はじめに:農業は共感を集められる!
SNSは「共感を集めるツール」だが、農業という商売にも、共感を得やすい要素がたくさんある。例えば、四季の移り変わりの美しさ、カラフルな野菜たち、自然の脅威から乗り越えるための努力のストーリー、開放的な畑と晴れた広い空、旬の野菜を使ったおいしそうな農家飯、畑に潜む虫たちの夜の音色などなど。
このように、農家にとっては何気ない日常でも、消費者の五感を刺激する物ごとがたくさんある。そうした意味でも、農業とSNSは相性が良いのだ。
中でも、インスタグラム(Instagram、以下インスタ)は視覚的な魅力を発信しやすく農業に向いているといえるだろう。スマホからの投稿方法がシンプルなこともよい。日々の農作業が忙しい中で、時間がかかるものはなかなか続かないからだ。
インスタは写真か短い動画が中心で、文章も短くても問題ない。週1回の投稿からでも効果が期待できるので、まずは気負わずに息長く続けることが鍵だ。

ステップ① アカウントのコンセプトを決めよう
ここからは、インスタのアカウント開設から運用までのステップを体系的に解説していく。
まずは、ステップ①。せっかくの情報発信で成果を出すためにも、投稿をする前にインスタを始める理由をしっかり整理しておきたい。例えば、下記のような具合だ。
・発信の目的: 直売所の来店客数を増やしたい
・フォローしてほしい人: 近所に住む主婦層
・何を(顧客が喜ぶ内容): 畑の季節の風景、料理の様子・方法、直売所の営業情報
こうしたコンセプトが曖昧だと投稿の軸がぶれやすく、フォロワーにとっても「何のアカウントかわからない」という状態になる。そして、アルゴリズム(あなたの投稿を“見たいと思っている人”に、より届きやすくする仕組み)の上でもターゲットの目に留まりにくく、拡散力が低下する。
ちなみに、ビジネス用とプライベート用(家族・友達向け)のアカウントは、発信目的が異なることが多いので分けた方がよい。

ステップ② プロフィールがフォローの決め手になる
次に重要になるのがプロフィール欄だ。プロフィール名、アイコン、紹介文などである。ここが分かりやすく魅力的な内容であることが、まずは大事。
写真や動画を見て興味を持ったユーザーのほとんどは、次に自分の役に立つページなのか判断するためにプロフィール欄を見ることになる。そして約3秒で結論を出す。従って、プロフィール欄は「何の発信をしているか」が一瞬でわかるように作るのがポイントだ。
・ユーザーネーム(住所):シンプルに、わかりやすく(検索にかかりやすくなる)
例:Kunitachi_yamadafarm
・プロフィール名(看板):農園名+ジャンル(地域・特徴・主力野菜)など
例:国立のこまつ菜農家|山田農園
・アイコン:特徴があるもの(自分の顔が最強。覚えやすいもの。ぼやけた写真はNG)
・紹介文:「特徴」「こだわり」「実績」などを簡潔に説明。何を発信しているアカウントかわかるように。4行目以降は折りたたまれ見にくくなるため、3行目までが勝負。
ステップ③ 写真撮影、キホンのキ
ここからは投稿についてだ。慣れてきたら動画にもチャレンジしたいが、まずは写真から始めていこう。たいていのスマホでじゅうぶんに良い写真は撮れる。最新機種である必要はまったくない。
最初は失敗してもいいので、色々なシチュエーションでどんどん撮影してみよう。
以下の簡単に実践できるポイント3つを知っておこう。
(1) 光を意識する。特に「半逆光」と呼ばれる太陽や窓からの光を斜め後ろから当てる角度だと、ツヤや立体感がぐっと良くなる。

もう一つ付け加えるならば、写真にとって重要な「光」には、自然光(つまり日光)と人工光がある。農業の現場は自然光に溢れているが、多くの場合、人工の光よりも自然光で撮影した方が魅力が引き立ちやすい。自然光で撮影することを意識してみよう。
(2) 少し離れてズームを活用する
スマホのレンズは広角なので、近づきすぎると歪む。少し離れて「ズーム」が基本。野菜の形がきれいに写る(最大2倍弱まで。それ以上は画質が粗くなるため)。

(3) グリッドを使って撮る
一般的なスマホのカメラでもさまざまな機能が搭載されている。中でもグリッド(画面を9分割する線)の機能は簡単なのでぜひ使ってほしい。水平も整って失敗しにくく、野菜を線や交点に置くだけ(下写真の赤点)でも印象的な写真になる。

