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【写真で解説】苗木屋が教える取り木の方法。細かい手順や成功率を上げるポイントまで徹底解説

【写真で解説】苗木屋が教える取り木の方法。細かい手順や成功率を上げるポイントまで徹底解説

取り木(とりき)とは、枝や幹の一部に発根を促し、その部分を切り離して新しい個体として育てる繁殖方法である。親株と同じ性質を持つ個体を得られることから、園芸や果樹栽培の現場では古くから用いられてきた技術である。タネを使う必要がなく、さらに挿し木での増殖が難しい樹種でも適用できる点で優れている。成木の太い枝から増やすことができ、ある程度大きい状態の苗を得られることも大きな魅力である。一方で、挿し木よりは少しコツが必要であることや、作業の手間が増えるといった側面もある。本記事では、取り木の原理やメリット、実際の手順や注意点について、植物生理学の知見と現場での経験をもとに詳しく紹介する。

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取り木とは?

アテモヤの取り木。とても太い枝でも十分に発根する

取り木とは、植物の枝や幹の一部を親株につけたまま発根させ、その後切り離して独立した苗木として育てる増殖手法である。古くから園芸界で用いられてきた繁殖技術であり、特に果樹や観賞植物の特定の樹種では、確実な手段として高く評価されている。

植物は幹や枝の一部に傷が生じ、内部の維管束(特に師部)の接続が切断されると、葉で作った光合成産物(炭水化物)や植物ホルモンのオーキシンなどがそこで滞留し、やがて発根するようになる。

取り木の代表的な手法である「高取り法」では、環状剥皮という枝の外層を剥ぎ取る処理を行なって、師部を一時的に遮断し、葉で生産された光合成産物がそこに蓄積する状況を作る。これにより、不定根の形成が活発になる。取り木の成功においては、師部の遮断や、ある程度の温度と湿度、十分な酸素供給などが重要である。果樹ではいろいろなものを取り木で増やすことができ、筆者は熱帯果樹のアテモヤやアボカド、レンブ、ミルクフルーツ、リュウガン、グァバなどを増やしている。

アボカドの取り木。発根後の様子

レンブの取り木

レンブの果実

ミルクフルーツの取り木

ミルクフルーツの果実

リュウガンの取り木

リュウガンの果実

グァバの取り木

取り木に適した時期

取り木の成功率を左右する大きな要因のひとつが「時期」である。
基本的には、気温が高すぎず低すぎない春の時期が適している。沖縄では台風が去った秋でも可能だ。日中の気温がだいたい25℃の状態が良い。この時期は、光合成が盛んで、枝の中を流れる炭水化物も多く、発根を促す植物ホルモン(オーキシン)も活発に働く。そのため、環状剥皮後に発根しやすい条件が整いやすい。

逆に、真夏の猛暑期や冬の低温期は、ミズゴケ内部が高温になりすぎたり、逆に低温で根の動きが鈍くなったりして成功率が下がる。ただ、地域の気候に応じて最適な時期が異なるので、まずはいろいろな時期に試してみてほしい。

挿し木との違いは?

取り木と挿し木の違い

取り木と挿し木は、どちらも母樹の枝から増殖させるクローン繁殖であり、遺伝子的には同一な個体を増やすことができるが、挿し木は植物の枝などを母樹から切り離して増やす方法である一方、取り木では枝が母樹に接続されたまま増やす方法という点で違いがある。

レンブの挿し木

挿し木は、母樹から枝を切り離して、枝の分だけ大量に、そしてあまり作業に時間をかけることなく個体を作ることが可能であるが、取り木の場合は、母樹に接続された枝を活用するため時間がかかる。ただし、挿し木よりも太い枝で増やすことができ、増やした後の苗木の成長度合いもよく、実用できるまでの期間が短い。この点は、果樹栽培の現場においても大きな利点である。

また、取り木の場合、母樹についている枝を使うので、水分の供給もある。このため、樹種によっては、挿し木では乾燥しやすく枯れてしまうものでも、取り木で増やすことが可能なものもある。

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多くの植物は、枝一本から発根させて増やすことが可能である。これが「挿し木(挿し芽)」と呼ばれる繁殖方法で、タネを使わずに親株と同じ性質を持つ個体が得られるという驚くべき増やし方である。樹種によっては効率的に増やす手段と…

取り木のメリットとは?

