徴もあります。
育苗トレー
苗をたくさん作りたい場合は、育苗ポットがいくつもつながっているような育苗トレーがおすすめです。ポットが連なった「連結ポット」や、より細かく大量に植えるための「セルトレー」などがあります。根巻き(根がポットに沿って張りすぎ、定植後の育成を阻害すること)がしにくく根が均一に伸びるタイプのトレーを使用することで、より丈夫な苗を育てられます。
育苗箱
育苗箱は、種まき、挿し木・挿し芽の育成に使ったり、中に育苗ポットを並べて管理したりといった、さまざまな使い方があります。特に、種が大きく育苗ポットでは育てにくい作物を育てるときや、同時にたくさんの同じ苗を育てたいときに役立ちます。
育苗培土
育苗ポット用の土を育苗培土といいます。発芽や生育に適しており、あらかじめ肥料成分が配合されているため、施肥の必要がありません。排水性や保水性、通気性に優れた物がおすすめです。
園芸マット
園芸マットは、マットの上にポットやトレーを並べて、同時に複数の苗の温度管理をすることができます。防水性がある物や、土中の温度を感知して、温度の過度な上昇を防ぐ機能がある物もあります。
覚えておきたい育苗の手順
育苗を始める際、育てる作物によって育苗期間や移植時期が異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。育苗の手順や、トマトやナスなど家庭でも育てやすい作物の育苗にかかる日数も併せて紹介します。
一般的な育苗の手順
- 土の湿度が均一になるように土に水を含ませてから、育苗ポットなどに土を詰める
- 植える作物に適した深さに種をまく
- 軽く土をかぶせたら水をやる
- 土が乾かないように注意し、温度管理をして発芽させる
- 移植時期になったら鉢植えや畑に移植する
作物別育苗の期間
- トマト 約60日
- ナス 約80日
- カボチャ・スイカ・キュウリ 約30日
丈夫な苗づくりをマスターしよう
育苗で丈夫な苗を作っておくことで、その後の管理の負担や収穫までの失敗のリスクを軽減することができます。丈夫な苗づくりの基本をマスターすることで、さまざまな作物に応用できるため、家庭菜園での栽培の幅を広げることにもつながります。
興味のある方は、育苗に挑戦してみてはいかがでしょうか。
【関連記事はこちら!】
土作りの基本を解説! 良い土の条件から有機肥料の知識まで