ステップ④ 投稿文はシンプルに!テンプレを事前に用意
投稿にあたっては写真に文章(キャプションという)をつけていくのだが、長文を書こうとすると続けるのが大変になってしまう。短くても伝わるのがインスタというツール。そして、頻度が効果を生むというツールでもある。それゆえ、投稿文は長い必要はないので、自分らしさと手軽さを意識していきたい。
短くてもいいとはいえ、毎回何を書こうか迷ってしまう方も多いだろう。そこでオススメしたいのが、いくつかテンプレート(ひな型)を用意しておくこと。以下の例のように、テンプレートをその写真の状況に合わせて調整すれば、すぐに文章の完成だ。
【テンプレート文章】シチュエーション:野菜の収穫
今日は◯◯を収穫しました!
天気のおかげで、とても良い出来です😊
食べ頃なのでおすすめです。
ぜひおためしください♪
【アレンジ文章】
今日はナスを収穫しました!
ここ最近雨が定期的にちゃんと降るので、
とても張りがあり納得の出来です😊
簡単に料理ができておいしいので暑い日にもオススメ!
本日10時~直売所で販売しております!
ぜひお試しください
このようにテンプレートを何パターンか作り、状況に合わせてアレンジすれば投稿ができあがる。あとは反応を見ながら手直ししていく。何よりも投稿に慣れるのが大事だ。
素晴らしい文章を書くよりも、頻度の方が大切。このことを忘れないようにして、サクサクと投稿しよう。慣れるという意味でも、投稿の頻度は週1回くらいが目安だろう。
ステップ⑤ ハッシュタグの意味を理解する
多くのインスタの投稿文の末尾には「ハッシュタグ」が付いていることが多い。「#」マークとそれに続く単語のことで、たとえば「#小田原 #レモン #果樹園」といったように記載する。まずは他のアカウントの投稿を真似してみよう。
ハッシュタグはユーザーの検索に使われる。ただ、このハッシュタグは従来フォロワーを増やす上で重要だと言われてきたが、2025年に入ってからは運営会社の方針が変わったこととに加え、インスタ搭載のAIの進化によりユーザーの検索頻度自体が低下し、その重要性は限定的になりつつある(なお、地域を表すハッシュタグは検索においていまだに重要なので、記載することをオススメしたい)。
とはいえ、ハッシュタグに意味がなくなったわけではない。自分のインスタのジャンルやスタイルを表現する手段としていまだに重要だ。
冒頭にも触れたが、インスタのフォロワーを増やす上では、あなたのインスタが「何を発信しているアカウント」なのかが、シンプルにわかりやすいことが重要。自分が発信したいジャンルにあてはまるキーワードを3〜5個を選び載せることで投稿の訪問者や、インスタグラムのアルゴリズムにアピールすることができる。
【ハッシュタグの例】
#松本 #信州産 #リンゴ #秋のりんごフェア #旬のある暮らし
【関連記事】「農業の現場をもっと知ってほしい」。老舗農家の5代目がSNSで情報発信を続ける理由【農垢の素顔#7 めろん屋富岡】
リスク回避のために注意すべきこと
気楽に始められるのがSNSのいいところだが、全世界に情報を発信している以上、リスクがあることは認識しておきたい。以下のようなことはトラブルのもとになる。
(1)他人・団体を批判する内容
(2)法律違反・著作権違反の情報
(3)消費者誤認につながる情報
(4)プライバシー・取引内容の無断公開
(5)不快・不適切な表現
(6)未確認の噂・フェイク情報
著作権やプライバシーには特に注意が必要だ。ネット上のフリー素材も商用利用は限定されている場合が多い。
また、農薬に関する表記については、農水省の「特別農産物に係る表示ガイドライン」も一読しておきたい。例えば、「無農薬」といった表記は避けるべきとされている。「有機」の表記もJAS有機の認証を取得している場合にのみ可能だ。
不特定多数に発信することがどうしても不安な方は、知り合いのみが閲覧できる非公開モードでまずは練習することもオススメだ。非公開モードでも2次元コードを読み込んでもらい、投稿者が承認すれば、フォロワーを増やすことができる。2次元コード入りのパンフレットや名刺を渡したり、直売所に2次元コード入りポスターを貼ってコツコツ輪を広げていく作戦もある。
おわりに:「日々のあたりまえ」こそファンが求めるコンテンツ
インスタで情報を発信していくことは、自らの農業経営のスタイルを見つめ直す契機にもなる。そして、新しいつながりが生まれるかもしれない。メリットは思いのほか多い。
投稿の内容を堅苦しく考えないことが大事だ。農業の日常には、すでに多くの発信素材が存在している。定植したときのワクワク。広い畑のマルチ張りを終えたときの達成感。収穫したときのうれしさ-。こうした農家の「日々のあたりまえ」こそが実はファンが求めるコンテンツだったりする。そうした旬の感動をちょっとずつおすそ分けしていく。
ともあれ、発信者自身が楽しみながらやらないと続かない。楽しみながら、息長く定期的に投稿していく。その心持ちが一番大事である。
※本記事は、エマリコくにたちの本多航、岩田野花も監修・執筆しました

















