「不本意」だった米価の引き上げ
横田農場は面積が約180ヘクタール。複数の品種を育てて作期を分散させ、広大な農場を田植え機とコンバイン1台ずつでこなす効率経営で知られている。地元のスーパーをはじめ売り先も独自に確保している。
筆者は毎年稲刈りが終わった後、農作業が一段落したタイミングで横田さんを訪ねるようにしている。既存のやり方に安住せず、課題を常に点検している横田さんの姿勢には伝えるべき点が多いと感じているからだ。
2024年に訪ねたときは米価が話題になった。「不本意」と前置きしつつ、スーパーの店頭価格を若干引き上げたことを教えてくれた。スーパーの判断に委ねず、店頭価格を自ら決める立場に横田農場はある。
コストを抑えつつ、生産を安定させる努力の成果で利益は出ていた。だから最初は前年と同じ値段で売ってみた。すると消費者から「こんなに安いのは問題があるからでは」という声が出た。米価が高騰していたからだ。
もし割安な値段を続けていれば一気に全量売れてしまい、これまで安定して買ってくれていた顧客の購入チャンスを奪うことへの心配もあった。必ずしも望んで値上げしたわけではなかったというのはそういう意味だ。
ところが2025年は別の事情が深刻になって、引き続き例年より高い値段を続けざるをえなくなった。地代が急上昇しているのだ。

米価を上げざるを得ない事情がある
地代が直近2年で2倍以上に
どれほど地代が上がったのか、横田さんがグラフで示してくれた。猛暑でコメ不足が起きる前の2022年を100とすると、23年は約2割上がり、24年は2倍強の大幅アップ。25年はさらに大きく上がるという。
横田さんの地域の場合、地代は田んぼの貸し手と借り手の話し合いで決めている。一定量のコメで払うのが基本ルール。だが実際には現物ではなく、金額に換算して払っている。その水準は相場で自動的に決まる。
地代の負担が急に増したのはそのためだ。減価償却費や農機の修理代なども上がっているが、上昇幅でいえば地代が突出している。
地主の側には自分では農業ができなくなったので、担い手に田んぼを貸しているという事情がある。それを踏まえ、農業経済学者には「地代は農村社会への利益の還元なので、多く払うのはいいこと」との意見もある。
横田さんもそういう考えがあることは理解している。だがそれでもどこか心の隅に割り切れないものが残る。自分たちがコストの抑制に懸命に努力してきた成果が、地代の上昇でかなり相殺されてしまうからだ。
地代の決め方は地域によって異なる。だが横田さんと同じ課題を抱えているケースも少なくないだろう。米価高騰の陰で生じたジレンマだ。


