取り木は、一本一本の処理に時間がかかる反面、たくさんのメリットもある。

1年以上経過した太い枝から苗木を作れる

取り木で増やしたアテモヤの苗

挿し木では、一年生以内の比較的若い枝しか使えないことが多いが、取り木は一年以上経過した太枝でも十分に活用できる。太い枝を活用することにより、苗木の成長も早く、2〜3年後から、果実生産ができる状態の良質な苗木を作ることができる。

また、剪定で切り落としてしまう太い枝を活用することもでき、これにより古い太枝の更新や、大型樹のコンパクト化なども同時に行うことができる。さらに取り木では、根が出る位置を自由に設定できるため、苗の高さをコントロールすることができる。露地植えでも鉢植えでも、基本的にはコンパクトな樹形が求められることが多いが、そういった需要を満たす苗木を作ることができる。

アテモヤはとても太い枝でも発根する

挿し木に比べて成功率が高い

取り木では、枝が母樹に接続されているため、発根までの期間に枯死するリスクが比較的低い。挿し木の場合、一部は乾燥して枯れるというリスクが大きい分、ある程度の数の枝をたくさん挿すという増殖方法である。そのため、発根のはやい樹種では、挿し木でも十分に増やすことができるが、一方で、挿し木で増やしにくいものに関しては、取り木で増やされることもある。手間はかかるが、確実に増やすことができる方法である。

親株と完全に同じ遺伝的形質が得られる

タネから増やした植物(実生)は、遺伝的形質が変わってしまうものが多いが、取り木はクローン増殖であるため、母樹と均一な性質を持った個体になる。果実品質や樹勢、耐病性などを引き継ぎ、生産者にも都合が良い。特に希少品種や、実生では形質が不安定な果樹では極めて重要な増やし方である。

取り木をする際の注意点

取り木方法には多くのメリットもある一方、少しだけ注意しておかなければいけないこともある。

根量が不十分なまま切り離すと、活着不良になりやすい

取り木の発根は、透明ビニールなどを使えば外から確認できるが、「根が何本か見えた=十分な根量」とは限らない。見えている根は全体の一部に過ぎず、実際には根量が不足しているケースも多い。
根がまだ少ない段階で切り離してしまうと、下記のような活着不良が起こる可能性がある。

● 植え付け後に水分吸収が追いつかず、葉がしおれ、最悪枯れてしまう
● 強い風や直射日光のストレスで一気に枯死する
● 一度は生き残っても、成長が非常に遅い

取り木は、この辺りの切り離しの目利きが必要となる。

根がきちんと充実したら取り外すこと

チュパチュパ取り木の発根してない失敗例

母樹に負担がかかり、一度に大量生産しづらい

挿し木や組織培養は、作業環境さえ整えれば、一度に数百~数千本単位で増殖することが可能であるが、取り木はある程度太い枝を活用するため、その分、母樹に負担がかかり、一度に大量生産しづらい。母樹から取れる枝には、限りがあり、全ての枝を取り木してしまうと、木が丸裸になり、その後の生育に影響してしまう。ある程度大きい木や、すぐに新しい枝が出てくる樹種では問題ないが、成長の緩やかな樹種などでは気をつけた方が良い場合もある。

作業位置が高く、物理的に大変な場合がある

樹高が高くなった果樹や庭木では、枝がそもそも手の届かない高さにあるということもあり、物理的に作業が困難なこともある。その時は、脚立などを使う必要があるが、高所で環状剥皮・ミズゴケを巻く作業などをするのは、少々難しい場合がある。強風時にはさらに危険を伴う場合もある。物理的に作業しやすい高さの枝を残しておくことや、高所で作業する場合は、作業の安全面も考慮して、無理のない範囲で行う必要がある。

取り木の基本的な手順

ここでは、果樹や庭木で一般的に行われる「高取り法」による取り木増殖法の基本的な手順について詳しく解説する。取り木をする際に、必要な道具や枝の選び方、注意点などもあわせて紹介する。

必要な道具をそろえる

取り木に必要な道具は下記の通りだ。

・環状剥皮用のナイフ(接ぎ木用ナイフでもOK)
・ミズゴケ
・バケツ
・紐(ビニール紐や麻紐、ガムテープや柔らかい針金でもOK)
・ビニール(黒でも透明でもOK)

取り木に使う枝を選ぶ

次に、どの枝を取り木するかを決める。枝選びの良し悪しは、そのまま成功率に直結する。取り木に適した枝の条件としては、おおよそ以下のようなものが挙げられる。

・1年以上経過したある程度しっかりした枝(完熟枝)

柔らかすぎる当年生の新梢よりも、やや木質化した枝の方が安定しやすい。あまりに細い枝は得られる苗が小さくなるだけではなく、環状剥皮をしたら折れる場合もあるので気を付ける。

・斜め上向きから上向きの枝を選ぶ

取り木では、上向きの枝が特に成功しやすい。上向きの枝は成長する力強い枝であり、炭水化物やオーキシンを作りやすい。また、植物ホルモンのオーキシンは、上部の枝葉で作られたあと下方向に極性移動(一方向の移動)をして、傷口付近に滞留する。オーキシンは上方向には移動しないため、下向きの枝に取り木をしても、オーキシンの効果が得られない。

発根のモデル図

下向きの枝は発根しない

・病害虫の被害がない健全な枝

取り木する枝がそのまま苗木になるため、病害虫の被害のない健全な枝を選ぶ。樹皮が健全で、葉色もよい枝を選びたい。

・日当たりが良すぎない位置の枝

日当たりがよく、太陽光が強く当たる場所の枝は、ミズゴケ内部の温度が上がりすぎることがある。半日陰程度が理想的である。また、太陽光が当たる場所でも、取り木部分は、樹上の枝葉で隠れるのであれば問題はない。

また、将来の樹形をイメージしながら枝を選ぶことも大切である。鉢植えにして低く仕立てたい場合は短めの枝を、露地に植えてある程度の樹高を確保したい場合は長めの枝を選ぶなど、目的に応じて取り木する位置を決めるとよい。

環状剥皮を行う

枝が決まったら、いよいよ取り木の核心である「環状剥皮」を行う。これは、枝の周囲をぐるりと一周、樹皮と形成層を剥ぎ取って、師部を一時的に遮断する作業である。幅は枝の直径のだいたい1.5倍で環状に剥皮する。幅が狭すぎると、残った形成層から師部が再生してしまい、炭水化物が滞留せずに発根しない。以下は、八重紅という品種の椿であるが、環状剥皮が上手くいき成功した例と、環状剥皮の処理が甘く失敗した例である。

取り木が成功した例(八重紅椿)

取り木が失敗した例(八重紅椿)

環状剥皮の処理が甘いとカルスが繋がって発根しない

筆者は環状剥皮をした後、さらに、木部の表面を傷つけることを勧めている。剥皮後に露出した白っぽい部分をナイフで軽くこするようにして削っても良いし、プライヤーレンチなどを活用して、ガリガリっと削いでも良い。削りすぎて枝を細くしないよう注意しながら行う。

環状剥皮の流れ1_上向きの枝を選ぶ

環状剥皮の流れ2_ナイフで枝の1.5倍の幅を削る

環状剥皮の流れ3_枝の外層を剥がす

環状剥皮の流れ4_ウォータープライヤー傷をつける

環状剥皮の流れ5_しっかりグリグリっと

ミズゴケで包み、ビニールで覆う

環状剥皮が終わったら、発根部をミズゴケで包む。ここでのポイントは「湿っていて、なおかつ適度に空気も含んでいる状態」を作ることである。ミズゴケがゲチョゲチョっと湿りすぎていては発根しない。手順は以下の通りだ。

①ミズゴケを水に浸し、しっかりと絞る

乾燥したミズゴケを水の入ったバケツなどに入れて十分に吸水させたあと、手でしっかりと絞り、上から握っても水がしたたらない程度の湿り気に調整する。

②剥皮部の周囲にミズゴケを巻きつける

ミズゴケで傷を包みこむ

剥皮した部分を中心に、ミズゴケを握りながら包み込む。上側と下側の健全部分も少し覆うようにする。

③ビニールで外側を覆う

ビニールで覆って上下を縛る

適当な大きさに切ったビニール(ポリ袋やラップなど)でミズゴケを包み込み、上下を紐やテープなどでしっかりと縛る。柔らかい針金、結束バンドなどで代用しても良い。
このとき、上端・下端から水が流れ込んで常にびしょびしょになるような状態は避ける。さらに、アリなどが侵入しないように、隙間なく縛っておく。

④必要に応じて遮光・断熱する

最後に黒ビニールで覆う

透明ビニールを使うと発根の様子が観察しやすいが、真夏の強光下では内部の温度が上がりすぎる場合がある。その場合は、外側からアルミホイルや不織布、遮光ネットの切れ端などを巻き付け、直射日光を和らげると良い。影になるところで、透明のビニールでも良いし、初めから黒ビニールでミズゴケを覆っても良い。

発根までの期間は樹種や時期によって異なるが、おおよそ1〜3か月程度を目安と考えてよい。半年経っても発根しない場合は、環状剥皮の傷が塞がってしまって発根してなかったり、ミズゴケが乾きすぎ、あるいは湿りすぎて発根していないこともあるためやり直す。

切り離しのタイミングと切り方

発根が十分に確認できたら、いよいよ母樹から切り離す。切り離しのタイミングと切り方には、いくつか注意点がある。

まずは、根がミズゴケ全体に回っているかを確認する。ビニール越しに上下左右を見るか、あるいは、指で全体を触ってみて、ある程度バランスよく根が伸びていることを確認する。あまりにも根っこが少ないと、生育不良になる場合があるため、もうしばらく様子を見る。

十分に根が回っていたら、枝の下側からゆっくりと切り離す。枝から切り離したあとは、ビニールを丁寧に外し、ミズゴケがついたまま、一度吸水させておく。ミズゴケは、根っこに絡まっていることが多いので、そのままでも良いが、簡単に外れる場合は、取り外しても良い。

数ヶ月後、しっかりと発根してるか確かめる

ミズゴケの下から枝を取り外す

取り外した苗

枝が太い場合は、ノコギリで丁寧に取る

鉢上げと養生

切り離した取り木苗は、いきなり露地に植えるのではなく、いったん鉢に植えて養生させる必要がある。以下に鉢上げと養生の手順を紹介する。

①用土を準備する

水はけと保水性のバランスが良い培養土を用意する。果樹用の市販培養土でも良いが、筆者は果樹苗には好んで、鹿沼土と赤玉土を混ぜた土を使っている。

②鉢の大きさを選ぶ

ミズゴケの根鉢より、ひと回り程度大きい鉢を用意する。あまり大きすぎる鉢に植えると、土が乾きにくく、根腐れの原因になるので気を付ける。

③ミズゴケごとそのまま植え付ける

ミズゴケを完全に外してしまうと、せっかく出た細根を損傷してしまうことが多い。外側のビニールだけを外し、ミズゴケはつけたまま用土の中に収める。根鉢の上端が用土面よりやや下になるように調整する。

④たっぷりと潅水し、半日陰で養生する

植え付け直後は、鉢底から十分に水が流れ出るまでしっかりと潅水する。その後は、直射日光を避けた明るい日陰で数週間養生させる。葉からの蒸散量を抑えるために、場合によっては葉を少し減らしておくのも有効である。

⑤新しい芽や根の動きを確認する

数週間経つと、新芽の展開や葉色の改善など、活着のサインが現れてくる。鉢を軽く持ち上げたとき、土と根鉢がしっかり一体化している感触があれば、活着は順調である。その後、徐々に日当たりの良い場所に移し、最終的に露地や大きな鉢に定植していく。

鉢上げをする

地上部の枝葉を少し落とす

このような形で様子をみる

まとめ

しっかりと回った根

取り木は、植物が本来持っている「傷を修復しようとする力」を超越した「不定根を形成し独立しても生きていく力」をうまく利用した増殖方法である。挿し木のように枝を切り離してから発根を待つのではなく、母樹に枝をつけたまま根を出させるため、水分ストレスが少なく、挿し木では増やしにくい樹種でも安定して苗木を得やすいという大きな利点がある。とりわけ、1年以上経過した太い枝から、早い段階で実用レベルの苗木を作れる点は、果樹栽培の現場においても非常に魅力的である。以下は、取り木苗を地植えして11ヶ月後のアテモヤであるが、かなり成長している。

アテモヤの取り木の様子と地植え

地植えして11ヶ月後の様子

また、果樹以外のハーブなどは、土に固定して触れさせておくだけでそこから発根するものもある。果樹でももちろんこれと似たような方法で増やすことができる。

マンジェリコン(ハーブ)の圧条という方法の取り木

マンジェリコン

取り木は、コツがわかると意外と難しくないうえに、成功したときの喜びが大きい増やし方である。庭木や鉢植えの果樹を眺めながら、「この枝を使って増やしてみたいな」と感じたときは、ぜひ取り木に挑戦してみてほしい。一枝から生まれた新しい木は、将来、また別の場所で果実を実らせ、栽培の楽しみを広げてくれるはずである。

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